軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04 エクストラポーション

館に戻ると、俺はフォルシーナとアラムンドと、そしてついでに家宰のミルダート、将軍のドルトンを連れて錬金術用の離れに向かった。

俺は一階の錬金術用のテーブルの上に、棚にあったいくつかの薬草やモンスターの素材と、取って来たばかりの『マナビーストの血晶』を並べた。

「フォルシーナよ、お前は『エクストラポーション』というものを知っているか?」

「はいお父様。失われた腕や足なども回復させるという、最上位の回復薬です」

「うむ。市場にもほぼ出回ることのない非常に貴重なものだ。なぜなら『エクストラポーション』は、限られたダンジョンの深層でしか手に入らない貴重なものだからな」

「はい、それも存じております」

「しかし、私はその『エクストラポーション』の作成方法を発見したのだ。と言ってもまだ理論の段階で、実際に作るのは今からになる」

と言うと、集まった4人は全員が驚きの表情になった。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ公爵閣下。そんなおっそろしい話、俺が聞いちまっていいんですかい!?」

一番 狼狽(ろうばい) しているのは面白いことに将軍のドルトンだった。

「なにを言うか。もし『エクストラポーション』が製作できるとなったら一番使うのは兵士ではないか」

「それはそうかもしれませんが……っていうかそんな高価なモン、兵士に使うんですかい!?」

「兵士1人を育てる時間と手間と、そして費用を考えれば安いものだ」

「そりゃあそうかも知れませんが……」

「まあどちらにしろ、まずは作れなければ絵にかいたドラゴンでしかない。さて……」

俺は手早く錬金術用の道具……ゲームでもよくお世話になった大きな圧力鍋みたいな『錬金釜』を用意し、テーブルに並べた材料を必要分放り込んでいく。最後に『マナビーストの血晶』を入れて蓋を閉める。

「始める」

そして両手で『錬金釜』を左右から挟み込むと、魔力を込めて、複雑な魔法陣を頭に思い浮かべる。するとじわじわと『錬金釜』に魔力が吸い込まれていき、体感で3割ほどの魔力が吸われたところで魔力吸収はおさまった。

「ふむ、上手くいったか……?」

手近にある薬品用のビンを並べ、そして『錬金釜』の蓋を開く。中にあった材料はすべて形を失い、そこにはわずかに光を放つ、蛍光色の液体で満たされていた。

俺はその液体を10本のビンに入れていき蓋をする。

しかし確かにゲーム通りのシステムなんだが、これをリアルで『錬金術』とか言うのは詐欺な気もするな。

「ミルダート、『鑑定』を」

「はっ」

家宰のミルダートは『鑑定』というかなり強烈な便利スキル持ちである。彼は懐から 片眼鏡(モノクル) を取り出して装着すると、ビンを手に持ってしばらく眺めていた。そして大きく深呼吸をしてから、俺のほうに顔を向けた。

「間違いなく『エクストラポーション』でございます。恐れ入りましたお館様。これほどの錬金術をお修めになっていらっしゃるとは」

「ふ、お前が仕事を取り仕切ってくれたから余裕があったのだ」

実際はただのゲーム知識で、『マナビーストの血晶』から『エクストラポーション』ができるって知ってただけだけど。

さりげなくミルダートの好感度もアップをしておいてから、俺はアラムンドに指示をだす。

「アラムンド、地下の獣人族たちをこちらへ連れてこい」

「は……はっ」

程なくして8人の獣人族の少女たちが連れてこられた。足がないものは他の少女が肩を貸している。

右腕がない元剣士の狐獣人娘が10代後半で、他の7人は全員10代前半である。今気づいたが、彼女たちはなぜかオーディションでもしたかのように全員が可愛らしい。アラムンドは本当に俺の好みを選ぼうとしたのかもしれないな。いや、別に好みではないのだが。

急に連れてこられた彼女たちは、睨むような目つきの狐獣人娘以外、揃って不安そうな顔を俺に向けてきた。

「諸君に会うのは初めてだな。私はマークスチュアート・ブラウモント。王国公爵にしてこの領地の領主だ。奴隷となった君たちを購入した人間でもある」

「こ、公爵様……?」

目を丸くする獣人娘たち。ただ狐獣人娘だけは怪訝そうな顔だ。

「諸君らを奴隷商人から買い取ってこちらで長く過ごしてもらったのは、私の実験に付き合ってもらいたかったからだ。といっても、なにか怪しげなことをするわけではない。私が作った『エクストラポーション』の効果がどの程度のものか、それを知りたいというだけだ」

「『エクストラポーション』……だから手足を失った人間を集めたのか?」

狐獣人娘が目つきを鋭くしながら口を開いた。凛とした声と口調で、なるほど人気があったのもうなずける。

「そうだ。まあ失敗しても手足が戻らぬだけで害はない。そこは安心したまえ。さて、では早速だが、一人ずつこれを飲んでもらおう」

俺が端にいる少女にビンを渡そうとすると、狐獣人娘が割って入ってきた。

「待て。オレに先に飲ませろ。本当に毒じゃないかどうか確かめる」

「ふむ、君は随分と献身的なのだな。では最初は君が飲みたまえ」

俺がビンを差し出すと、狐獣人娘はひったくるようにしてそれを手にし、蓋を開けて匂いを嗅いだあと、口をつけて一気に 嚥下(えんか) した。

「ん……んんっ!?」

狐獣人娘の全身が微かに光を帯びる。これもゲーム通りのエフェクトだ。

そして彼女の右肩から、失われた右腕がいきなりニョキニョキと伸びてきた。ちょっと楽しみにしていたんだがそうやって回復するのか。ただの不気味映像だなこれ。

見ると彼女の顔の傷も全くなくなっており、潰れた左目も完全に回復している。

「お……おおッ!? 嘘だ……右腕も、左目も、それと身体が痛いのも、完全になくなってる!? うそ……おお、おおおッ!」

狐獣人娘はいきなり叫ぶと、両腕で自分の身体を抱くようにして、その場に膝をついて泣き始めてしまった。

「毒でないとわかってもらえたか? さあ、諸君らも飲みたまえ」

他の7人も問題なく欠損を回復した。

それと同時に泣く娘が8人に増えたのだが……これは断罪案件にはならないよな?