軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02 ロヴァリエ

「んんっ、ところで妹御のロヴァリエ嬢の体調はいかがかな? 元気ならよいのだが」

「あっ、おかげさまですっかり元気になりました。そういえば姉上、ロヴァリエには公爵様にお礼を申し上げさせないといけないのではありませんか?」

アミュエリザが振り返ると、ほとばしるほどの闘気を一瞬で鎮めるヴァミリオラ。姉バカも極まれりである。

「ええ、確かにそうね。オルティアナにも世話になっていたから、どちらにも挨拶をさせないといけないわね」

と言いながらも微妙に嫌そうな顔をしているのは、きっと妹のロヴァリエを俺に会わせたくないとか思ってるんだろうな。しかしゲームでは姿を現さなかったキャラなので俺も多少の興味はある。できれば一目くらいは見ておきたい。

ヴァミリオラは俺のほうをちらちら見ながらも、使用人にロヴァリエを呼びに行かせた。

しばらくしてやってきたのは、真紅の髪をツインテールにした、気の強そうな顔つきの女の子だった。歳のころは11、12歳くらいだろうか。猫のように釣り上がった目には、姉妹と同じ真紅の瞳が宿っている。

「皆様初めまして、ローテローザ公爵家末妹のロヴァリエと申します。どうぞお見知りおきくださいませ。そして聖女オルティアナ様、いつもありがとうございました」

そう淑女らしく挨拶をして、つかつかと聖女の方へと歩いていくロヴァリエ。

聖女オルティアナがニッコリと微笑んで、優しく肩に手を置く。

「ロヴァリエちゃんすっかり元気になったのね。あんなに辛そうだったのが噓のよう。私はあまり力になれなかったけど、治ったのならよかったわ」

「オルティアナ様が励まして回復魔法をかけてくださったから今まで命があったのだと思います。すごく感謝しております」

「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわ。それとお礼ならあちらの――」

聖女オルティアナが、ロヴァリエの注意を俺の方に向けさせる。

ロヴァリエはこちらを振り返り、下から俺の顔をまじまじと見てきた。直後に急に眉を寄せてキッと険しい目つきになり、両手を腰にあてて胸を反らした。

「こちらの方は、もしかしてヴァミリオラお姉様に言い寄っているというどこかのおじさまでしょうか? 少しだけ素敵な気がいたしますけど、それくらいではヴァミリオラお姉様は渡せませんわ」

「いや、ん……っ?」

「見ての通りヴァミリオラお姉様は王国一、いえ大陸一の美しさと優しさと賢さを兼ね備えた完璧な女性です。生半可な男性ではつり合いませんよ」

「ま、まあそうであろうな……?」

こんなキャラなの!? と戸惑っていると、ヴァミリオラは口を押さえて楽しそうに笑いはじめ、逆にアミュエリザは顔を青くしながら跳びかかるようにしてロヴァリエの口を押さえた。

「なんて失礼なことを言うのロヴァ! その方は魔力欠乏症のお薬を作ってくださったブラウモント公爵様だから! ロヴァの命の恩人なの! ほら、謝って!」

アミュエリザの言葉を聞いて、口を押さえられたままのロヴァリエは目を丸くして激しくコクコクとうなずいた。

手が口からはなれると、ロヴァリエはいきなりその場で土下座をはじめた。いろいろ動きの大きいご令嬢である。

「申し訳ございませんブラウモント公爵様! この度はわたくしの命を救っていただき、まことにありがとうございました! あのお薬にはとてもとても感謝しております! 先ほどの無礼な振る舞いどうかお許しくださいませ!」

「ああ、まあ、いや、貴女の謝罪は受け入れようロヴァリエ嬢。そのような姿では話もできぬ。とりあえず立ち上がって顔を見せてもらえぬか」

「は、はいっ!」

ぴょこんと立ち上がってウルウル目で見上げてくるロヴァリエ。う~ん、こんな濃いキャラならゲームにも出て欲しかったなあ。あ、もしかしたらソシャゲ版には出てたのだろうか。でもあれちょいエロ系だったしなあ。

「うむ、魔力欠乏症ということだったが、回復後は逆に魔力が強くなっているようだな。これなら身体の方は問題あるまいと思うが、なにか気になることはあるか?」

「い、いえっ! 生まれて初めて元気になったので、身体が軽くて、とても嬉しいのです! それでついおかしなことを……っ」

「体が回復し、気分が 昂(たかぶ) るというのは理解できる。これからは気を付けるようにな。しかし、ふむ……」

俺はそこで膝を折ってロヴァリエの手を取ってみた。というのは、魔力欠乏症のはずであった彼女なのだが、身体からあふれる魔力が同じ年頃だったときのフォルシーナに並ぶほどであったからである。なので魔力欠乏症の特効薬にも『エクストラポーション』と同じ効果があったのかと一瞬思ったのだが、しかし姉二人の能力を考えれば生まれつきの才能と考えた方が自然かもしれない。

「どうやらロヴァリエ嬢は魔力が強いようだ。これならば姉上に並ぶ魔導師にもなれよう。ロヴァリエ嬢の将来に期待しているぞ」

「ひぅ!? あ、ありがとうございます……っ」

安心させる目的で笑ってみせると、ロヴァリエは奇声を上げたうえに目を丸くしてヴァミリオラの方へ逃げてしまった。代わりに凄まじい目でヴァミリオラに睨まれたのだが、悪意はないので許してもらいたい。たしかに裏切り糸目スマイルは子どもにはショックだったかもしれないが……。

「これから大森林に行くというのに、貴方は今ロヴァリエにまで手をだそうとしていなかったかしら?」

「公は私をなんだと思っているのだ。私にはフォルシーナという大切な娘がいる。娘に顔向けできぬようなことをするつもりは――」

と言って振り返ると、そこには『氷の令嬢』モード起動完了の「大切な娘」の姿があった。その後ろではクーラリアとミアールがなんか生温かい目になってるし、マリアンロッテは腕を組んでうんうんと意味不明にうなずいている。俺のパブリックイメージはゲームシナリオ並に行方不明である。

「……んんっ、まあともかく、ロヴァリエ嬢が元気になったのは私としても安心した。それでは大森林に向かおうと思うが、ローテローザ公とアミュエリザ嬢も準備はよいか?」

「ええ、大丈夫よ。アミュエリザを守る用意はできているわ」

「私も問題ありません。すぐにでもモンスターと戦えます!」

さて、出発するだけで疲れてしまったが、いよいよ本格的なゲームイベントマップの攻略である。もとプレイヤーとしては密かに心躍るシチュエーションだ。気合を入れて臨まないとな。