軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狐人族と鳥人族の子供達

獣人の子供達を受け入れた翌日、僕は宿舎の執務室で書類作業を早く終わらせるべくカペラとディアナに手伝ってもらっていた。

僕の所に来る書類作業はクリスティ商会との取引、新屋敷建造、そしてこの宿舎に関わるものがほとんどだ。

一番多いのはクリスティ商会関係の書類だけどね。

僕は手に持っていた書類に目を通し終えると、体を伸ばしながら呟いた。

「うーん。よし、これで今日の書類作業は終わりだね」

「リッド様、お疲れ様です」

ディアナが僕の言葉に答えながら、紅茶のお代わりを机の上に丁寧に置いてくれた。

「ありがとう、ディアナ」

「いえ、とんでもございません」

お礼を言いながら紅茶を飲んでいると、カペラが僕に近寄り会釈する。

「リッド様、ビジーカ様から症状の軽かった狐人族と鳥人族の子供達が目を覚ましたと連絡がきております。彼らへの『鉢巻戦』についてのご説明はいかがしますか?」

「わかった。僕から説明するから、彼らを『会議室』に呼んできてもらってもいい?」

「承知しました」

カペラは僕に会釈するとそのまま執務室を後にした。

ちなみに、宿舎には『会議室』と『大会議室』がある。

会議室は少人数の時に使い、大会議室は大人数の時に使い分ける感じだ。

ディアナが淹れてくれた紅茶をのんびり飲んでいると、彼女が心配なそうにこちらに視線を向けた。

「リッド様、失礼ながらナナリー様の件は、本当に大丈夫なのでしょうか? 狐人族が重要ということであれば私が強制的に協力させる準備がございます」

彼女は、言い終えるとどこからともなく大量の暗器を僕に見せてくれる。

予想外の言動に僕は飲んでいる紅茶で咽て咳込んでしまった。

「ゴホゴホッ⁉ だ、大丈夫だよ。でも、その気持ちはとても嬉しいよ。ありがとう」

「いえ……ナナリー様は、バルディア家の光と存じます。私にできることがあれば、何なりと致しますので、気軽に必要なことを命じてください」

ディアナは答えながら、綺麗な所作で僕に向かって一礼してくれる。

狼人族のラストに、母上と同じ魔力枯渇症の薬を処方することを決めた時、彼女は傍にいなかった。

そのことを、気にしているのかもしれない。

「ありがとう、ディアナ。必要な時はお願いするね」

「はい、何なりとお申し付けください」

僕は彼女にお礼を言いながら再度、紅茶に口を付ける。

その時、執務室のドアがノックされ返事をするとカペラの声で「会議室に鳥人族と狐人族を集めました」と聞こえてきた。

「わかった。すぐに行くよ」

大きめの声を出してドア越しに返事をした僕は、会議室に向かって移動するのであった。

「皆、待たせてごめんね」

「遅いよ、おにいちゃん。皆待っていたんだよ」

会議室に入ると、鳥人族のアリアが顔を少し膨らませて駆け寄って来た。

僕は彼女にニコリと笑みを浮かべる。

「ごめんね、少し仕事が立て込んでいたんだよ」

「ふーん、そうなんだね。あ、それよりも、私の妹達を紹介するね」

「うん、ありがとう」

アリアは表情をコロコロと変えながら、会議室にいる鳥人族の少女達に視線を向ける。

僕も彼女の視線を追うようにそちらを見るが、立ち並ぶ少女達の姿に少し驚いた。

「……凄いね。皆、アリアとよく似ているよ」

「えへへ、でしょ?」

そう、少女達は多少の身長差や顔立ちに違いはあるが、皆そっくりだ。

体調が悪く寝込んでいる時から思っていたけど、こうしてみると本当によく似ている。

彼女達はアリアと僕の視線に気付いたようで、おずおずと僕に向かって頭を下げた。

すると、僕の後ろにいるディアナが咳払いをする。

「アリア……と申しましたね。貴方はリッド様に少し近過ぎますよ。皆と一緒にあちらで、お話を聞いてください」

「えぇぇ‼ 何このお……むぅ⁉」

アリアが頬を膨らませる。

そして、恐ろしい言葉を言おうとする気配を感じた僕は、咄嗟に彼女の口を塞いだ。

いきなりのことで、アリアは目を丸くして『ぱちぱち』と瞬きをしている。

そんな彼女に僕はニコリと微笑んだ。

「えーと、彼女はね、ディアナって言うんだ。アリア、君達の新しいお姉さんなんだよ」

「え、そうなの? この人も私達を捨てたり、意地悪しない?」

彼女は突然のことに驚いた様子で答えながら僕の手を外すと、その目には期待が見て取れる。

アリアは鳥人族の長女として気を張っているけど、本当はとても心寂しい女の子だ。

そんな彼女には、きっとディアナのような女性が助けになると思う。

僕はアリアの言葉に頷いた。

「うん、彼女はとっても強くて優しい人だよ。君達を絶対に捨てたり、意地悪なんてしないさ。ね、そうでしょ、ディアナ?」

「え? ええ、勿論そんなことは絶対に致しませんが……」

ディアナが困惑しながら僕の言葉に頷くと、アリアは目を輝かせてディアナに飛び付いた。

「やったぁ‼ ディアナお姉ちゃん、私、アリアって言うの。よろしくね」

突然のことに、ディアナは何が何だかという様子だ。

だけど、アリアの嬉しそうな表情に加え、彼女の妹達からも何やら期待に満ちた視線を向けられていることに気付いたディアナは、観念したように呟いた。

「はぁ……アリアですね、わかりました。ですが、私を姉と慕う以上は、きちんとした礼儀作法を学んでいただきますよ」

「うん‼ 私、ずっとお姉ちゃんも欲しかったの。よろしくね、ディアナお姉ちゃん」

恐らく、今のアリアはディアナの言葉を聞いていないと思う。

だけど、その笑顔は本当にうれしそうだ。

ディアナもそれはわかっているのだろう。

首を小さく横に振り、抱きついているアリアの頭を優しく撫でながら、視線を僕に向ける。

「リッド様、この件は後でちゃんと説明をして頂きます」

「うん……ちゃんと、説明します」

僕が彼女の言葉に気圧されながら頷くと、カペラがそっと耳打ちをしてきた。

「リッド様、そろそろ本題に進むべきかと」

「そ、そうだね」

僕が頷くのに合わせて、ディアナは抱きついているアリアを撫でながら彼女の妹達のところに近寄っていく。

アリアの妹達はディアナに興味津々と言った様子で、目を輝かせているようだ。

僕は、皆を見渡せる正面に移動する。

そして、鳥人族と狐人族の皆を一瞥すると、咳払いをして注目を集めた。

「改めて『リッド・バルディア』です。ようこそ、バルディア領へ。ここにいる皆は昨日、医務室に居たから、大会議室で他の子達にした話をできていないよね。だから、今から説明するよ」

その後、僕はこの場にいる皆に昨日と同じ話をしていく。

皆の状況、立場、求めていること。そして、『鉢巻戦』のことまで説明を終える。

「……とまぁ、こんなところかな。何か質問があれば聞くし、ここで言いにくいことならメイドに相談してもらえれば後でも聞くよ」

投げかけると、スッとアリアが挙手と同時に立ち上がり元気よく発言した。

「お兄ちゃん、そんなことしなくても私達はお兄ちゃんについてくよ。ね、皆?」

彼女は答えながら妹達に振り返った。

すると、少女達は姉の言葉に従うように頷いている。

皆の意思を確認してから、アリアは僕に振り返るが悲しそうな表情を浮かべていた。

「それに私達は、お兄ちゃんやお姉ちゃん以外、誰も必要としてくれないもん」

「アリア……そんなことはないさ。君達はとても素晴らしい力を持っているから、是非力を貸して欲しい。それに、『鉢巻戦』は皆の力を僕に見せる機会と思ってくれればいいよ。そうだな、アリア達からすれば一種の遊びと思ってくれていいかもね。勿論、どうしても参加したくない子がいたら辞退してくれてもいいよ」

僕の答えを聞いて、アリア達の表情がパァっと嬉しそうに明るくなった。

彼女達は、必要とされないことに凄く怯えている気がするんだよね。

恐らく、僕が皆に『力を貸して欲しい』と明言したことで、浮足立っている感じなのだろう。

「わかった、お兄ちゃん。じゃあ、後はみんなと話してみるね」

「うん、お願い。無理はしないでいいからね」

「はーい」

アリアは明るく返事をすると、その場に座る。

それから間もなく、今度は狐人族の少女が挙手して立ち上がった。

「君は……確か、狐人族のノワールだったね?」

「は、はい。覚えて頂き光栄です。それで、あの私達、狐人族は此処に置いて頂きたいというのが、皆の総意なのですが……」

ノワールの答えに、僕は少し驚く。

彼らの状況から察するに、そういったこともあるかも知れないとは思っていた。

だけど、こんなに早く総意が出るなんて思わなかったからだ。

思案顔を浮かべた僕は、おもむろに頷いた。

「なるほど……それについては、もう少し詳しく教えてほしいね。悪いけど、代表の子を決めて執務室に来てくれるかな?」

「はい、わかりました」

彼女は僕の答えにペコリと頭を下げる。

狐人族の皆が、すでに『此処にいたい』という意志を持ってくれているのはかなりありがたい。

彼らには早急にお願いしたいことがあったしね。

ここでの話は一旦切り上げて、執務室で詳細を聞くことにしよう。

「じゃあ、僕からの話は以上になります。あと、さっきも行ったけど『鉢巻戦』が終わるまではここでの生活に慣れてもらうことを優先しているから、メイド達の言うことを聞きつつ、のんびりしてくれていて良いからね」

僕の言葉に、鳥人族と狐人族の皆は様々な表情を浮かべながら頷いている様子が見て取れる。

その時、アリアが駆け寄って来て、屈託のない笑みを浮かべた。

「お兄ちゃん、後で私も執務室に行っていい? 昨日、少し話していたことを教えてあげたいの」

「昨日の……?」

アリアに言われて、僕は彼女に言われた事を思い出す。

そうだ、確か鳥人族のことに加えて何やら『音の秘密』も教えてくれると言っていたっけ。

僕は、笑みを浮かべてアリアに優しく答えた。

「わかった。なら、狐人族の子達との話が終わったら聞かせてもらっても良いかな?」

「うん‼ じゃあ、お兄ちゃん、また後でね」

その後、アリアとノワール達はメイド達に連れられて会議室を後にする。

そして、僕達も執務室に戻るのであった。