軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03 南部大森林

王国、南部大森林――

ゲームにおいては、主人公ロークスが初めに訪れることになるフィールドである。

魔族襲撃により陥落した王都から落ちのびたロークスは、魔族の追手から逃れるため、この森林にメインヒロイン一人とともに入っていく。そこでAランクパーティ『紅蓮の息吹』と出会ったり、古代文明の遺跡を見つけたりしつつ、追手の中ボス・ジーヴァ(俺の領に攻め込んできた魔族の上位幹部)を倒すことで冒険の幕を開けることになる。

入口付近は最初のフィールドらしく弱いモンスターしか出ないが、遺跡に近づくといきなり終盤クラスのザコが出てきたりするなかなか面白いフィールドで、ゲームでは『紅蓮の息吹』がいたのでクリアできたみたいな扱いだった。もちろんマークスチュアートが古代兵器を起動させた時に、もう一度来ることになる場所でもある。

そんなゲームスタート地点に転移したわけだが、とりあえず俺が転移場所に選んだのは、森に入ってすぐにあるキャンプ場みたいな広場であった。もちろん冒険者時代、マークスチュアートが実際に来た場所である。

いきなり大自然のど真ん中に転移したので、女性陣7人は周囲を見回して警戒をはじめた。

広場の周りは一面、木々が鬱蒼とした塊を形作るような森に囲まれていた。色としては緑というより黒に近く、人が入ることを全力で拒んでいるかのようだ。

「お父様、ここが南部大森林なのですね。たしかに人が足を踏み入れるには覚悟が必要になる雰囲気があります」

「うむ。ここはまだ入口付近だがな。このあたりはまだFランクモンスターしか出ぬはずだ」

フォルシーナに答えつつ、俺はパーティの戦力を再度確認する。

まず前衛は、中ボス魔法剣士の俺、赤毛ボブカットメイド剣士のミアール、金髪狐獣人侍のクーラリア、真紅のポニーテール少女騎士アミュエリザの四人。

後衛は銀髪ロング魔導師のフォルシーナ、真紅のロングヘア美女魔導師ヴァミリオラ、ピンクブロンドロングの聖女オルティアナ、金髪ツーサイドアップ 回復師(ヒーラー) のマリアンロッテだ。

そしてそれぞれの装備だが、俺はミスリルのロングソードとライトアーマー、ミアールはショートソードと丸盾にミニスカメイド服、クーラリアは刀とミニスカ巫女服、アミュエリザは槍とミニスカライトアーマー。

フォルシーナは木剣『精霊樹の杖』と学校制服風ミニスカ魔導師服、ヴァミリオラは赤いタイトドレスにマント、オルティアナは水晶付き杖と白の修道女風ドレス、マリアンロッテも水晶の杖と白の修道服風ミニスカドレスだ。

驚異のミニスカ率だが、まあまんまゲーム中の衣装通りなので俺が口出しできるところではない。

ちなみに年長組のヴァミリオラとオルティアナはミニスカートではないものの、スカート部分のスリットが深すぎ&胸元開きすぎないかにもお色気キャラっぽい出で立ちである。ただヴァミリオラはともかく、聖女がお色気担当なのは……言うだけ野暮か。

普通に考えたら君たちそれで森を探索するの? と聞きたくなってしまうが、ゲーム世界では雪原を半裸で歩くキャラもいるわけで、それに比べればマシである。たぶん。

俺が見ていたのが気になったのか、ヴァミリオラがじろっと睨んできた。

「それで、どちらに進んでいけばいいのかしら?」

「うむ……」

周囲に目を走らせる。

広場の囲む木々の間に、獣道と言うにはかなりハッキリした道が二本あった。

一本は森の外に、反対側の一本は森の奥地に続いている道であろう。微妙にゲーム要素が感じられるフィールドである。

俺は奥地への道を示しつつ、皆の方を振り返った。

「あちらが遺跡に続く道になっている。私が先頭を行く。最後尾はクーラリアが務めよ。この先はモンスターが多く出現する、くれぐれも油断せぬように」

「はいお父様」「はいお館様」「はいご主人様」「はい公爵様」

いつもパーティを組んでいるフォルシーナたちが一斉に返事をする。ちょっと体育会系的な感じだな。

遅れてアミュエリザと聖女オルティアナが慌てて返事をするが、それを見てヴァミリオラは再びジロリと強い視線を向けてくる。

俺はそれに気づかないフリをして、森の中へと入っていった。

「アミュエリザ、ミアール、クーラリアは前へ。私が先制したら止めを」

「任せてフォルシーナ」

「はいお嬢様」

「はいよお嬢」

「マリアンロッテは周囲の警戒をお願い」

「了解フォルシーナ」

「魔法いきます。『スプレッドアイスアロー』!」

木々の間をすり抜けるようにして向かってくる赤錆色の蜘蛛型モンスター『ブラッドスパイダー』。

フォルシーナの杖から無数の氷の矢が放射状に放たれると、6匹のブラッドスパイダーはすべてがダメージを受け一瞬動きを止めた。

魔法とほぼ同時に前に飛び出していた3人の前衛、アミュエリザ、ミアール、クーラリアは、それぞれの得物で2匹ずつ止めを刺していく。

一方で後衛のマリアンロッテは左右後方に注意を向け、他のモンスターの接近に備えている。相手が格下Eランクのモンスターであっても油断のない、いいコンビネーションである。

前衛組が魔石とドロップアイテムの牙を拾って戻ってくる。

「フォルシーナは大したものね。指示を出すのにも慣れているし、使用する魔法の選択も正確、それに上位の氷属性をあそこまで使えるなんて、あの年齢で大したものだわ」

ヴァミリオラが腕を組みながら、微妙に怪しい目つきでフォルシーナの横顔を眺めている。

「そうね。でもアミュエリザも強くなったと思うわ。同年代では敵はいないんじゃない?」

聖女オルティアナが褒めると、ヴァミリオラは嬉しそうに微笑んだ。

「まあね。領軍の師範も手放しで褒めるくらいだから才能はあるみたいよ。中隊長を相手にしても勝つことがあるくらいだから」

「それはすごいわね。マリアンロッテも光属性魔法の才能が一気に花開いたみたいだし、できれば彼女に聖女の座を継いでもらいたいのだけれど……」

「そっちはあの色ボケ国王をなんとかしないとダメね。マリアンロッテはなんとしてでもアレから守らないと」

「アレって……。まあマリアンロッテは別に好きな人がいるみたいだし、その方がいいかもしれないわ」

「そういうことはそこの男の前では言わないで、ティア」

大森林に入ってから4時間、すでにモンスターとの戦闘は10回を超えるが、すべてフォルシーナたち年少組が対応している。

なにしろメインヒロイン3人が揃っていて、それにプラスして名もなき中ボスだったクーラリアと隠れヒロイン疑惑のあるミアールによる強力なパーティだ。完全にゲームの主人公パーティと遜色ない戦力が揃っている。

その上『真紅の麗炎』ヴァミリオラと聖女オルティアナ、そして『蒼月の魔剣士(笑)』が揃っていれば、いかに長らく人間を拒んできた大森林といえどもピクニック気分で歩けるフィールドになってしまう。

まあおかげで妙な女子トークまで聞こえてきてしまうのだが。

俺が何度目かの『聞かなかったフリ』を発動して再び森を歩き始めると、フォルシーナが横に並んできた。

「お父様、キャンプは水場がある場所で行うのですか?」

「水場? 水は魔法で出すのが普通だ。水場を探す必要はない」

「しかし汗をかいてしまいますし、髪も 埃(ほこり) がひどくついてしまいます。長く水浴びができないのも私たちにとっては少し気になるのです」

「濡らした布で拭けば十分ではないか? こういった場所での行動ではそれが当たり前なのだが」

「お父様。女性がこれだけいるのですから、そこはご配慮ください」

「そういうものか」

ん~、ゲームだとそこらへんはすべて省略されるけど、リアルではそうはいかないからなあ。森の探索は不便な思いをしながらやるのが当然だと思っていたのだが、少し説明不足だったな。よく考えたらメインヒロイン全員公爵家の出だし、そりゃ身体のニオイとかも気になるよな。

たしか遺跡までのルートには綺麗な泉があったはずだ。ゲームではまだ魔法が使えない主人公たちがそこで水を補給していたりもした。

休憩や食事をしながら進むことさらに3時間、出現するモンスターにちらほらDランクのものが現れはじめたころ、俺たちはテニスコートほどの広さの広場にたどりついた。ゲームでもあったキャンプポイントである。

ただしそこには当然先客……中ボスがいる。

背中から太い棘がハリネズミのように生えたクマ型モンスター、『スパイクベア』だ。

スパイクベアは俺たちを見ると仁王立ちになり、前足を広げて威嚇のポーズをとった。

「フォルシーナたちで十分戦えるだろう。突進だけ気を付けるように」

「はいお父様。皆いきますよ」

大森林初の中ボス戦だが、戦闘はすぐにかたがついた。

フォルシーナの『アイスパイル』で動きを止めたところを、マリアンロッテの身体強化魔法で強化された前衛3人がタコ殴りにしてそれで終わりである。さすが実質Bランクパーティといったところか。