軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

庭園内カフェ

庭園内には一休憩できるようにと、カフェが三ヶ所ある。

そのうちの一ヶ所でクラウディアたちは休憩していた。

クラウディアとヴィヴィアンが並んで座り、クラウディアの向かいがアーネスト、ヴィヴィアンの向かいがコナー伯爵令息だ。

席はテラス席が確保できたので、花の咲き乱れる庭園が見渡せる。

一番よく見える席をみんながクラウディアに譲ってくれた。

本当に有り難い。

ただ気をつけないと花のほうに意識が持っていかれてしまう。

「トラヴィス殿、ヴィヴィアンが何か失礼なことをしなかったかい?」

「まあ、お兄様、ひどいですわ」

「大丈夫ですよ、アーネスト様。ヴィヴィアン様に失礼なことをされたことはありませんから」

「そうかい? ならいいんだけど」

「お兄様、失礼ですわ」

「ヴィヴィアンがいつもトラヴィス殿につっかかっていくのが悪いんだよ?」

「それは……」

そのことを指摘されればヴィヴィアンのほうが分が悪い。

「アーネスト様、俺は気にしていませんので」

トラヴィスが間に入れば、反射的のようにヴィヴィアンがトラヴィスをにらむ。

「ヴィヴィアン」

「……申し訳ありません」

「アーネスト様、俺は大丈夫ですのでヴィヴィアン様を叱らないでやってください」

「そうやって甘やかすからヴィヴィアンがトラヴィス殿に甘えるんだよ」

「ヴィヴィアン様に甘えてもらえるなら光栄です。」

「わたくしは甘えてなどおりません」

クラウディアはそんな会話に耳を傾けつつも、視線はつい目の前に広がる庭園のほうに引き寄せられてしまう。

庭園に咲く花々も、それを眺めている人々も平等にクラウディアを惹きつける。

「クラウディア、楽しい?」

ヴィヴィアンに訊かれてはっとする。

いつの間にか庭園を見るのに夢中になっていた。

「ごめんなさい」

「いやこちらこそ、放っておいて悪かったね」

「いえ」

ヴィヴィアンはこんなふうに何かに夢中になってしまうクラウディアのことをわかってくれているし、アーネストは兄やヴィヴィアンから話を聞いて知っているだろうし優しい。

しかし今日が初対面のコナー伯爵令息はそうはいかない。

クラウディアだけなら別にどう思われてもいいが、モーガン兄妹の顔に泥を塗るわけにはいかない。

クラウディアはコナー伯爵令息に視線を向けた。

コナー伯爵令息は至って普通だった。

少なくとも嫌そうな顔はしていない。

そういうものだという感じで受け止めているような感じだ。

……もしかしたらヴィヴィアンから話を聞いているのかもしれない。

「庭園は美しいですからね。ラグリー嬢が見惚れても不思議ではありません」

そんなフォローまで入れてくれる。

さすがに申し訳なかった。

「ごめんなさい。つい見惚れてしまって。無作法でした」

「いや。見惚れるほどなら来た甲斐があったよ」

「クラウディアが見とれるのもわかる景色よね。ここからの眺めはとても素晴らしいもの」

「ここは景色だけではなく、スイーツも美味しいと評判らしい」

さりげなくクラウディアに気を遣わせないようにしてくれる。

だからクラウディアは 微笑(わら) って言う。

「楽しみです」

ちょうどその時、お盆を持った店員が現れた。

「お待たせ致しました」

今まさに話していたスイーツと紅茶が運ばれてきた。

クラウディアは山盛りのマカロンのプレートだ。

多種多量のマカロン、と書かれていたが、山盛りで来るとは思っていなかった。

ヴィヴィアンのほうは山盛りの一口サイズのミニドーナツだ。

こちらも多種多量のミニドーナツと書かれていたが、まさかの量だ。

ヴィヴィアンも困惑している。

アーネストとコナー伯爵令息はスイーツは頼まずお茶だけだ。

ヴィヴィアンと二人で視線を交わして頷いた。

「クラウディア、分け合いっこしましょう」

「ええ」

「お兄様も是非。トラヴィスも、よかったら、その、食べてくれたら有り難いわ」

「アーネスト様、私のほうも。コナー様もよろしければ是非」

「ありがとう。いただこうかな」

「俺も。甘いのは苦手じゃないし。あと、食べきれなかったら持ち帰ることもできるみたいだぞ」

テーブルに置かれたカードを手に取ってコナー伯爵令息は言った。そんなカードがあったことにも気づかなかった。

きっとクラウディアたちのように知らずに注文してその量に困る者がいるのだろう。

「まあ、それなら安心ですね」

「そうね。食べられるだけ食べて余った分は持ち帰りましょう」

「ええ」

早速クラウディアはマカロンを 摘(つ) まむ。

思わず頬が緩む。

「ヴィヴィアンもアーネスト様もコナー様もどうぞ。凄く美味しいです」

「ありがとういただくよ」

アーネストがマカロンを摘まむ。

軽く目を見開いたアーネストの顔に微笑みが浮かぶ。

「あ、本当だ。美味しいね」

「クラウディア、お兄様、ミニドーナツも美味しいですわ。こちらもどうぞ」

「想像以上の美味しさです」

クラウディアとアーネストにヴィヴィアンとコナー伯爵令息の声がかかる。

これは前評判に偽りなし、だろう。

「ありがとう」

クラウディアはミニドーナツを摘まみ、その美味しさに頬を緩めた。

マカロンもミニドーナツも美味しかった。

ただやはり余ってしまった。

コナー伯爵令息はいらないと言ったのでヴィヴィアンと分けて持ち帰ることにした。