軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪魔の日①

ティーダの神器らしき真っ白な大鎌を剣で受け止めた悪魔、アルトロスは無造作に剣を振り抜いた。

弾かれたティーダは空中で体勢を立て直し片手を突いて着地する。

「ティーダ、いきなり何をするの⁉︎」

悪魔はその全てが邪悪な存在では無い。

人間と友好的な関係を築こうとしている者、人間界、そして天界を支配しようとしている者、無関心な者と様々だ。

召喚に割り込んで無理やり人間界へやって来たこの悪魔の目的は不明。

召喚への割り込み方から、あまり友好的には見えなかったが、いきなり事を構えるには相手が悪い。

奴は『伯爵二位』と名乗った。

悪魔の爵位とは、人間の国々のそれとは違い、血族の間で受け継がれて行く物ではない。

悪魔の爵位は強さで決まるのだ。

自分より上位の悪魔を倒す、上位の悪魔からの承認を複数受ける事で、悪魔は爵位を得る。

悪魔王を頂点として、公爵、侯爵一位、二位、伯爵一位、二位、三位、子爵一位、二位、三位、四位、男爵、騎士と続く。

そして現在、伯爵二位の悪魔は4人居るらしい。

その誰もが一騎当千の強者だと言う。

ならば此処は迂闊に攻撃せず、目的を聞き出すべきではないか?

「エリーさん!コイツは《冥界の夜明け》ッス!」

「冥界の夜明け?」

「人間界と天界を支配しようとしている悪魔の組織ッス!

奴のマントの紋章は冥界の夜明けの物、つまり敵ッス!」

ティーダの言葉に私とヒルデも直ぐに戦闘体制を取った。

私が持っている悪魔の情報は、【 怠惰の(グリモア・) 魔導書(ベルフェゴール) 】で契約している男爵位の悪魔から聞いた物だ。

彼はいわゆる中立派、人間界や天界との争いに興味を持っていない悪魔だ。

故に細かい組織だのの情報は聞いていなかった。

だが、ティーダはイブリス教の枢機卿。

イブリス教は歴史の影で何度も人間界を狙う悪魔と戦っていると聞いている。

つまり…………コイツは敵か。

「神器【暴食の魔導書】」

私が神器を出した事で、この場にいる神器使いは3人となった。

アルトロスは私が手にする【暴食の魔導書】を見て、そこからヒルデの【 泡沫の蝶(ペタルダ) 】、ティーダの【 神の恵みを刈り取る刃(ハーベスト) 】へと視線を移した。

「なるほど、人間が修練の果てに会得する神器と言う物か…………どうだお前達、私は今此処で暴れるつもりは無い。

此処はお互いに刃を収めないか?」

「…………」

「……どう言う事?人間界を狙っているんじゃないの?」

「エリーさん、それとそちらのお色気魔族さん!」

「ヒルデよ」

「ヒルデさん、奴は今万全じゃないッス!

伯爵二位の悪魔が人間1人の命と10数体の死体程度で召喚出来る筈が有りません。

奴は召喚に自分の魔力を使った筈ッス!」

「なら、回復前に倒すべきね」

「そうね、誘拐犯を追ってきたら御伽噺の悪魔と戦う事になるとはね」

アルトロスは溜息を吐き出し私達を一瞥する。

「ルノア、アリスを連れて子供達の所に」

「は、はい!」

ルノアは私の背後に隠れていたアリスを連れてこの場から離れる。

アルトロスの動きを警戒しながら2人が離れるのを待っていたが、アルトロスはルノア達に手を出す事なくその場で堂々と立っていた。

「ふむ、戦いを選ぶか。

良いだろう、お前達を戦士として認めよう。

私は伯爵二位、アルトロス・イザリース。

人間の戦士達よ、その力を見せてみよ!」

アルトロスが地面を踏み砕きながら間合いを詰める。

【縮地】並のスピードだが、魔力の流れは感じない。

純粋な身体能力による踏み込みだ。

「くっ⁉︎」

ヒルデが咄嗟に白煙を集めて盾を作る。

モワモワとした盾は、振り抜かれたアルトロスの蹴り脚を受け止めて見せた。

更に白煙はアルトロスの足を包み込む様に取り込んでゆく。

「ほぅ」

アルトロスは煙を断ち切る様に剣を振るう。

しかし、剣は白煙を素通りしてまるで効果が見えなかった。

「ふふ、煙による拘束よ。いくら剣を振るっても切る事は出来ないわ」

「なるほど、その煙管の能力で魔力を半物質化しているのか。面白い」

アルトロスが再び剣を振るうと、今度は白煙が斬り散らされてしまった。

「魔力なら、魔力をぶつければ散らせるだろう?」

「……むぅ」

たった一合でヒルデの神器の攻略法を見抜いたアルトロスは周囲から迫る白煙を全て斬り払った。

その動作の中、僅かな隙に魔法を叩き込む。

「【雷撃】【岩槍】【熱波】」

だが、アルトロスは雷撃が剣に当たる瞬間手を離し、岩の槍を受け止めて振り、熱波を消しとばした。

やはり中級魔法では防がれるわね。

でも此処は地下。

上級魔法を連発すれば生き埋めだ。

その為、中級の中でも周りに被害が出にくい3つを使ったのだ。

防がれてしまったが、まぁ良い。

奴は剣を手放し、注意は此方に向いている。

「神威を受けるッス!!」

背後から走り寄ったティーダが大鎌を振り下ろす。

「ふむ、まずまずと言った所か」

アルトロスは完全な不意打ちの筈のティーダの攻撃に反応して見せた。

素早く振るわれた手刀がティーダの胴体を上下に分かつ。

だが、ティーダの上半身と下半身はその輪郭を失うと、白煙となって揺れた。

「……っ⁉︎」

アルトロスが僅かに目を見開いた気がした。

白煙で作られたティーダの真逆の方向、魔法による土煙の中から、純白の大鎌を引き絞る様に構えたティーダが飛び出した。