軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その29

トレバーとテイトと一緒に帝国へとやってきた。

前回は不法入国だったが、今回はしっかりと身分証を提示しての入国。

「うわー! ここが帝国ですか! 僕、初めて王国を出ましたよ!」

「私も初めてですね。王国内の他の街にすらあまり行ったことがありません」

「二人共、初めて国を出たのか。とは言っても、特に変わらないだろ」

「そんなことありませんよ! なんというか……空気が違います!」

空気が違うという、凄まじくあやふやな答え。

国境を越えただけだし、絶対に空気は変わっていないんだが……トレバーの目はキラキラしているし、深くは突っ込まなくていいか。

「違いが分かるなら良かった。それより、ここからどうする?」

「どうするとはどういうことでしょうか? 古の竜穴に行くんじゃなかったでしたっけ?」

「いや、竜穴に向かう前に街によるかどうかだな。時間には余裕があるから、一度体制を整えてもいいと思っている」

「うーん……帰りでいいんじゃないでしょうか? 荷物とかは全部準備してきましたし、余裕はありますので!」

「私もトレバーの意見に賛成ですね。まずは古の竜穴に行きたいです。街に寄ってゆっくりして、時間がなくなる――ってことは避けたいので」

「分かった。なら、このままノンストップで竜穴を目指そう」

俺個人の意見としては、行きにフロンの街に軽く寄り、帰りにエアトックの街に寄るというプランを立てていたのだが、早くもその算段が崩れてしまった。

まぁフロンの街は国境に一番近い街だし、いつでも来ることができる。

意外と離れているエアトックの街には、絶対に帰りに寄る。

俺は密かにそう心の中で決め、古の竜穴を目指して真っすぐ歩を進めたのだった。

小休憩のみに留め、国境から歩き続けること丸一日。

ペースが遅かったこともあり、予定よりも時間がかかってしまったが、無事に古の竜穴に到着した。

「あそこが古の竜穴だ」

「やっと着いたんですね! 思っていたよりも時間がかかりましたが、無事に辿り着いてよかったです!」

「なんだか……意外と普通の洞穴ですね」

「変な場所にあるってだけで、まぁ見た目は普通だな。別にドラゴンが住んでいるって訳ではないし」

「そうなんですか!? 僕はてっきり洞穴の奥にドラゴンがいるのかと思っていました!」

「私もです。結構身構えていたのですが、ドラゴンはいないんですね」

「あれ、二人に伝えていなかったか? ドラゴンはいないが、強い魔物はひしめき合っているから、身構えていたのが無駄になることはないと思うぞ」

事前に伝えていたつもりだったが、伝えるのを忘れてしまっていた。

対ドラゴン用の装備を持ってきていたのだとしたら申し訳ない。

「強い魔物はいっぱいいるんですね! 気を抜かないようにします!」

「ああ、そうしてくれ。二人にとっても良い経験になるはずだからな」

「ジェイドさんがここまで言うってことは、相当危険なんですね。私も気合いを入れます」

「それじゃ……竜穴前で休んでから、中に入るとするか」

ここまでほぼ休みなく歩き続けていたし、攻略前に少し寝ておいた方がいいという俺の判断。

ということで、仮眠を取ってから古の竜穴の攻略に向かうこととなった。

「うわー……! 真っ暗ですね!」

「外は明るいのに、入口から既に真っ暗です」

「前に来た時はもう少し明るかったんだけどな。ライトストーンがなくなっているのかもしれない」

「ジェイドさんは以前にも来たことがあったんですね!」

「俺は帝国出身だからな。それこそトレバーくらいの年齢の時に、この洞穴の攻略を行ったんだ」

ちなみにだが、この洞穴が魔物の巣窟となった現況のドラゴンはその時に俺が倒した。

まぁ生きたドラゴンではなく、アンデッド化したドラゴンだったけども。

「そうだったんですか! ジェイドさんの若い頃って想像つかないですね! 完全無欠って印象なので、あたふたしているところが想像つきません!」

「確かにそうですね。ジェイドさんもトレバーみたいな時期はあったんですか?」

「この洞穴の攻略を行った当時は、もう今みたいな感じだったと思う。ただ、俺も五歳くらいまではトレバーみたいだったぞ」

「えっ!? 僕ってジェイドさんの五歳以下なんですか!?」

「実力だけでいったら、五歳のジェイドさんにも及ばない可能性がありますよ。子供で小さくてあたふたしていても、ジェイドさんは強そうですから」

「……むむむ。確かに強そうではありますね……!」

トレバーを甘く見ているわけではないが、五歳の時でも今のトレバーなら勝てると思う。

クロに樹海の中に放りだされたのが五歳くらいの時だったし、その時にはある程度の魔物も討伐していたからな。

影の薄さを利用した不意打ちは脅威的だが、一対一ならまず負けない。

トレバー+テイト相手だったら、五歳の時の俺では勝ち目がないだろうがな。

「俺自身もやってみたくはあるな。いい勝負にはなると思うし」

「僕は絶対に嫌です! 万が一負けてしまったら、しばらく落ち込むと思いますもん!」

「私は戦ってみたいですけどね。というよりも、子供のジェイドさんが見てみたいです。写真とかは残っていないんですか?」

「一切残っていないな。……っと、変な話をしていたら、いつの間にか魔物が寄ってきた。二人に任せても大丈夫か?」

「もちろんです! ジェイドさんじゃなければ倒せますので!」

「成長を見せるためにも圧勝してみせます」

面白い話だっただけに、話の腰を折られて悲しいが、魔物にそんな文句を言っても仕方がない。

切り替えて、古の竜穴の攻略に集中するとしよう。