軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その28

今回は少しトラブルがあったものの、無事に営業日を乗り切ることができた。

なんというか、最近は商品の調達よりも接客の方が疲れてしまう。

俺としては安さではなく質の高さを売りにしていたつもりなんだが、どうやら安さの方が大きいらしく、その安さに釣られてやってきた人達の客質の低さが目に余る。

安さに釣られてやってきてくれるのは嬉しいことでもあるんだが、普通の客として来てほしい。

やけに態度が大きい人や、ガラの悪い連中の割合が高いのが難点であり、値段を上げて客質を良くするしかないのではと思ってしまっている。

現時点で集客は想像以上。

客足が落ち着いたとしても困らないと踏んでいるため、値上げをしてもいいと考えたんだが……。

先日、スタナを守ってくれたお客さんも、お金をあまり持っていない子だった。

ここを頼りにしてくれていたのが分かったし、変わらず俺の最優先は『シャ・ノワール』を有名にしたいという気持ちではあるが、それとは別に困っている人を支えたいという気持ちも芽生えた。

俺が困っていた時にレスリーに救ってもらったように、俺も誰かを救える人間になりたいという気持ちは根底にずっとあったからな。

そのことを考えると、値上げをするというのは意に反してしまう気がする。

値上げをせず、本格的に『シャ・ノワール』の治安維持を行う方法としては……やはり俺が警備に特化するのが最適。

現状では人の手が足らないため、本格的に従業員を探さないといけない。

『シャ・ノワール』の別店舗から人を借りてくるのも手だけど、それは最終手段だな。

自分の伝手を最大限使い、募集をかけまくろうと思う。

それが無理だった場合は、エイルとマイケルにお願いをし、冒険者ギルドに大々的に募集してもらう。

それでも無理だった場合のみ、ヴェラに頭を下げて手の空いている従業員に手伝ってもらおう。

今後の方針についてそう決めた俺は、早速動くことにした。

まずは知り合いのところを片っ端から当たってみるとするか。

ヨークウィッチにいる知り合い全員に声をかけ、ついでに冒険者ギルドでも募集をかけてくれないかという話もしに行った。

ありがたいことに声を掛けた全員が協力的であり、働ける知り合いを探してみるという返答をもらうことができた。

改めて、色々な人に支えられていることを身に沁みつつ、あとは良い報告が来るのを待つだけ。

俺の方でももう少し探したいところではあるが、俺は来週分の商品の調達をしなくてはならない。

テイトとトレバーに調達の協力をしてもらう予定でもあるため、少し心残りではあるが、従業員の件は声を掛けた知り合いに託し、俺は調達に出かけることにした。

今回向かう場所は既に決まっており、帝国にある『古の竜穴』という場所。

竜穴という名前だが、別に今はドラゴンが住んでいるという訳ではない。

昔にドラゴンが棲家にしていた洞窟であり、そのドラゴンが洞窟内で死んだことにより、そのドラゴンの死体から出た魔素を元に様々な魔物が集まり活性化した洞穴。

今回の狙いはそんな古の竜穴内にある、ドラゴンの死体。

死んだとされるのは随分と昔のため形骸化しているようだが、牙や爪、龍鱗なんかは残っているらしい。

確かな情報筋ではないため、期待値は相当低くはあるが、ドラゴンの素材が取れなくとも竜穴内には様々な魔物がいるため、商品の調達は行えるはず。

それにもし古の竜穴が不発だったとしても、帝国内で商品の調達が行えそうな場所はいくつか知っているため、リカバリーを効かせやすい。

ということで、まずはテイトとトレバーと合流。

それから行き先を伝えて、すぐに帝国に向かうとしよう。

待ち合わせの場所にしていた城門前に向かうと、既にテイトとトレバーの姿があった。

装備がしっかりとしており、もうすっかり一人前の冒険者といった風貌。

「あっ! ジェイドさん! こっちです!」

俺に気がついたトレバーが大きな声を出して、ぶんぶんと手を振り始めた。

ここは城門前ということもあって人の往来が多く、周囲の注目がこちらに集まった。

恥ずかしくなったため、俺はトレバーに手を振るのをやめるようにジェスチャーを送る。

ただ、トレバーは俺が手を振り返したと思ったようで、更に大きく手を振り返してきた。

「ジェイドさん、おはようございます!」

「おはようございます――じゃない。恥ずかしいから、人の多いところでは大きな声を出すなといつも言っているだろ」

「――あっ! そうでした! すみません!」

トレバーのこの行為は、もはや毎度のこと。

すぐに忘れてしまうため、人の多い城門での待ち合わせを止めた方が早そうだな。

待ち合わせ場所に関しては追々考えるとして、とりあえず二人と合流できて良かった。

早速ではあるが、帝国に向けて出発するとしよう。