作品タイトル不明
異形のフリード⑤
あの女……クリスの仲間の烏と名乗った女に地下牢から連れ出された俺は、同じく幽閉されていた場所から連れ出された父上と共に転移魔法で逃げ出す事に成功した。
「ぐっ」
硬い石畳に投げ捨てられた俺は、烏を睨みつけた。
「貴様!丁重に扱わないか!不敬だぞ!」
「…………まだ自分の立場が分かっていないのね」
「はっはっは、それが分かる程度の知恵が有ればエリーを手放したりしないだろう」
そう言ったのはエリザベートと何度か話しているのを見た事が有る男だ。
片方だけの魔族の角に、エルフの様な耳、狼の尾など、複数の種族の特徴が見て取れる。
「ふん!汚らわしい混ざり物如きが許可もなくこの俺の前で口を開くな」
俺がそう言ってやった瞬間、周囲の空気が冷たく変わった気がした。
「ごべっ!」
瞬間、俺の首がねじ切れるかと思う程の衝撃を受けた。
見れば顔に大きな傷を持つ大男が冷たい目で俺を見下ろして来た。
「貴様如きが、イーグレット殿下に対して舐めた口を聞いて良いとでも思っているのか?」
「貴様……」
俺は大男を睨み返すが、明らかに幾つもの死線を超えて来た大男が発する殺気に腰が引ける。
「まあまあ、構わないよ、グレナム」
「しかし……」
「君は家畜に吠えられて激怒するのかい?しないだろう?
同じ事だよ。好きに吠えれば良い。どうせ蚕への土産に持ってきただけの男だ」
「はっ!」
蚕?土産?何を言っているのだ?
こいつらは俺を助ける為に行動したのではないのか?
その後、俺が何を問いかけても誰も何も答えなかった。
まるで家畜を扱う様に、俺と父上はある男の前へと連れて行かれた。
その男は年老いた忌まわしき魔族だった。
蚕と名乗った男は、俺や父上を使って身の毛もよだつ邪悪な実験を行った。
何度も何度も体を切り刻まれ、怪しい薬を飲まされた。
あの父上でさえ、殺してくれと嘆願するほどの責め苦を味合わせられたのだ。
俺は何度も何度も何度も心臓が止まった。
発狂した事も1度や2度では無い。
だが、そのたびに魔法で無傷の体に、正常な精神に戻されるのだ。
そんな毎日が続いたある日。
俺はどうしてこんな目に合っているのかと考えていた。
そうだ、エリザベートのせいだ。
あの女さえいなけれは、俺は今頃シルビィと共に贅沢な暮らしを満喫していた筈なのだ。
俺は王となり、シルビィは王妃だ。
全ての者が俺に傅き、俺の命令を聞く。
そんな素晴らしい未来が待っていた筈なのに。
俺がエリザベートへの恨みを積み上げている時、蚕があのイーグレットを連れて現れた。
「殿下、本当によろしいので?」
「ああ、どうやらエリーが来てくれた様だからね。歓迎の用意をしないと」
そう言ってイーグレットは俺を見下ろしてニヤリと笑った。