軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開戦⑨

「ぐっ……」

私は血が流れ落ちる左腕に魔力を集めて身体強化を強める。

大した効果は望めないが、止血代わりだ。

「グル、ギオン」

私の体勢が整うまで待っていたホブゴブリンが再び一歩を踏み出す。

「ギォオオ!!!」

「「っ⁉︎」」

突然、雄叫びが聞こえた。

私の血に誘われたのか、上空から巨大な昆虫型の魔物、デスビートルとギガヤンマが此方に急降下して来た。

魔法で迎撃しようとするが、間に合わない。

「グルッ!!」

「【遍断ち】」

その昆虫型の魔物を止めたのはホブゴブリンが投げた槍と飛来したサンダーバードに乗ったユウの大斧の一撃だった。

こちらに少しだけ視線を向けたユウは、一瞬迷った瞳を見せるが、直ぐに空高く舞い上がると更に寄って来る飛行型の魔物を次々と倒し始めた。

ユウのサンダーバード『オリオン』の背には、手綱を握りながら大斧を振り回すユウと、その後ろで長剣を握る魔族の冒険者が乗っていた。

確か、ユウの知り合いのAランク冒険者だった筈だ。

あの2人なら、上空を任せても大丈夫だろう。

「ふぅ……待たせたわね」

私は息を整えてホブゴブリンに向き直った。

私を襲おうとした魔物を槍を投げて倒すとは、随分な騎士道精神の持ち主ね。

「…………」

私はフリューゲルを一旦口に咥えて手を空けると、魔物に突き刺さったホブゴブリンの槍を引き抜き、投げ返した。

ホブゴブリンが投げ渡された槍を掴み取り、魔物の体液を振り払った。

「さあ、再開と行きましょう」

「グル」

再び激しい撃ち合いが始まった。

とは言え、左腕を失った私は、ホブゴブリンの攻撃を受け止める事が出来ない。

その為、全ての攻撃を避けなければならず、完全な劣勢だ。

どんどんと後退する事を余儀なくされた私は、背後に転がるアレを確認し、ホブゴブリンの槍を躱すと同時に大きく跳ぶ。

そして地面に転がっていた私の腕をホブゴブリンに向けて蹴り上げた。

「我が血を喰らい 咲き誇れ徒花【氷血扇華】」

私の腕を触媒にした魔法を発動させる。

自分の肉体を触媒にする禁忌の古代魔法だ。

短い詠唱で発動出来るが、その威力は強力だ。

腕一本だけで発動したので完全な物ではないが、瞬時ホブゴブリンの周囲を真っ赤な氷の薔薇の蔦が包み込み、その効果範囲内を凍結させた。

「…………っ⁉︎」

しかし、ホブゴブリンは一歩を踏み出す。

赤い蔦を引きちぎりながら突き進んで来る。

その体を凍りつかせながら。

赤薔薇の結界を突き破ったホブゴブリンは、しかしながら満身創痍。

私に僅かに届かず倒れ伏した。

その衝撃で凍りついた腕は砕け、次第に全身が凍って行く。

「グ……ルォ……」

「はぁ、はぁ……貴方は強かったわ」

「…………ギァ……」

「【強欲の魔導書】」

ホブゴブリンの死を確認し、神器を発動させた私は、フリューゲルとホブゴブリンの死体を収納した。

「エリーさん!」

「ユウ」

サンダーバードが私に向かって急降下し、その背のユウがこちらに手を伸ばしていた。

その手を掴み取った私は、ユウと魔族の冒険者に引き上げられ、レクセリン砦へと運ばれるのだった。