軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

敗退

「くそ!くそ!無能共めぇ!!」

「で、殿下、お静かに願います。敵の追撃部隊にこちらの位置が……」

「五月蝿い!それくらいわかっている!」

レクセリン砦を攻め落とすべく軍を率いていたフリードは、返り討ちに合い占領している都市まで撤退を始めていた。

既に陽は落ち、深夜に近い時間帯だ。

フリードを護衛する者達も次第に数を減らし、今では10人も居ない。

こんな状態で帝国の追撃部隊に見つかれば一巻の終わりである。

その為、フリード達は火を焚く事もせず、夜露で湿った草木の中に身を隠しながら息を潜め、身体を休めていた。

今まで、まともに軍事訓練などに参加した経験も無いフリードには耐え難い環境であった。

苛立ちながら周囲の兵士達を邪魔だと遠ざけたフリード。

「おい4号!出てこい」

「此処に」

そのフリードの声掛けに近くの草むらから兵士の格好をした1人の男が姿を見せた。

フリードの護衛をしていた兵士達の中には居なかった男だ。

彼は王国からフリードに与えられている隠密……通称『影』と呼ばれる者達の1人だ。

影に名前は無く、番号で呼ばれる。

4号は王命により、フリードに忠誠を誓った影であった。

複数居る影の中でも、王族にはそれぞれ腹心と言える者がいる。

フリードは王城から逃げ出す際、自身の影である4号を連れて来ていた。

その実力は高く、フリードがここ数日、少数の護衛だけで逃げおおせているのも、偏にこの4号が敵を撹乱し、また排除して来たからに他ならない。

「今回の戦で本陣の結界を破壊したクソ野郎は何者だ」

「確かな情報では有りませんが、敵兵の会話の内容から推察すると、義勇軍団長の『黄昏の魔女』と呼ばれる者の仕業だと思われます」

「黄昏の魔女?ふん、女か。

義勇軍と言う事は傭兵か何かだろうな。

4号…………周囲の敵はどうだ?」

「現在この周囲に帝国軍は居ません。

明日には占領している都市の勢力圏に入るかと」

「よし、ではお前はレクセリン砦に引き返し、その義勇軍団長とやらに接触しろ。

所詮卑しい女傭兵だ。帝国からの報奨金の倍額をくれてやると言えば尻尾を振って此方に着くだろう。

もし、此方に着かないならば殺せ。出来るな」

「帝国皇太子やレブリック辺境伯ならば難しいでしょうが、義勇軍は所詮外部戦力、そこまで厳重な警備では無いでしょう」

「よし、行け」

「御意」

フリードが命じると、4号は再び音もなく草陰へと姿を消した。

これで、あの忌まわしい魔法の主は無効化される。

もし、味方に着いたならば戦力として利用し、最後には始末すれば良い。

フリードは満足げに眠りにつくのだった。

翌日、朝早くから都市を目指して進んでいたフリード達の前に兵士が姿を見せた。

一瞬、帝国兵かと身構えたが、その鎧に刻まれたハルドリア王国の紋章を見て安堵の息を吐く。

「フリード殿下、ご無事で何よりです」

「殿下、お疲れの所誠に恐縮で御座いますが、ブラート陛下がお待ちです。我々と御同行を願います」

「ちっ」

どうやら、戦地へ向かっていたブラート率いる王国軍は、レクセリン砦でのフリードの敗北を察して、占領中の都市に進路を変えたらしい。

ブラートは既に到着しており、都市の実権も奪われていた。

兵士達に連れられて都市の領主の屋敷の執務室に来たフリードは扉の先で、父王と久方ぶりの再会を果たした。

「お久しぶりです父上、ですが私が攻め落とした都市に口を出すのはいかがな物でしょうか?

これは私の功績でありまばらばぁ!!」

そこまで口にしたフリードはとてつも無い衝撃を受けて意識を失う。

目の前には、さっきまで椅子に座って隣に立つジークと共に書類を見ていた筈のブラートが拳を振り抜いた姿で立っていた。