軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ⑪

「あのわけの分からん魔法道具を無力化できるのなら、暗殺を怖れる必要が無くなるな」

「伏兵も奇襲効果を失う。折角だから、閣下も覚えて帰ると良い。―――、構わんだろう? フィオレ」

おっと。ここで私に振ってくるんだ?

まあ、異議無しだけど。王様たちと起動実験をしたときにも真っ先に暗殺を危惧していたけど、かなり脅威度が高いと判断してたんだな。

今さらながらに再認識した。

「・・・うん。エゼリアさんを未亡人にしないように、ドネルク叔父様にも生きて帰って貰わないと」

「心に留めておこう」

隣に座るエゼリアさんと顔を見合わせたドネルクさんは、照れくさそうにしながらも、しっかりと頷いた。

敢えて、「叔父様」と呼んだのは、エゼリアさんの身内アピールだよ。

エゼリアさんを泣かせたら許さないからね?

微笑ましげに聞いていたお父様が、思い出したように首を傾げる。

「クローゼリス卿にも教えるのか?」

「・・・広められるとテレサたちの切り札が無くなっちゃうけど、バルトロイさんなら大丈夫じゃないかな?」

最もバルトロイさんについて詳しいであろうお母様へと目を向ければ、どうということは無いとばかりにお母様が頷く。

「バルトロイは人に教えるのが下手クソだからな。その辺りの心配は要らんぞ」

「・・・魔法術師団長だったのに?」

お母様・・・。目の前にアンリカさんが居るのに、この言い草。

それ、良いの? と心配になってしまう。

「アイツは自分が興味を持ったものにしか意識が向かんのだ。アンリカ。バルトロイにはお前が教えてやると良い」

「そうですね。私に意識を向けさせるのに使わせていただきます」

アンリカさんの方も動じる様子がまるで無くて、「任せろ」とばかりにニコリと笑みを浮かべて見せる。

強かというか何というか、これがウォーレスの女なんだね。

「そういうわけだから、フィオレがバルトロイに教える必要は無い。そうでもしないと、アイツはレティアに居座って離れなくなる」

「・・・はーい」

アンリカさんが監督するならバルトロイさんルートで情報が広まることは無いだろうね。

一安心かな、なんて考えていたら、驚いたことにアスクレーくんの方から私にアプローチして来た。

「フィオレ。僕にも教えてくれるかな」

「・・・構わないですよ。しっかりと覚えてお兄様もご自分の身を守って下さい」

遠慮がちに主張するアスクレーくんに快諾を返す。

凄いな。オタクの貪欲さは。

絵に描いたようなインドア派だと思ってたのに、具体的な目的を持てば、ここまで積極的になるのか。

大人たちも揃ってアスクレーくんの変化に目を細めている。

そう言えば、アスクレーくんってドネルクさんとも面識が有ったみたいなんだよね。

それでよくよく考えてみれば、ミリア叔母様は家族揃って王都邸で暮らしていたわけだし、王様とも直接の接点があるミリア叔母様が、王様の側近を務めていたドネルクさんと接点がないわけ無いんだよね。

アレイオス叔父様も元々は王都騎士団に所属していたわけだし、夫婦揃って情報通だし、治安と防衛の責任者だったドネルクさんが接点を持たないわけがない。

世間は狭いというか、ウォーレス家の立ち位置がどれだけ王国の中枢に近いのかを実感してしまった。

「・・・そう言えば、今日はレティアの城壁内に巨大なスライムが侵入して大騒ぎだったんですよ?」

「ふぅん。そうだったの?」

「・・・え、ええ」

色んな魔獣を見に行く力を得るために私の了解を得たアスクレーくんはホクホク顔なんだけど、巨大スライムについては、まるで興味が無いみたいだね。

うーん? バンダースナッチなんかよりも巨大スライムの方が遙かにレアリティが高くて、倒すのも大変だったんだけど、アスクレーくんの中に在る興味の基準が私にはよく分かんないな。

そんな感じに男の子というものの謎が深まったところへメイドさんたちが晩餐の準備が出来たと呼びに来て、穴ぼこの件でそれ以上叱られることもなく1日が終わった。

「おはよう! ドネルク叔父様!」

「・・・おはようございます」

「お、おはようございます」

「うむ。おはよう。話には聞いていたが、本当に朝が早いんだな」

夜が明けて朝食の時間、そこそこ遅くまで大人たちはお酒を酌み交わしながら積もる話に花を咲かせていたらしいのに、ドネルクさんは何事もなかったように私たちよりも先に食堂でエゼリアさんとお茶を飲んでいた。

珍しくノーアの人見知りが発動したようなので、私のお腹に抱き付いているノーアのふわふわの髪をヨシヨシしておく。

ノーアもドネルクさんには王都で会ってるのにな。

1ヶ月やそこいらで顔を忘れたってことは無いと思うんだけど。

エゼリアさんが早起きなのはいつものことだけど、ドネルクさんもこんなに早いとは思わなかった。

だって、お父様どころかお母様もまだ食堂へ来ていないんだよ?

その時点で「そこそこ」ではなく、結構遅くまでお酒を飲んでいたのだろうことが察せられる。

「・・・長旅だったのに、疲れが有るようにも見えないですね」

「そいつは基礎体力の違いだな」

平然とそう言うけど、ドネルクさんはお父様よりもいくつかと年上だったはずだ。

「・・・そういうものですか」

「騎士というものは体力勝負だからな」

やっぱり筋肉なのか。

テレサと一緒にレティアへ来た王都の騎士様たちも筋肉が鎧を着て歩いているような人たちだったし、ドネルクさんは彼らの親玉だった人だものね。