軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ⑭

「ふむ。路面の整備はどうする?」

「・・・伐採作業はルナリアやピーシーズも出来るし、帰り道に路面を均して固めながら歩くぐらいなら私一人でも十分だよ」

お母様からの確認にプランを示せば、思わぬところからストップが掛かった。

「待て。それでは君の負担が大きいのではないか? フレイア。お前の教育方針に口出しするつもりはないが、有望な魔法術師を使い潰すような真似は看過できんぞ」

「バルトロイはこう言っているが、どうする?」

完全に目が笑っているお母様が私に判断を丸投げしてくる。

バルトロイさんが善意で言ってくれていることは分かるけど、私の野望を邪魔することになるんだから今は黙ってて欲しい。

ていうか、お母様も助けてくれれば良いじゃん!

魔石の使用方法もバルトロイさんには教えることになるだろうけど、それはアンリカさんの仕事で、バルトロイさんをコントロールするためのカードだ。

どういう駆け引きを経てバルトロイさんに教えるつもりなのかが分からないから、私の口から教えることは避けたい。

というより、面倒くさそうだからアンリカさんに丸投げしたい。

そういうわけで、この場は誤魔化すことにする。

「・・・え、え~っと・・・。わ、私は体内保有魔力量が多いですから!」

「そうまでして街道を付ける必要が有るのだろうか?」

私の言い訳に首を傾げるバルトロイさんが至極真っ当な疑問を口にする。

ダメだ。バルトロイさんを納得させる理由がパッと思い付かない。

重要なのは防衛拠点を機能させることで、街道を付けるのは蛇足でしかないからね。

私の目的を明らかにして良いものかどうかも判断が付かないし、と、私が言葉に詰まったところでお母様がアッサリとタネ明かしをした。

「フィオレは領有宣言を視野に入れているんだ」

「またやるのか?」

正気を疑うような目で見ないでくれるかな?

嫌そうに眉根を寄せたドネルクさんに反論しておく。

「・・・迷宮ですよ!? 無限に魔石が採れるかも知れないんですよ!? そんな美味しいものをカリーク公王国には絶対に渡しません!!」

「お、おう」

私の勢いに、私の2倍ほども身長が有るドネルクさんが仰け反った。

川を渡った目の前にある無主地を王国が手にすれば、当然、カリーク公王国は歯ぎしりして悔しがるだろうし、なんとか領土を奪い取れないものかと懲りずに攻めて来るだろう。

防衛するにも戦線が伸びるし、ウォーレス領は負担もリスクも増える。

それでも、そのデメリットを補って余り有る恩恵をダンジョンはもたらしてくれるはずだ。

具体的には、食料の生産量に大きく関わる。

カリーク公王国以外の他国なら、持っているのと持っていないのとでは1か0かの差だけど、直接的な敵対関係に有るカリーク公王国の場合は、持っているのと持っていないのとではプラス1とマイナス1で2倍の差になるんだよ。

そんなものは絶対に受け入れられない!

自分の力で切り拓く努力もせずに、人のものを奪うことにばかり必死になるような連中に渡していいものなんて何一つ無いんだよ!

私のご飯を奪いに来るような奴らを閉め出す手段に妥協なんて、してなるものか!

「ううむ。ガルダの襲撃のときもそうだったが、君は大人しそうに見えて、なかなか激しい性質なのだな」

「・・・ん? そうですか?」

鼻息を荒くする私を見下ろしてバルトロイさんは唸る。

私なんて普通じゃない?

ていうか、バルトロイさんって女の子に幻想を持つタイプなんだろうか。

脳筋揃いのウォーレス領内でも上位に数え上げられるアンリカさんにも幻想を抱いていたりしない?

差し出がましいかも知れないけど、アンリカさんとバルトロイさんが問題無く夫婦関係を築けるのか心配になってくるなあ。

「領有宣言に必要な要件は客観的な領有だったな。まだ本当に迷宮かどうかも分からんが、それでもやるのか?」

「・・・王国は防衛上の要害を維持するために領有するんです。そこに迷宮が有るかどうかは関係有りませんし、もしも迷宮だった場合にも誰かに教えてあげる必要なんて有りませんよね?」

最初にネガティブな反応を示していたドネルクさんは、やっぱり領有宣言に反対なんだろうか?

でも、どのみち防衛拠点を建てる必要が有るのなら、ウォーレス領のすべきことは変わらないんじゃ?

「それはそうだが、領軍や領民に魔石の採取をさせるのか?」

「・・・というと?」

うん? そのつもりだったけど何か拙いんだろうか?

ドネルクさんに訊かれた意味を捉え損ねて首を傾げる。

「迷宮の探索というものは危険が伴う。冒したくない危険を冒してでも利益を得たい場合に使うのが冒険者だ。そして、冒険者という部外者を使えば迷宮の存在を隠しておくことなど出来んぞ」

ギルドの売り込みってことではないんだろうけど、冒険者かぁ。

冒険者に守秘義務を課したとしても漏れるんだろうなあ。

「・・・冒険者って、今はほとんど居ないのでは? 居ないものからの情報漏洩を心配しても意味がないのではないですか?」

「先日まではそうだったんだが、面白い連中が現れてな。バンダースナッチの群れを狩れる2人組だ。迷宮の探索に当たらせるために冒険者ギルドが推奨できるのは、現状、そいつらぐらいだ」

ドネルクさんからもたらされた情報に少し驚いた。

へー。内戦が終わって王国に戻って来る冒険者が現れ始めたのか。

バンダースナッチの群れを、たった2人で狩れる人たちって、相当な実力者じゃないかな。

どんな方法で狩ってるのか分からないけど、群れとなれば私でも安全に狩れるとは言えないのに。

労働力が戻ってきたのなら、王国内―――、特に、”魔の森に”近い地域で続いていた人手不足もいくらかマシになりそうかな?