軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04 アラクネ族の少女ロナ

城塞都市ベロニアの近くに広がる森。

その森の中で、俺たちはアンデッドモンスターに襲われていたアラクネ族の少女・ロナを発見、救助する。

怪我をしていたロナをマリアンロッテが回復すると、ロナは気になることを口にした。どうも彼女は、封鎖されているはずのベロニアから一人で森にやってきたらしい。

俺は2人のところまで歩いていって、ロナと視線の高さを合わせるべく膝を折った。

「え……っ!?」

どうやらロナは、その時になってマリアンロッテ以外の人間がいることに気付いたらしい。目を丸くして驚きの声を上げた。

「驚かせてすまぬ。私はマークスチュアート、そちらのマリアンロッテの連れになる」

「あ……ロナ、です」

ロナは一瞬後ずさったが、優しく話しかけると辛うじて立ち止まって言葉を返してくれた。

しかしまだ警戒しているようだ。相手が陰険そうな糸目丸眼鏡では仕方ないのだが、ここはまずその警戒を解かないといけない。

「今の話、聞かせてもらった。まず一つ、ロナ殿が持っているのはジルルの花だな?」

「はい、そうです」

「さきほど熱を下げる効果があると言っていたが、ジルルの花はもう一つ、ペララの花と合わせないと効果がないのだ。それは母上から教わっていなかったかな?」

「ええと……」

と考え始めたが、少しして、

「そういえば、お母さんは白い花も使っていたような……」

と口にした。

「うむ、そうであろう。確かこの花だ。持っていくがよい」

俺は近くに生えていた小さな白い花を摘んで、ロナに渡した。

「あ、ありがとう……。これでお母さんの熱は下がるの……?」

「これを湯または茶に浮かべ、少し蒸してから飲ませれば効果はあろう」

俺がうなずいてみせると、ロナは安心したように2つの花を腰の布袋へと入れた。

ちなみに今のやりとりはもちろんゲーム知識によるものである。ジルルの花もペララの花も魔族領にしか生えていない花であり、人族がその知識を持っているはずがない。さらに言えばゲームではロナはジルルの花だけ一度持ち帰り、再度ベララの花を取りにくることになったする。

とここまで明かせばわかると思うが、実はこのロナという少女を助けたこの状況もゲーム通りのイベントだ。むしろこのイベントに遭遇するために俺はこの森に入ったのである。

ともかく、今のやりとりで俺のことを信用できると思ったのか、ロナの顔から緊張が抜けた。そこですかさず俺は重要な情報を聞きに入った。

「ところでロナよ。今ベロニアの町は人が出入りできないと言っていたが、それは本当か?」

「うん。町を治めてるネクライガ様が城門を閉じるように命令したんだって。だから誰も出入りできなくて、すごく困ってるんだ」

「では、ロナ殿はどうやって町を出てここまで来たのかな?」

「それはね、ロナだけが知ってる抜け道があるんだ。そこを通ってきたの」

そこで少しだけ自慢そうな顔をするロナ。下半身が蜘蛛のアラクネ族だが、普通に可愛い所作で、マリアンロッテもクスッと笑っている。

「それはすごいな。ところで、私たちはそのネクライガ殿に会いたいのだが、ロナの知っている抜け道を教えてもらうことはできるだろうか?」

「う~ん……」

「もし教えてもらえれば、マリアンロッテがロナ殿の母上に魔法をかけることもできるのだが」

俺が目配せすると、マリアンロッテは「そうね、お薬も大切だけど、私の魔法があればお母様は元気になると思うわ」と合わせてくれた。

たぶんこのゲームイベント的流れについてこられてないと思うが、咄嗟に対応してくれるのはさすがメインヒロインである。

ロナは少しだけ迷っていたようだが、マリアンロッテが手を取って「ね?」と微笑みかけると、ロナはこくんとうなずいた。

「うん。マリアンロッテお姉ちゃんたちは命の恩人だから、ロナの抜け道を教えてあげる」

「ありがとうロナちゃん。大丈夫、お母様はきっと元気になるわ」

ということで、これでどうやら城塞都市ベロニアに入ることはできそうだ。

ゲーム通りのイベントをこなして振り返ると、フォルシーナたちはまだ事情が呑み込めていないように、その場に立ち尽くしていた。

俺がそちらへ歩いていき、

「どうやら頼もしい道案内と知り合うことができたようだ。不思議な出会いがあるものだな」

としれっと言うと、フォルシーナが「さすがお父様です。天運までを味方に引き入れてしまうとは」と目を輝かせて反応してくれた。

「ご主人様の凄さはやっぱり強さだけじゃないんだよなあ……です。初めて見る種族の女の子すら簡単に手懐けちまうなんて、誰にもできねえですよ」

「クーラリア、国王陛下に失礼ですよ。陛下はただ目の前のあの女の子を助けただけでしょう」

クーラリアとミアールがそんなやり取りとしている後ろで、ヴァミリオラが凄く複雑そうな顔をしていた。

「ねえ貴方、もしかして、あの子がここにいるのがわかっていたのではないの?」

しかもそんなクリティカル質問をしてくるので、俺は内心かなり驚いてしまった。もちろんマークスチュアート面を全開にしてポーカーフェイスは守っているが。

「そのようなわけがなかろう。なぜそう思うのだ?」

「なぜって、あのような種族を見るのは初めてだし、普通ならもう少し慌てたり、慎重な対応をすると思うのよ。でも、貴方はまるですべてを知っていたかのように、まるで水が立てた板を流れるようにすんなりと話をつけてしまった。あまりに不思議、というよりも不自然すぎるわ」

「言われてみればそうかもしれんな。だが私とて神ならぬ身、誰がどこで危機に陥るかなど知りようもない。先ほどの花の話は冒険者時代に得た知識に過ぎぬし、単なる偶然の積み重ねに過ぎぬ」

「まあ、実際はそうなのでしょうけど。でも、貴方ならそれもあり得そうに思うのよね。例えばミルラエルザに頼んで間諜を用意するとか」

と言いながら、ヴァミリオラはロナのことをチラッと見た。なるほど少し驚いたが、ヴァミリオラは俺が転生者であることを怪しんでいるのではなく、どうやらこの状況を俺が事前に用意したものだと思っているようだ。

「さすがにあのような幼子を使うほど、私は手段を選ばぬ人間ではない。それより出発するようだな。後をついていこうではないか」

向こうでは、ロナとマリアンロッテが手をつないでこちらを見ていた。どうやらあの2人は短時間で仲良くなったようだ。

これもゲーム通りとと思うといささか引っかかるところもあるが、そんな思いは胸の裡にしまい、俺は彼女たちのほうへと歩き出した。