軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン産肥料に対して

――翌朝、SNSを確認する。

「さて、どれどれ」

一件か二件くらいは好感触が持てるダイレクトメールが来ていればいいんだが……。

「ダイレクトメール122件!?」

「兄貴、どうした?」

朝食を食べにきていた浩二が、俺がノートパソコンを見て驚いて声を上げたことに気がつき話しかけてきた。

「いや、昨日な」

浩二に、肥料の販売をすることを伝える。

「へー。アイテムボックスの拡張追加スキルに、そんなのがあるのか……。それってゾンビも肥料に出来るのか?」

「わからん。ゾンビだと魔鉱石のみ回収する形になるからな」

「そっか。――で! 取引ダイレクトメールがたくさん来てるのか?」

「そんな感じだな」

おそらく、間違いない。

一応、ダイレクトメールを開いて詳細を確認する。

――肥料の効果はどのくらいですか?

――成分分析表は?

――農作物によって肥料の割合は代わってきますが、対応は可能ですか?

――肥料販売業務開始届け出などは出していますか?

――知事の許可は得ていますか?

などなど。

届いているダイレクトメールに書かれているのは、肥料の購入の話ではなく成文分析や知事への届け出をしているかどうかの内容だけであった。

「どうだった? 兄貴」

「どうやら俺が思っていたよりも農業が奥が深いようだ」

「そうなのか?」

「ああ。肥料は色々と種類があるみたいだ」

「へー。なら、鑑定で調べてみたらどうだ?」

「そうだな」

アイテムボックスから、討伐して回収した狼の体を一体分、肥料に変える。

そして数十グラムだけ手のひらの上に肥料を出現させる。

「鑑定」

ダンジョン産肥料。

魔力により生成された肥料。

農作物が翌日には収獲できる。

「……成分は出てこないな」

「そうなのか? 兄貴って、鑑定スキル高いよな?」

「鑑定レベルは12だな」

「つまり兄貴の鑑定レベルで成分分析が出てこないってことは……」

「鑑定スキルだと見る事ができないというか、設定されていない可能性が高いな。あと農作物が翌日には収獲できるようだ」

「翌日って……。普通に考えたら異常じゃね? そんな肥料使いたい人とかいるのか?」

「たしかに!」

まるでダンジョン内レベルで作物が収獲できるとか普通に考えてヤバいよな。

これは俺一人だけで対応していい部類ではないだろう。

「はぁー、仕方ないな……。あまり気は進まないが日本ダンジョン冒険者協会とJAに力を貸してもらうしかないか」

「兄貴、JAって大丈夫か?」

「仕方ないだろ。多少の利権は取られると思うが、死蔵しておくのもな……」

浩二と会話をしている間にも、テーブルの上に並べられていく純和食。

ミツハは、料理が得意という一面があった。

そして料理の手伝いをしようとしたところで「台所は女の城!」と、怒られてしまい今では三食はミツハが作っている。

「それにしても姉貴は、料理が得意だよな」

「水の女神は、台所にも精通しているらしい」

「まー、台所と水事情って切って切り離せないもんな」

ミツハが用意してくれた朝食を三人で食べたあと、日本ダンジョン冒険者協会の窓口に向かう。

もちろんスキル【ワープ】で、養老渓谷ダンジョンの過疎階層である地下11階層に移動し、地下10階層に階段で上がりエレベーターを使い1階層まで上がってからという毎度の手順を踏んでからだが。

「やっぱり、朝だから混んでいるな……」

区役所のような窓口に並ぶ。

俺の前には、30人近くの冒険者が並んでいる。

それが10カ所の窓口に並んでいるのだから単純計算で300人近くが窓口にいる計算になる。

「流石は、朝……」

早朝は、地下1階層から地下10階層エリアの穀物、フルーツ、野菜の卸しが多いらしい。

「次の方」

30分ほどで俺の番になる。

そして、俺を見た途端、窓口担当の女性の顔色が分かりやすいくらい青くなる。

「――し、しに……さ、佐藤様。何か、冒険者協会の人間が問題でも起こしましたでしょうか?」

「いや、そんなことは……」

佐藤と、俺の名前を日本ダンジョン冒険者協会の窓口女性が口にした途端、職員たちが一斉に此方を見た。

そして、波が引くように静まりかえる窓口。

どうやら、俺が思っていたよりも遥かに問題児扱いされているようだ。

「そ、それでは……何か?」

「それがな、ダンジョン内で肥料をドロップしたんだが、成分分析を調べてもらいたい」

「そ、そうですか……。それで、その結果、問題がない場合は、購入して欲しいという事でしょうか?」

「それも考えている。成分分析をお願いできるか?」

「分かりました。それでは、その肥料を提出して頂けますか?」

「分かった」

トレイを差し出してきたので、アイテムボックス内から肥料を1キロほど取り出してトレイに載せる。

「それでは、急ぎで成分分析を行います。ただ、本日、成分分析が終わるとはお答えできませんので……」

「それは分かっている」

「あとJAの方にも何割か渡してもよろしいでしょうか?」

「ああ」

ダンジョン産肥料を窓口の女性に渡したあと、俺はダンジョン経由で自宅へ戻った。