軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 薬の需要

俺はミルダートとドルトンを応接セットに座らせ、俺が魔族に狙われる可能性があることをまず説明した。

「なるほど、もし魔族にそのような考えがあるのであれば、お館様が狙われる可能性は十分ありますな」

「いやはや、強すぎるってのも考え物ですなぁ。俺が魔王でも同じことは考えるでしょうし、対策はしとかないとなりませんな」

ミルダートは静かにうなずき、ドルトンは首の後ろを手でおさえながら渋い顔をしている。

「うむ。だが問題は、魔族が想定よりも大きな動きをしてきた時だ。具体的には、軍勢を率いてこの領に攻めてくるといったことだな」

「その可能性はあるのでしょうか? もし王都よりこちらを先に狙った場合、王都は守りを固めることになるでしょう。戦略としては下策にも思えますが」

ミルダートの言うことはもっともではある。ゲーム知識から言っても魔族の狙いはあくまでこの王国なのだ。国を落とすなら真っ先に狙うべきは王都であり、こちらに戦力を向けるのは戦略としてありえない。しかも王都はこの後戦力が大幅ダウンすることが確定しているのだ。

「あるとしたら別動隊をこちらに向けてくるなどだろうな。奴らは人間そのものは下に見ているゆえ可能性はある」

「とするとそこまで大規模な軍ではないということですかな。それでも厄介なことに変わりはありませんが」

「対応としては、これまで通り守りを固める方向でいきたい。重要なのは糧食とポーション、魔石の確保だ。そちらは問題ないか」

「指示された量は常に確保しております」

「ドルトンの方は警戒網の強化と兵士たちの力の底上げだな。あとゴーレムは近い内にあと10体ほど増やせる予定だ。防衛力としての運用方法を検討しておいて欲しい」

「そりゃあすげえ。まあ基本は両手に得物持たせて立たせる感じになりますかね。デカい石とか投げられるといいんですが」

「投石機として使うか、面白いな。やらせればできるだろう。試しておけ」

「へい、やっときます」

「ところでお館様、ゴーレムについては王家の方からじきになにか言ってくるかと思われますが、いかがなされますか?」

ミルダートの指摘については、実は俺も少し考えていた。

さすがに公爵領でゴーレムを10体以上使役しているなどという話になれば、基本的に王家の干渉はまぬがれない。というよりこれが公爵家でなければ優先的に王家に献上するレベルの話だ。

「例のカオスデーモンの件があるゆえ国王陛下は強く出てくるまい。問い合わせに対しては研究中とでも言っておけばよい。どうせすぐにそれどころではなくなる」

「お館様の深慮遠謀には恐れ入るばかりです」

「まったくですなあ。正直ここ数か月の公爵閣下は以前にも増して切れていらっしゃる。俺は怖くてしかたないですわ」

「私は有能な者、力を尽くす者には優しいつもりだが?」

「そらもちろんでさ。兵士の待遇がこんだけいい領地なんて滅多にありませんや。その分求められるレベルは高いですがねえ」

このあたりはマークスチュアートの元からの態度ではある。人体実験をやるような中ボスだが、公爵としては普通に有能なんだよな俺。

そんな感じで情報の共有なども済んだのだが、そこでミルダートとドルトンが妙に気まずそうな顔をしだした。

「ミルダート、何かあるのか?」

「……は、ええ。実はその、お館様がお造りになった例の女性向けの薬なのですが……」

「便通の薬か?」

「はい。私の家内も使用してとても喜んでおるのですが、それを是非、娘にも売っていただけないかと思いまして……」

「ミルダートの娘は商家に嫁いでいるのだったな」

「お館様はあの薬はまだ市中には出されないお考えのようなので難しいとは思うのですが、家内が娘に話したところ恐ろしいほどに無心をされまして」

「悩んでいる者からしたら欲しがる品であろうな。娘の嫁いだ商家は大きいところであったか。我が家ともつながりはあったと思うが」

「はい。出入りの商人のひとつでございます」

「あの薬は遠からず市中に売り出すつもりではあった。ただ事前に商人の意見も必要かもしれぬ。トリリアナに言って50錠ほど処方をしてもらえ。娘とその商家の使用人たちにも使わせ、商品としての価値を量れと依頼をしておくように」

「ありがとうございますお館様」

「お前の頼みなら無下にもできぬ。今回は渡りに船ということもあるゆえ気にすることはない。ところでドルトン、お前もなにかあるのか?」

「え、ええ、実はウチの家内もその薬の噂を聞いてですね、是非自分も欲しいと――」

いや、そこまで需要があるのかあの薬。いくらなんでも反応がありすぎるのだが……。この世界の食糧事情とかも関係してるのかもしれないが、さすがにそこまでゲーム知識ではわからないんだよな。

ドルトンにも適当な理由をつけて薬購入を許可してやると、執務室のドアがノックされた。妙に余裕がなさそうなので、緊急の要件かもしれない。

「入れ」

「失礼します! 将軍に急ぎの報告があり参りました」

入って来たのはいつも『 不帰(かえらず) の森』に行く時に護衛につく兵士ローランだった。

「おうどうした?」

ドルトンが眉を寄せて近づいていくと、ローランは敬礼をして答えた。

「北の森付近にて大規模なゴブリンとオークの集団を発見したと報告がありました。数体のオーガも確認されているとのことです!」