軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン内で実験(1)

ダンジョンの案内をした翌日、俺は実家に足を運んでいた。

理由は、野菜や果物が欲しいと母親から電話があったからであった。

「いい加減、スーパーで買えばいいんじゃないか? 価格も安定しているだろ?」

「貴方に頼めば無料じゃない!」

「いや、俺が実家に足を運ぶ時間を計算したら普通に無料じゃないからな。車で来たからガソリン代も掛かってるし」

母親に抗議的な会話をしていると2階から降りてきた弟が、俺を見てきた。

「浩二か」

「よう! 兄貴」

「よう! じゃねーよ。――って、言うかお前、今日は平日の昼間だぞ。会社に行かなくていいのか?」

「俺、冒険者として生きていくかどうか迷っているんだよ」

「いやいや、説明になってないからな」

「有給を取った」

「ほう……」

「兄貴が、今日、家に来るって言ってたから」

「それって俺と一緒にダンジョンに潜りたいとか、そんな話しか?」

「そうそう!」

「冒険者ねー」

「なんだよ、何か問題でもあるのかよ」

「いや、地下10階層までで収穫作業してダンジョンから出たところの日本ダンジョン冒険者協会に農作物やフルーツ、穀物を売る分にはいいんじゃないか? 一往復で2万~5万は稼げるらしいし」

「やっぱ稼げるのか?」

「稼げると思うが、今後はどうなるか分からないぞ?」

ダンジョン系の農作物、穀物、フルーツは常時大量に市場に出回っていることから、一部では、100円ショップに野菜エリアとフルーツエリアが出来るくらい売り場を侵略しつつある。

そこには、農家さんが作ったフルーツなどは一切置かれていない。

つまり、それだけダンジョン産の農作物系が日本国内に出回っていて、供給過多になりつつあるということだ。

下手をすれば買い取りを拒否される可能性も出てくる。

そう考えると、スーパーと直接雇用契約をする冒険者が出てきたのも頷ける。

そのことを弟に伝えると、弟が深く溜息をつく。

「なあ、兄貴。ダンジョンに潜らないか?」

「お前、地下11階層からはモンスターが出てくるって知らないのか? 下手をしたら死ぬことになるんだぞ?」

「分かっているさ! だからこそ、俺は研究したんだよ! アイテムボックスを上手く使う方法を!」

「ほう」

弟の浩二が自信満々に語っているが話、3厘くらいで聞いておこう。

調子に乗っている時ほど弟は失敗するからな。

「その目は、俺の言葉を信じていないな? だったら、俺の力を見せてやるよ! ダンジョンの中で!」

「そこはダンジョンの中でなんだな」

「悪いか?」

「いや、懸命な判断だとは思うぞ」

「それじゃ、ダンジョンに一緒に行ってくれるか?」

「……はぁ、仕方ないな。無理はするなよ?」

「任せろって!」

「相も変わらず軽いなー、反応が。――で、何日にいく?」

「いまからとか?」

「まぁ予定は入っていないからいいか」

「兄貴、無職にクラスチェンジしたからな!」

「うるさい。鼻からタバスコ飲ませるぞ? マジで」

「じゃあ、母さん、少し兄貴の運転でダンジョン行ってくる!」

「帰りに冷凍ちゃんぽん買ってきて」

「分かった! 兄貴の金で買ってくる!」

「俺は、金は出さないからな。家が別々なんだから」

「ケチだな。兄貴は」

「至極当たり前のことだ。実家から、俺を追い出したんだから。そもそも、普通だったら実家に野菜とか届けないぞ? 普通は」

我ながら甘いとは思うが、20代から、ほぼ強制的に一人暮らしを強要された俺としては、心の中にはやっぱり引っ掛かりはあるわけで、そのことを両親も弟も理解はしていない。

だからこそ、逐一、ストレスがたまった時には、目の前で文句を言う事にしてる。

そのくらいの権利はあるだろう。

「そういえば、小次郎はずっと寝たままなんだな」

「もうすぐ16歳だからな」

弟が、犬種の平均寿命に小次郎は近づいていると口にした。

「あ、兄貴」

「何だ?」

「ダンジョンに行く前に、ガスコンロでアイテムボックス内に火を取り込んでおいた方がいいと思うぜ」

「……たしかに」

ダンジョン内で、疑似火系統の技を使ったらどうなるのか気になるからな。

それから養老渓谷のダンジョンに到着したのは3時間後。

日差しは完全に昇っていて、少しずつ日差しが傾きつつある頃だった。

「さて、いくか」

弟の浩二と一緒にダンジョン内に足を踏み入れた。