軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アリア達にリッドが求めること

「ふぅ、これで全部族の子達に説明は終わったね。後は『鉢巻戦』に向けての会場準備もしないとね」

「会場準備……ですか? それは、今から業者に頼んでも時間的に厳しいかと存じますが……」

会議室から執務室に戻って間もなく、椅子に座りながら呟いた言葉に答えてくれたのはカペラだ。

彼の言う通り普通に業者に頼んでもまず不可能だろう。

でも僕には、『魔法』がある。

炭窯を作る時使った土の属性魔法を応用すれば、簡単な会場ぐらいの準備はすぐに作れると思うんだよね。

僕は、意味深な笑みを浮かべながらカペラに視線を向けた。

「ふふ、そうだね。業者に頼んだら無理だろうね」

「また何かお考えのようですが、あまり無茶をするとまた皆様に叱られますよ?」

「そんな無茶はしないさ。でも、『見せる』ことも時には重要だと思うんだよね」

カペラと話していると、ディアナが紅茶をすっと机の上に置いてくれた。

僕はお礼を言おうと彼女に視線を移す。

しかし、何やらとても冷たい視線を感じとり、思わずたじろいだ。

「あ、あれ、何か怒ってる?」

「当然です。何故、私をアリア達の『姉』になる存在と突然お伝えになったのですか?」

彼女の冷たく、怒っている様子に僕は思わず苦笑する。

「あはは……ごめん。説明するね……」

昨日したアリアとのやりとり。それから、彼女達の可能性と考えていることをディアナに伝えていく。

最初に出会った時、それから医務室での様子に加えて、彼女達は異常なまでに『酷い仕打ち』や『必要とされない』ということに怯えている。

恐らく、アリア達に必要なのは、心に寄り添う『家族』のような存在だろう。

他の獣人の子供達も同じ事は言えるかも知れないけど、その中でもアリア達はその傾向はかなり強いという判断をしていた。

勿論、彼女達に可能な限り寄り添うつもりだけど、僕一人だけじゃ限界もある。

そこで、ディアナを巻き込んだわけだけど……あの時、アリアの気配を察知して、勢いでやってしまった部分もあるから、少し急すぎたことは否めない。

「……というわけなんだ。勿論、唐突な紹介になったことはごめんね。でも、アリア達にはディアナみたいな芯の強い人が必要だと思うんだ。勿論、僕も彼女達に出来る限り、寄り添うから協力してほしい」

ディアナは僕の説明を聞き終えると、呆れ顔を浮かべてため息を吐いた。

「……畏まりました。流石の私でも困惑いたしますので次からは、事前にお伺いできれば幸いでございます」

「うん、ごめんね。あと、今は彼女達のことを考えて、僕の事は好きに呼ばせてあげてね」

アリアは、僕のこと『お兄ちゃん』と呼んで慕ってくれている。

いずれは、指摘しないといけないのだろうが、今は彼女達の心を落ち着かせることを第一に考えてあげたい。

しかし、ディアナは眉間に皺を寄せる。

「リッド様の優しさとお気持ちはわかります。ですが、大変僭越ながら彼女達には過ぎた甘えとなりましょう。それに、公の場においては他の者の手前、如何かと存じます。せめて、アリア達とリッド様だけの場でのみにするべきでしょう。それに……自身の立場が明確になることで強くなれることもございます」

僕は、指摘され思案顔を浮かべる。

他のみんなや立場を考えれば、公の場では『お兄ちゃん』と呼ぶのは控えてもらう必要があるのは確かだ。

それなら、ディアナの指摘を受け入れ、最初から仲間内だけの場でのみで許容するべきだろう。

「わかった。じゃあ、アリア達にもそのことは来てもらった時に伝えよう」

「承知しました。立場を超え、差し出がましいことを申しましたことをお許しください」

ディアナは答えると同時にペコリと頭を下げ一礼する。

僕は、慌てて彼女を制止した。

「そんなに気にしないで大丈夫だよ。ディアナにはいつも助けられているから、本当にありがとう」

「とんでもございません。お役に立てれば光栄です」

僕達の会話が終わると、カペラが興味深げに僕に尋ねてきた。

「リッド様、ディアナ様にも話されていた『彼女達の可能性』については以前からお考えになっていたのですか? もし、実現出来れば素晴らしいお考えと思いますが……少々、末恐ろしくもあります」

「まぁ、そうだね。鳥人族の子達がどれぐらい来るかはわからなかったから、皆には言ってなかったからね。アリア達が頑張ってくれればきっとうまく行くと思うから、改めてディアナも彼女達を支えてあげてほしい」

前世の記憶から『制空権』の恐ろしさを、僕は良く知っている。

それに彼女達が自由に大空を羽ばたけるようになった時、きっとバルディア領の発展にも大きく貢献してくれるはずだ。

カペラの質問に答えながら、僕はディアナに期待の眼差しを向ける。

すると、彼女はニコリと不敵な笑みを浮かべた。

「はい、リッド様のお考えの素晴らしさはすでに把握しております。必ず、バルディアに仇なす者に裁きの鉄槌を与える……さしずめ『天空の守護者』という存在に育て、鍛えあげて見せましょう」

「い、いや、別にそこまでは求めてないよ……そもそも、彼女達の力も未知数だしさ。まぁ、『鉢巻戦』でその点は確かめたい部分ではあるけどね」

そう、『鉢巻戦』をわざわざ開催する理由は、各獣人の子供達の力を僕が直接見定めるためでもある。

今回、開催をしなかったとしてもいずれは『鉢巻戦』をする予定ではあったのだ。

挑発してきた『オヴェリア』にも何か意図はあったのだろう。

だけど、僕的には予定の前倒しに加えて、一部の獣人の子が『忠誠を誓う』というのであれば美味しい話であったわけだ。

その時、執務室のドアがノックされメイドのニーナの声が響く。

「リッド様、狐人族を代表してノワールとラガードの二名がご面会を希望しております。如何いたしましょう」

「わかった。二人を通して」

狐人族のノワールは何度かあっているけど、ラガードは知らない名前だ。

さて、代表者としてどんな子が来たのかな?

僕は、執務室にやってくる狐人族の二人をワクワクしながら待つのであった。