軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪魔の日②

ティーダの大鎌は、アルトロスの首を斬り飛ばす軌道で振るわれた。

アルトロスは白煙で作られたティーダを迎撃した為、どう動こうとも、迎撃よりも大鎌の方が早い。

「貰ったッス!」

しかし、ティーダの大鎌は甲高い音を立てて止まった。

「なっ⁉︎」

ティーダの大鎌を止めたのは主人を失った筈の剣だった。

アルトロスが素早く手を振ると、その動きに連動する様に宙に浮く剣が踊る。

「わっ⁉︎ちょ、な、何すかコレ!」

「ティーダ!」

私はティーダの盾になる様に氷を作るが、あっさりと切り裂かれる。

しかし、その間にヒルデの白煙がティーダを掴み、私達の方へと引き寄せていた。

「あ、危なかったッス!

おい、悪魔!不意打ちなんて卑怯ッスよ!卑怯!正々堂々と正面から戦うッス!」

不意打ちを仕掛けて返り討ちに遭ったばかりとは思えない清々しいクレームだった。

アルトロスは戻って来た剣を再び手にすると、切先を此方へと向ける。

「【炎】」

剣から噴き上がり、弾丸となって飛来する。

「【氷壁】」

「【風】」

氷の壁が炎を受け止めるが、アルトロスが振るった剣から風の刃が放たれ、【氷壁】を砕いた。

「どうなっているの⁉︎悪魔は複数の属性が使えるって事?」

「違うッスよ、ヒルデさん。悪魔も使える属性は一種類の筈ッス」

「となると、あの剣ね。多分、マジックアイテム」

「ご名答」

アルトロスは剣を掲げる様に見せつける。

「名は『 全一(アンリ・マンユ) 』、使用者の魔力を別の属性に変換する《 伝説級(レジェンド) 》の名剣だ」

伝説級……それが本当なら、能力が魔力の変換だけの筈がない。

他にも能力を隠している筈だ。

「コレは本気で不味いわね、エリーさん」

「ええ、弱体化していてコレとはね。

あのアルトロスと言う悪魔、伯爵二位と言っているけど実力はもっと上かも知れないわね」

アルトロスは強い。

その上、場所や相性も良くない。

私は崩落の恐れがあるから大魔法が使えず、《 叙事詩級(エピック) 》の細剣、『 翼を持つ者(フリューゲル) 』も再生中で使えない。

ヒルデの神器は見たところ、対応力が高く、攻防自在に戦える様だけど、魔力主体の戦い方をするアルトロスとの相性は悪い。

ティーダの神器の能力は分からないけど、彼女程の実力者の神器がただ鋭いだけの大鎌などあり得ない。

なら、ティーダの神器もこの状況では真価を発揮できないのだろう。

「仕方ないッスね。奥の手を使うしかないッスか……」

ティーダはアルトロスを睨みながら顔を歪め、嫌そうな声音で吐き捨てる様に言った。

「エリーさん、ヒルデさん、10秒で良いので持ち堪えて欲しいッス」

「分かったわ」

「何か手があるのね」

「正直、使いたくは無いんッスけどね」

ティーダが純白の大鎌を担ぐ様に構え、魔力を練り上げて行く。

私とヒルデは、ティーダの前に壁になる様に立った。

「ほぅ?神器を超える力が有ると言うのか?」

「それは見てのお楽しみッスよ」

「そうか、だが残念だが時間切れだ」

そう言うと、アルトロスは剣を地面に突き立てた。

「【地】」

すると、地下空間に轟音が鳴りひびいた。

「な⁉︎」

「崩れるわ!!」

「アリス!ルノア!」

私は水を作り出すとアリス達の方へと伸ばした。

崩れ始めた天井に驚き、固まっていたアリスとルノアを絡め取り、ついでに近くに居た少年も水の中に放り込むと、私は自分の体を水で包み込み、完全に崩落する前に水を操り地上へ向かって無理やり突き進んだ。

土砂を受け流し、岩を砕きながら地上に飛び出すと、月明かりと共に、遺跡を包囲する武装した集団の拵えた篝火や光魔法に照らされた。

アレは……聖騎士団。

ティーダが連絡したと言っていたやつか。

地面に降り立った私は急いでアリス達を水から出した。

「う、げほ、げほ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「がはっ!」

どうやら無事らしい。

私の近くの地面が切り裂かれ、ティーダが飛び出し、瓦礫が弾かれ白煙に包まれたヒルデが現れた。

2人とも腕に子供を抱えている。

「みんな無事⁉︎」

「何とかね」

「死ぬかと思ったッス……」

「子供は……」

「ドロシーが居ない⁉︎」

子供は無事かと尋ねようとすると、少年が叫ぶ様に言った。

見れば首輪をつけられて居た少女が居ない。

流石にあの崩落に巻き込まれては生存は絶望的だ。

「くっ!」

私は頭を切り替えてアルトロスの姿を探した。

すると、遺跡の屋根だったのであろう、少し高くなっている場所にアルトロスは立って居た。

「この外道がぁあ!!!」

怒りを滲ませたティーダが飛び出す。

「ふむ、冷静さを欠くのは愚かだぞ、お嬢さん」

「な……に⁉︎」

アルトロスが抱えていた何かをティーダへと投げた。

ゆっくりと投げられたソレを両断しようと大鎌を引き絞ったティーダだったが、投げられたのが、首輪をつけられた少女だと気付き、咄嗟に神器を解除して受け止める。

「今宵は此処までだな。

いずれまた、今度は互いに万全の状態で死合うとしよう」

「ま、待つッス!」

アルトロスはティーダに応える事なく剣を振り、土埃を舞い上げた。

私達が視界を取り戻した時には、あの貴族然とした悪魔の姿は消え去っていたのだった。