軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

推察とブレスレット

日傘の陰からクラウディアはちらりと少し離れてついてくるヴィヴィアンとコナー伯爵令息を見る。

「なかなかいい雰囲気ですわね」

アーネストが我が意を得たりとばかりに頷く。

「そうだろう。ただ、二人ともなかなか素直になれないみたいでね」

なるほど。コナー伯爵令息をヴィヴィアンに会わせたかったからか。

それで素直じゃないヴィヴィアンに馬車の中では隠したのか。

ああいう状態の二人を示すぴったりの言葉があったはずだ。

「まあ、ではああいうのを両片想いというのでしょうか」

「両片想い?」

アーネストには馴染みのない言葉なのだろう。首を傾げている。

「最近流行りの恋愛小説で、本当はお互いに想い合っているのにお互いの気持ちに気づかずにくっつかないもだもだした関係のことを言うらしいですわ」

クラウディアも本で読んで知ったくらいで実物は初めて見た。

まさかこんな身近にいるとは思わなかった。

「なるほど。確かにあの二人のようだね」

アーネストは納得したように頷いた。

「アーネスト様はあの二人のことは反対はなさらないのですね」

「ああ。トラヴィス殿はなかなかいい男だと思う。ヴィヴィアンを安心して任せられる」

嫡男であるアーネストが認めているなら、あとは二人次第でどうにでもなるのではないだろうか。

もちろん父親であるモーガン侯爵が反対しなければ、だが。

アーネストの信用度次第だろうが、アーネストが認めているのであればモーガン侯爵は反対はしないような気がする。

一つ懸念があるとすれば。

「ですが、本当によろしいのですか? あの方は次男でしょう?」

よほどの功績を持ったりとかでなければ、高位貴族の令嬢が嫡男以外に嫁ぐなど聞かない。

いくらお互いに憎からず想っていたとしても、現状はなかなか難しいものがあるのではないだろうか?

しかしアーネストは何てことはない口調で言う。

「ああ、それはね、何とかなりそうなんだ。まだ確定したことではないからこの場では言えないけど」

「そうなのですね」

何らかの情報をアーネストは掴んでいるのだろう。

それ以上はクラウディアが踏み込んでいいことではない。

クラウディアはこぼれ落ちた髪を耳にかけた。

その動きを何気なく見ていたアーネストがクラウディアの腕に目を留めた。

「クラウディア嬢、そのブレスレットは?」

クラウディアは腕を上げてブレスレットを見せる。

「これですか? この耳飾りに合わせてお兄様が買ってくれたものです」

今日は前にアーネストに贈られた耳飾りと、それに合わせて兄が買ってくれたブレスレットをつけてきていた。

「ロバートが?」

「はい。何故かこの耳飾りに合わせて買ってくれました」

アーネストは微苦笑している。

何故、とクラウディアは首を傾げた。

「ロバートはクラウディア嬢が可愛くて仕方がないということだよ」

兄のクラウディアの評価は手のかかる妹でしかないと思うのだが。

「わからないって顔をしているね」

「お兄様にとって私は手のかかる妹ですから」

見捨てないで手を差し伸べてくれるだけ、有り難いのだ。

だが返ってきたのは苦笑だった。

何故?

クラウディアは首を傾げるもアーネストは説明してくれる気はないようだった。

「せっかく来たんだから花を楽しもう」

「はい!」

すぐに花のほうに意識が向く。

それにアーネストは柔らかく 微笑(わら) う。

「クラウディア嬢は花の名前をよく知っていそうだね」

「ええ、たくさん本も読みましたし、教えてもらいましたから。アーネスト様はどうですか?」

「私は実はあまり知らないんだ」

「前の婚約者の方に贈ったりはなさらなかったのですか?」

言ってから不躾だったことに気づく。

だがアーネストは全く気にしていないようだ。

「はは、悪いとは思ったが、正直に言うと適当に選んで贈っておいてもらった」

「そう、なのですね」

何と返せばいいかわからない。

というか、本当にアーネストは元婚約者に興味がなかったらしい。

「だから、クラウディア嬢がいろいろ教えてくれると嬉しい」

それならクラウディアも役に立てるだろう。

「お任せください」

「うん、頼むよ」

近くに咲いている花、遠目に見える花、視界に入る花を説明していく。

時折挟まれるアーネストの問いにもクラウディアは丁寧に答える。

アーネストは楽しそうに聞いてくれてクラウディアも楽しかった。

うっかり、ヴィヴィアンたちのことを忘れてしまうくらいには。