軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

菊池母娘の一幕 第三者Side

――佐藤と別れて多古市へと帰る車中の菊池家の母娘。

「それで、お母さん」

「何?」

「ダンジョンに入ってみてスキルは獲得できたの?」

「出来たわ。やっぱり国から手紙が届いてあった通りに、スキルを得る事は出来たわ」

「そうなんだ……。それで、ダンジョンに潜ったんだよね? ダンジョン内は、どうだったの?」

「そうね……」

丁度、赤信号になったところでブレーキを踏んで車を停止させた菊池楓は、娘からの言葉を反芻するように思考したあと、

「広大な田畑が広がっていたわ」

「それって多古市で私たちが預かっている田んぼよりも?」

「比べ物にならないくらいよ。地平線の彼方までと言えばいいかしら? 3か月以上、毎日10トンを超える新米を佐藤さんはほぼ無償で提供してくれたけど、納得できるレベルだったわ」

「そうなんだ……」

「それとスキル【アイテムボックスⅠ】を手に入れて分かったことがあるの」

「分かったことって何?」

「佐藤さんが使っているアイテムボックスと私が覚えたスキル【アイテムボックスⅠ】は、別物だってこと。佐藤さんは、魔鉱石を対象に触れなくても回収できていたけど、私の場合は直接、魔鉱石を手に取ってからじゃないとアイテムボックスに入れられないの」

「それって……、まったく別物のスキルってこと?」

「分からないわ。でも、佐藤さんと一緒にダンジョンに潜って思ったけど、魔法も扱うことが出来たの」

「魔法も!?」

「しかも、冒険者が戦闘シーンを動画で上げている内容よりも、魔法を使っている映えを意識した魔法よりも遥かにすごかったわ。そう、ダンジョン最前線で戦っている魔法を扱っている冒険者なんて足元にも及ばないほどに」

「そんなに凄いの?」

「すごいなんてものじゃないわ。ほら、後部座席に置いてある包みあるでしょ?」

「あ、うん。何かな? って、気になっていたけど……」

助手席に座っていた菊池涼音は、後部座席に置かれていた母親である楓のバックの中から包みを取り出すと、分厚い包みというか封筒に首を傾げる。

「これって何が入っているの?」

「お金」

「お金?」

端的に答えてきた母親の言葉に首を傾げたまま、封筒を開けて中から紙幣の束を取り出すと、菊池涼音は動きを止めてから、青信号になって車が走り始めて数秒経ってから、

「お、おおお、お母さん! この紙幣の束は何なの!?」

「ダンジョン内でゾンビを佐藤さんが狩ったあと、手に入れた魔鉱石を全部、日本ダンジョン冒険者協会に売ったのよね。その金額の半分を佐藤さんに渡されたの。二人でダンジョン内を探索したのだから分け前だって」

「……これって、すごいよね?」

「すごいわね。米農家をしてきて、ずっと安い価格で買いたたかれてきたから、その借金が雪だるま式にあったけど、今日の稼ぎだけで1割はJAへ返済できるわね」

「お母さん!」

「言いたいことは分かるわ。佐藤さんを誘ってダンジョン内を探索して資金を稼ごうと思っているわ。ほとんど佐藤さんにおんぶにだっこ状態になってしまうけど……」

「佐藤さん、それで怒らないかな?」

「……ねえ、涼音」

「何?」

「涼音って、佐藤さんのことを狙っているわよね?」

「え? う、うん。だって変な目で私のことを見てこないし……。紳士的だし……」

「そう……。涼音って、お父さんとか、妹とか弟が欲しいとか無いわよね?」

「お母さん……。もしかして――」

「何でもないのよ? ほら、少し気になっただけだから。佐藤さんって気前も良いし、気遣いもできるし、稼ぎも悪くないし……それに佐藤さんくらい強ければ若返りのポーションを手に入れることも出来るかもしれないし……」

「それって女言葉だと甲斐性のある男に嫁ぎたいって事と同じことって分かっているよね?」

「だって、娘は中々に奥手だから」

「だからって! 娘が狙っている男に好きになるのは違うと思うの!」

「そ、そうね……。気を付けるわ」

「ほんと、気を付けてよね!(やばい、お母さん……絶対、本気だ。雌の顔してるし……、やっと木戸商事の令嬢が居なくなったのに、今度はお母さんが敵になるとか……こうなったら佐藤さんの自宅に突撃するしかないかも……)」