作品タイトル不明
大戦③
レクセリン砦を北に見る平原にハルドリア王国とユーティア帝国、両国の軍が距離を置き睨み合っていた。
両軍共に数万の兵力。
中央大陸を二分する大国同士の国内、属国の軍を集めた大戦力である。
両国との関係の薄い数少ない国を除く、中央大陸の殆どの国が関係している過去に類を見ない大戦争である。
ハルドリア王国軍は一点突破を狙い、中央に強力な戦力を配置して敵の陣形を穿つ楔型の陣形を取っており、対するユーティア帝国軍はそれを受け止め、包囲して削る鶴翼型の陣形だ。
兵力の総数では僅かにハルドリア王国の方が多いが、レクセリン砦を背後に構えるユーティア帝国軍の方が有利な戦場だろう。
両軍からの使者が中央で互いに降伏勧告を行うが、それで降伏するならこんな事にはなっていない。
当然、お互いに相手の降伏勧告を拒否する。
その後、使者同士がお互いに敗北を認める場合は白旗を掲げる事や、捕虜の取り扱いは戦時国際法を適用する事など、この戦争における取り決めを確認し、自陣に戻る。
コレが伝統的な戦争作法だ。
そして、それが交わされた今、この中央大陸で歴史上最大級の大戦争が始まった。
初めはお互いに射程の長い魔法の撃ち合い、だがコレは結界魔法や魔法による迎撃などで防がれるのが常だ。
その後は歩兵同士のぶつかり合いだ。
このレベルの戦いとなると、個人の武技は埋もれてしまう。
それでもAランク冒険者クラスの実力者なら1人で100人以上の相手を出来る者も存在している。
しかし、その様な戦力は温存されるもので、始まったばかりの大戦では、まだ目立った存在は見えていなかった。
私はレクセリン砦の防壁から、ぶつかっては引き、また一当たりする兵士達を見下ろしていた。
全体的に見れば大した事ではない。
だが、この数分で何百人もの人間が死に、何千人もの人間が負傷している。
「この空気も久しぶりね」
私の麾下にある義勇軍は遊撃を任されているので、まだ前線には出ていない。
ハルドリア王国にはモンスターテイマーが率いる魔物の軍勢やあの不気味な男達の様な戦力もある筈だ。
そう言った者達が戦場に出て来た時には直ぐに遊撃に出る心算である。
「エリー団長、君の言う通りだったな」
私の隣に武装したルーカス様が並ぶ。
私は送り込んだ間者から得たハルドリア王国軍の戦術や陣形などの情報をユーティア帝国の上層部へと流している。
勿論、無条件で信じて貰える訳では無いが、有力な参考意見として受け取って貰えている。
その為、ハルドリア王国とユーティア帝国の初めの当たりは、敵戦力の配置を読み切ったユーティア帝国が優勢となって始まった。