軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16 大規模モンスター討伐 1

ゴブリン、オーク、そしてオーガはいずれも人型のモンスターだ。先も言ったが人型のモンスターは集団を作る傾向があり、多少の社会性もあると言われている。

ただあくまでモンスターであり、一般的な生物ではない。どこからともなく発生し、人間に対して強い攻撃性を持つほか、倒すと光の粒子となって消えるという特徴がある。

なお魔族もこれに近い特徴を持つが、彼らは人間とも近い部分もあり、高い知性と社会性を持つなど、長年人類と戦ってきた割にはその大部分が謎の存在である。

さて、それはともかく問題はモンスターの群れが我が領で発生したということだ。魔族がモンスターを使役できることは知られているので、無論これは魔族の動きと関係しているはずだ。

俺は将軍ドルトンに急ぎ部隊を編成させ、モンスター討伐に出発させた。もちろん俺自身も同行するが、いい機会なのでフォルシーナとミアール、クーラリアも参加をさせることにした。

討伐部隊の兵士数は約1000。モンスターに即応できる数としては悪くなく、ドルトンの手腕がうかがえる。

出動から30分後、俺は馬上にあった。後ろにフォルシーナを乗せ、街道を先行するドルトン率いる兵士たちの後ろをついて行く。

ミアールとクーラリアは徒歩だ。行軍するのも訓練は必要だが、今回は歩いて3時間ほどのところなのでレベルが上がっている人間には問題にならない。

俺の腰に手を回しているフォルシーナが、背中に張り付きながら話しかけてくる。

「お父様と二人で馬に乗るのはいつぶりでしょうか」

「お前が小さい頃に乗せたきりだな。乗馬の訓練をさせていなかったのは失敗だったかもしれん」

「これから習うようにはいたします。ですがこのようにお父様の後ろに乗せていただくのも嬉しいので、時々はこうして欲しいと思います」

「そのような歳でもあるまいに。まあ、機会があれば今後も乗せてやろう」

「ありがとうございます。今日は私も力を尽くしますね。氷属性の範囲魔法も覚えましたので、集団戦でもお役に立てると思います」

「それは心強いな」

などと親子の会話をしつつふと見ると、横で歩いている狐獣人クーラリアの目がいつになく真剣なことに気づく。

「どうしたクーラリア、緊張しているのか?」

「え? ……あ、いや、そうじゃねえです。オーガが出るって話なんでちょっと……」

「オーガに因縁があるのか?」

「里を襲ってきたのがオーガの集団だったんです。オレ……アタシの腕と目もオーガにやられたんで、お返しをしてやらないと気が済まないっていうか」

「今のお前なら1対1でも遅れは取るまい。ただし 逸(はや) って突出することのないようにな。これはあくまで集団の戦いであり、お前は私の護衛だということは忘れるな」

「わかってるぜます。でも一匹くらいは首をもらわねえと気が済まねえ……んです」

「機会はやろう。それまでは待て」

「ありがとうございます」

なるほど、獣人の里を襲ったのはオーガの集団だったのか。

オーガは角の生えた大鬼の姿をしたモンスターで、冒険者ギルドの討伐難度分類だとCランクに当たる。集団だとB以上の判定もされるので、Cランク冒険者だったクーラリアでは荷が重かったことだろう。

しかし王都から比較的近い獣人の里でオーガの集団とは、やはり魔族の動きは水面下では活発だったということか。

数回の休憩を挟みつつ農村地帯を抜けていき、街道を外れてさらに北に行くと遠くに山脈が見えてくる。その手前は広大な森林地帯になっているのだが、今、確かに森の手前にうごめくモンスター達の姿を確認することができた。

どうやら森の中からつぎつぎとゴブリンやオークが現れて、手前の平原で集団を作っているようだ。ぽつぽつとオークの倍くらいの身長のモンスターが見えるのは間違いなくオーガだろう。

今見えている数は500を少し超えるくらいだが、森の中にさらにどれだけいるのかは不明である。こちらも後詰めの部隊が来るようにはなっているが、到着する前にモンスターが動き出しそうだ。

停止した部隊を追い越し、将軍のドルトンの様子を見に行く。

彼も馬に乗っており、俺の姿を認めると馬を寄せて来た。

「公爵様、指揮をとられますかい?」

「いや、将軍に任せよう。どうするつもりだ?」

「あいつらが集まる前に蹴散らしとこうと思います。増えてまとまる方が面倒なんで」

「それがよかろうな。我々も戦力に数えてよい。最初の魔法撃も参加しよう。私とクーラリアはオーガとも対等以上に戦える」

「そりゃありがたいですな。最初の一撃は一緒に頼みます。後はこっちは集団戦やるんで、公爵様は遊撃で自由にやってください。オーガは兵士だと被害が出ちまうんで、できればやっていただけると助かります」

「いいだろう、オーガはこちらで始末する。では始めてくれ」

「へい、お任せを」

ドルトンは馬の首をめぐらせて兵士たちへの指示を始めた。

マークスチュアート的には用兵も才能のうちのようだが、もちろん本職に任せるのが一番であるので、ここは4人パーティでの戦いに専念させてもらおう。

「フォルシーナ、先制の魔法撃で範囲魔法を使う。お前の氷魔法はどのくらいカバーが可能だ?」

「あの集団くらいならすべて凍らせられます」

フォルシーナが指差したのは50体ほどのゴブリンの集団だ。え、それって普通に上位の宮廷魔導師レベルを超えてると思うのだが……。

「もちろん私だけの力では無理です。お父様からいただいたこの『精霊樹の杖』があるからできるのです」

「なるほど。だがお前の力も伸びているからこそだろうな。いいだろう、私はオーガを狙うので、お前はあの集団をやれ」

「はいお父様」

「クーラリア、ミアール、一斉魔法撃が終わるとすぐに乱戦になる。我々は遊撃だが、私とフォルシーナは馬上から魔法を撃つ。2人は左右にいて近づくモンスターに対処せよ」

「任せてくれ公爵様」

「かしこまりましたお館様」

ドルトンの指示によって兵たちが陣形を整える。前面に魔導師兵50人が並び、そのまま全体がモンスターの群れに向かって前進を始める。

俺たちはその左翼で同じように前進する。クーラリアはやる気のある表情、ミアールは初の大規模戦に緊張をしているようだ。フォルシーナは……俺の背中に頬ずりをしている気がするが確認のしようがない。まあ緊張している感じではなさそうだ。

平原を進んでいくと、モンスターのうめき声が聞こえてくるようになる。森からは依然としてぽつぽつとゴブリンやオークが現れては群に合流している。

当然群れの連中はこちらに気づいているようで、手にした棍棒や斧を構えてこちらを睨んでくる。群れのリーダー格になるだろうオーガも、巨大な両刃斧を肩に担いで戦闘態勢に入っている。

彼我の距離が100メートルまで近づく。

「魔法撃てぇっ!!」

ドルトンの号令とともに、50人の魔導師が杖を掲げ、一斉に魔法を発動する。

森が近いので使用されるのは『ロックジャベリン』という地属性の投射魔法だ。一人につき3本、計150本の岩の槍がゴブリンやオークの群に降り注ぐ。

貫かれたゴブリンやオークがまとめて光の粒子となって消える。100体以上はこれで減ったか。しかしまだ400体は残っていそうだ。

「『フリージングサークル』!」

遅れてフォルシーナが魔法を発動すると、先ほど指差したゴブリン集団の足元の草が円形に一気に白く変色する。

次いでその上にいるゴブリンたちが足元から凍り付いていき、あっという間に50体を超える氷の彫像ができあがった。それらは次々に砕けていくと、やはり光の粒子になって消えていく。

兵士たちから驚きの声が上がり、ドルトンも「お嬢様がこれほどお使いになるとは」と絶句している。

「見事だフォルシーナ。私も鼻が高いぞ」

「ありがとうございますお父様」

内心驚きつつも普通に褒めておいてから、俺も『ウインドパイル』を3本放つ。渦を巻く太い風の杭が3体のオーガの胸に突き刺さり、えぐるようにして大穴をあける。思ったよりエグい絵面だ、遠距離で良かったな。

「公爵様はあのオーガを魔法で簡単にやれんのかよ……すげえ」

クーラリアが俺を尊敬の眼差しで見てくるのは、俺が剣技も優れていることを知っているからだろう。魔法剣士なんて普通は半端な強さにしかならないからな。両方極めてるなんて中ボス以外の何物でもない。