作品タイトル不明
01 2将軍との面会
祝賀の宴から一週間。
その間、俺は国内の戦後処理などに追われていた。
なにしろ神聖インテクルース軍は、魔族の大軍と2国の軍を相手に戦ったのである。
戦死者も出なかったわけではなく、彼らの慰霊祭などもラファルフィヌス教会と共同で行ったりもした。
また魔族との戦いで大量に得られた魔石や魔物の素材などの扱いや、捕虜の扱いなども考えなければならなかった。
特にミルザム王国のジャマザ将軍、ベランゴル民主国のセドレン将軍の強者2人は扱いが難しい。といっても、もともと彼らを処刑する気はない。この世界の国家にとって将軍クラスの強者は戦略兵器に匹敵する。つまり安易にどうこうすると国家バランスが簡単に崩れてしまうのだ。
ではどうするかということで2人と直接話をしてみたのだが、まずセドレン将軍は良くも悪くも主君や権力に忠実な猪突猛進タイプの猛将で、懐柔策などは通用しないタイプであった。
「私は悪辣な王を討伐せよと命を受けて戦場に立ったのみ。貴公がどのような王であるのかそれは私が判断するところではなく、私にとって貴公は討つべき相手であってそれ以外ではない。首を刎ねるも車裂きにするも、好きにされるがよかろう」
なにを言ってもこんな感じなのでどうしようもなかった。
「貴殿は誰の命なら受けるのだろうか」
「私が命を受けるべき相手は、人民に選ばれた指導者のみ。今はアルバッハ閣下だけが私の主である」
という感じで、すぐにベランゴル民主国に戻しても混乱しか生まない気がしたので、しばらく獄につながれていてもらうことにした。なお獄といっても、それなりに健康で文化的な生活はしてもらっている。身体だけは拘束しているが。
一方でジャマザ将軍だが、こちらは話がかなり通じる人間だった。
俺が牢を訪れると、恭しく一礼をしてくる壮年の 偉丈夫(いじょうふ) 。黒髪をなでつけけ、口ひげを刈り揃えた風貌は、歴戦の勇士と呼ぶにふさわしい風格があった。
「壮健そうでなによりだ、ジャマザ将軍」
「マークスチュアート国王陛下のご慈悲に感謝しております。……やはりキルリアン国王陛下はお敗れになったのですな」
「うむ。まあ色々とこちらにも策があってな」
「いえ、策の有無にかかわらず、戦力であまりに開きがあり申した。小官が敗れ、配下の騎士たちが斃れたのであれば、我が軍にはもはや万に一つの勝ち目もなかったことでしょう」
「元より国力に差があるのだ、そこまで卑下するものでもあるまい。現に貴殿の 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) は強敵であった」
「彼らはどうなったのでしょうか」
「多くは戦場にて戦闘不能になり、我らの捕虜となっている。残念ながら帰らぬ者となった者もいるが」
「それは仕方ないかと思います。捕虜として生かされている者がいるなら幸いです」
「貴殿を含め捕虜たちは、ミルザム王国から賠償金が支払われ次第全員国に帰す予定だ。ただミルザム王国の王宮内はしばらく落ち着かぬだろうがな」
俺の言葉に、ジャマザ将軍は目を伏せた。
「でありましょうな。キルリアン国王陛下の王座も盤石ではなく、それゆえの今回の出征でもありました。そういう意味でも、マークスチュアート国王陛下には申し開きのしようもありませぬ」
「誤った選択の責を負うべきは王であって、配下の将軍ではない。ただ気になるのはキルリアン王の王座が揺らぐことによって、ミルザム王国内で大々的な権力争いなどが起こることだ。内戦などになれば目も当てられぬ」
なにしろミルザム王国やベランゴル民主国はこちらにとっても他の国からの防波堤になっている。内戦を起こして疲弊したところを他の国に攻められたりしたらこっちにまで面倒が降りかかるのだ。そのためにも結局、両将軍には国に戻ってもらわないとならない。
「陛下のお言葉の通りです。ミルザム王国の西にあるベクトラは古から 虎狼(ころう) の国として知られております。攻め時と見れば躊躇なく兵を挙げることでしょう」
「そうならぬためにも、貴殿の働きには期待している。時に将軍、ミルザム王国にはキルリアン王と王座を争える者はいるのか?」
「……血筋で申し上げれば、陛下の兄上がいらっしゃいます。ただ早くから 政(まつりごと) の道から外れられ、絵画や詩文など、芸術の道に入っていらっしゃいますので、ご自身は王位には全く興味はお持ちでないかと存じます」
「なるほど」
その話だけだと、なんとなく「野心家の弟と争うのを避けた兄」みたいな立派な人物を想像してしまうが、そんな人物がいることもそうそうないだろう。
ともかくそうなると、気落ちしたキルリアン王の元にジャマザ将軍を返してやって、虎狼の国ベクトラなるものと睨み合ってもらうのがベストだろう。
「あの後ラシュアル将軍からも聞きましたが、マークスチュアート国王陛下は『シグルドの聖剣』に認められ、ドラゴンをも従える『神に選ばれし王』でいらっしゃるとか。であればミルザム国内がどうなろうとも、神聖インテクルース王国に攻め入ることはないかと存じます。小官としましては、ミルザム王国は神聖インテクルース王国に併合されるのではないかと愚考をしていたのですが……」
「私はそこまで身の程を 弁(わきま) えぬ人間ではない。人間、腕の長さには限度があるものだ」
「陛下の手は遠くまで届きそうに思えますが」
「貴殿にそう評されるのは悪い気はしないがな。今後ミルザム王国が我が国にとってよき隣国でいられぬのなら考えるかもしれぬ。貴殿にはそれを含んでおいてもらおう」
「陛下によって拾われた命なれば、陛下の期待は裏切らぬように精励いたします」
深々と頭を下げるジャマザ将軍。
どうやらミルザム王国は一波乱あっても、結局キルリアン王のもとでまたやっていくことになりそうだ。
とすると、やはりテコ入れが必要なのはベランゴル民主国である。
先方へは、すでに俺が直接乗り込む旨は報せてある。ゲームでは描かれなかった世界だ。ちょっとした旅行気分で向かうことにしよう。