軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10 寄り道『隠者の試練場』

『千剣山脈』の山道を歩くこと数時間、ザコ戦をこなすこと10数回。

太陽が中天に差し掛かったので、大休止をして昼食を摂ることにした。

初日の『万魔の森』での昼食は王城の料理人に作ってもらったサンドイッチやおにぎりだったのだが、今日は俺が錬金術で作ったカップラーメンやウインナーなどである。

料理人が作ったサンドイッチなどはともかく、カップラーメンや、明らかに前世日本製の市販品ウインナーなどは貴族家出身のマリアンロッテやアミュエリザ、ヴァミリオラなどにはどうかと思ったのだが、

「国王陛下、これはとても美味しいと思います! まさかお湯を注ぐだけでこんなに美味しい料理ができるなんて魔法のようですね」

「私もそう思います。それとこのウインナーという腸詰めもとても美味しいです。深い味わいがあります」

「まったく、貴方の錬金術の腕は認めているところだけれど、こんなものまで作るとは驚きね。あのカロリーバーというものも体力が回復する感じがあるけれど、これは食べると魔力まで回復する気がするわ」

と絶賛に近い評価であった。

ちなみにカップラーメンは俺が以前夜食用に作ったのだが、それが公爵邸で広がった結果使用人たちの腹肉増加につながるという悲しいエピソードがあって、一時期封印されていたりする。

ともあれ重要なのはヴァミリオラの指摘で、やはり錬金術で作った食品には魔法的な効果があるようだ。言われてみれば、ウインナーはゲーム中でも魔力回復効果があったはずだ。

なお、クーラリアとアルファラは、

「ご主人様、このウインナーってやつすごく美味えですよ! これなら100本くらい食えるぜです!」

「こらクーラリア、私の分まで食べるんじゃない! 美味いから最後に食べるように取っておいたのだぞ!」

などと奪い合いになっていた。庶民派聖女オルティアナも、

「これは信徒の皆さんにも是非食べてもらいたい味ですね。国王陛下、こちらは売りに出すとかなりお値段が高くなってしまうのでしょうか?」

と聞いてくる。

「いや、材料も消費魔力も高くはない。レシピさえ市井におろせば、市場に出回ってもそこまで高価にはなるまい」

「それなら嬉しいですね! これは私もすごく気に入ってしまいましたので」

ガッツポーズを取るオルティアナに、俺はつい親近感を覚えてしまう。

なお、将軍のリンはカップラーメンを「これは行軍中の食料としても非常に有用です。食べ物の味は兵の士気に大きく関わりますので」と真面目に分析していた。

そういえばゲームでは缶詰とかもアイテムであったんだよな。そういうのも順次作っていってもいいかもしれない……と思うが、最近俺が新しいものを作りすぎて錬金術師のトリリアナたちが大変なことになっているので、自重した方がいいだろうか。

さて、午後も山道を進んでいくが、ザコモンスターが出てくるだけで大きな動きはない。

遠くに見えた魔族の砦も山の陰に隠れていて、その様子をうかがうこともできない。どちらにしても今日のうちに砦にはたどり着かないのだが、代わりにやっておきたいことがあった。

夕方近くなった時、山道の右脇の岩壁に、人がひとりすっぽり入るくらいのくぼみがあるのが見えた。それは本当にただのくぼみで、普通なら素通りしてしまう程度のものである。

しかしゲーム知識では、それは無視できない『目印』であった。

といっても、なにか重要イベントがあるわけではない。過去に『神速』や『魔の源泉』といったチートスキルを得たのと同じ、隠しダンジョン『隠者の試練場』の入り口があるというだけである。

「……ふむ、ここになにかあるな」

この『隠者の試練場』はスキルこそ得られないが、強力な武器が手に入るので入っておきたい。かといって、いきなり入口を開いたらフォルシーナたちが驚いてしまうのでひと芝居打つことにした。

「お父様、どうなさったのですか?」

「いや、この壁のくぼみ、いささか不自然だと思ってな。わずかに魔力の流れも感じられる」

「それは……なにか罠が仕掛けられているのでしょうか?」

「いや、そういうものではないな。このくぼみの奥が恐らく未開のダンジョンになっているのだろう」

「そのようなことがあるのですか!?」

俺の適当な言葉――といってもゲームの設定通りの話だが――を聞いて、驚きの声を上げるフォルシーナ。マリアンロッテたちも驚いたような顔をするが、ヴァミリオラだけは 訝(いぶか) しそうな目を向けてくる。

「せっかくだ、試しに魔力を通してみるか」

なにが「せっかく」なのか自分でもよくわからないが、ヴァミリオラが突っ込みを入れてくる前に、俺はくぼみの奥の岩壁に手のひらを押し当てて魔力を通した。

すると壁に魔法陣のような模様が浮かび上がり、そしてくぼみの奥の岩壁がスウッと消えて、そこに人が一人通れるくらいの洞穴が現れた。

それを見て、当然俺以外の全員は「あっ!?」と声を上げた。

まあそれはそうだ。だってこんな隠しダンジョンなんて、俺以外の人間にとっては驚異の現象以外の何物でもない。

「お父様、これはとても素晴らしい発見なのではありませんか!?」

フォルシーナが俺の右腕を取ってそう言うと、反対側でマリアンロッテが左腕を取りながら、

「新しいダンジョンまで発見なさるとは、さすが陛下です!」

と俺を悶絶させることを言ってくる。

出遅れた(?)アミュエリザが俺の前に回り込んできて、

「このダンジョンは陛下の名前を付けましょう!」

などと言うに及んで、ヴァミリオラが俺の背後で盛大に溜息をついた。

「まったく、いつもながら 出鱈目(でたらめ) な男ね。魔力を流してダンジョンを発見するなんて聞いたこともないわ」

「私も冒険者時代に聞きかじっただけの情報だったのだがな。しかし本当にあるというのは興味深い」

「確かに興味深くはあるけれど……もしかして入ってみるつもり?」

「無論だ。ダンジョンとなれば放ってはおけまい。もっともこの雰囲気だとそう大きくはないダンジョンであろうからな」

所詮隠しダンジョンなので、30分もあれば踏破できてしまうものである。

それ以上はヴァミリオラに有無を言う隙を与えず、俺は「入るぞ」と宣言して、『隠者の試練場』の中に入っていった。

その『隠者の試練場』は、入口は狭いが中は広い洞窟になっていた。

天井に光る石がいくつも並んでいて、活動できる明るさになっているのもいかにもゲーム世界のダンジョンという感じである。

俺はどんな敵が出てくるのかわかっているので気楽だが、フォルシーナたちはかなり緊張しているようだった。呆れ顔だったヴァミリオラも、さすがに杖を胸元に引き寄せて臨戦態勢である。

陣形は、前衛である俺、アミュエリザ、ミアール、クーラリア、将軍リンが、後衛であるフォルシーナ、マリアンロッテ、アルファラ、聖女オルティアナ、ヴァミリオラらを守る形になる。

岩の洞窟を歩いていくと、奥からゴトゴトという音が響いてくる。

現れたのは、左右に一輪ずつ車輪がついた二輪馬車、いわゆる『 戦車(チャリオット) 』の上に、上半身だけの鎧騎士が乗っている奇妙なモンスター、『ストレンジチャリオット』5体だ。

鎧騎士は槍と盾を持っていて、車輪をわずかに動かし前後にゆらゆら揺れながら、こちらの様子をうかがっている。

「馬が牽いているわけでもないのに動く馬車とは、モンスターといえどなんと奇怪な……!」

将軍リンが、ランスを構えながらわずかに前に出る。

『隠者の試練場』は隠しダンジョンなので、出てくるモンスターもおかしなものが多い。俺にとっては「ゲーム通りか」で済む要素だが、普通の人間から見ると奇妙すぎる見た目だろう。

「見た目は妙だが、ダンジョンモンスターであることは変わりない。いつもの通り対応すれば問題あるまい」

どうも全員堅くなっているようなので、俺は『シグルドの聖剣』に魔力を込め、そして上級光属性魔法『ライトオブジエンド』と放った。

太めの光線がストレンジチャリオット一体を貫くと、それだけでストレンジチャリオットは消滅した。

「やはりこの程度か、他愛ない」

と、陰険腹黒国王的なセリフで場を和ませると、それで緊張が解けたのか、フォルシーナたちが俺の前に出た。

「済みませんお父様、少し緊張をしておりました。しかしもう大丈夫です。ここからはお任せください」

「うむ、そうしよう」

その後出現したストレンジチャリオットは、フォルシーナたちが次々と倒していった。ストレンジチャリオット自体は、持っている武器が斧になったり弓矢になったり杖になって魔法を使ってきたりと何種類か出てくるが、いずれも苦戦することはない。

本来ならかなり強いはずの隠しダンジョンのモンスターだが、すでにゲーム終盤レベルの強さに達しているフォルシーナたちの相手にはならない。しかも俺が手を出さなくても9人パーティなのだから、むしろモンスターが可哀想なほどである。