軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開戦⑩

私を背に乗せたユウの従魔、サンダーバードのオリオンはレクセリン砦の中庭へと、突風と共に舞い降りた。

中庭を警備していたレブリック辺境伯軍の兵士達を無視してユウと魔族の冒険者に支えられながらオリオンの背中から飛び降りる。

「大丈夫ですか、エリーさん」

「ええ、何とかね」

あのホブゴブリンは本当に強かった。

洗練された武術に強力な武器、更には気高い騎士道精神まで持っていた本物の武人だった。

だからこそ私は、彼の亡骸をわざわざ回収したのだ。

戦が終わったら静かな所に埋葬してあげるつもりだ。

いや、こんな事を考えている場合では無い。

血を流しすぎたせいで思考が定まらず、ふらつく私を支えながらユウが指示を出す。

「義勇軍団長のエリーさんが重傷です。

道を開けて下さい」

その言葉に慌てた兵士達が道を開け、また報告の伝令が走る。

「ユウ……麻酔薬と気付薬……持ってるでしょ?」

「も、持っていますがそんな気休めでどうにかなる怪我では有りませんよ。

早く傷口を塞いで出血を止めないと……」

「いいから……」

「は、はい」

ユウが取り出したポーションを飲むと痛みが和らぎ意識がハッキリとして来た。

流石は帝国一の薬師だ。

並のポーションより一段上の効能だ。

「はぁ、はぁ、ユウ、戦況はどうなっているの?」

「既に大局は決しています。変異種のホブゴブリンや竜種などの強力な魔物は討伐され、負傷者を見捨てて無謀な突撃をして来た侵略軍は帝国軍に返り討ちにされました。

それにより侵略軍の士気はガタ落ち、逃亡兵も出ていて継戦は不可能、敵首脳陣は撤退、友軍は追撃戦に移行しています」

「そう、なら暫くは戦う必要は無さそうね」

私は魔力を凝縮し、神器を発動させた。

流石にこの傷で神器を使うのは辛いが、今は時間との勝負だ。

「神器【嫉妬の魔導書】」

他者の神器を記録する【嫉妬の魔導書】をめくり、目当てのページを開いた私は再び魔力を操る。

「神器【祝福の鐘】」

創り出したのは黄金に輝くハンドベルだ。

「こ、これは一体……」

「説明は……後よ」

驚くユウを他所に、私はハンドベルを鳴らす。

すると打ち鳴らす度に虹色のベールが現れて私を包み込む。

そして全身を包み、一度強く発光すると光の粉となってハンドベルと共に中空へと溶けて消えてしまった。

「ふぅ、危なかったわ」

私はすくっと立ち上がり、身体の各部に異常が無いか確かめる。

うん、問題無いわね。

斬り飛ばされた左腕も無傷で元に戻っている。

「な、何ですかそれは⁉︎」

「私の神器【嫉妬の魔導書】の力は他者の神器を記録し再現するのよ。今のはハルドリア王国王都の大司教様の神器、能力は完全治癒よ」

「凄まじい能力ですね。普通、魔法でも薬でもあれだけの大怪我なら完治まで数日掛かりますよ」

「それなりに制限が多いけどね。【嫉妬の魔導書】を使ってしまったから私は72時間、一切魔力を使えないわ」

「それでも強力な神器ですよ」

「それでも使い勝手の良い能力じゃ無いわ。

【祝福の鐘】は治癒対象に制限が多いのよ。

息があればどんな傷でも治せて、出血して失った血も元に戻るけれど、使えるのは1ヶ月に1度、同じ対象を治癒出来るのは1年に1度、治せる傷は1時間以内の傷まで、ってね」

「それは……確かに乱用は出来ませんね」

「ええ、切り札にはなるけど、魔力が使えなくなるから連戦は出来ないわ」

そんな事をユウと話しながらレクセリン砦の司令部に向かって歩いていると、慌てた様子のルーカス様が姿を見せて、平然と歩く私の姿に目を見開いて驚いていた。