軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ⑥

「あなたたち! 頑張りなさい!」

「はい。ありがとうございます」

ルナリアがしっかりと場を締めて、農家さんたちが揃って頭を下げる。

ディディエさんたちが地元の開拓村で培った知識と経験が農家さんたちを助けて良い結果に繋がれば、新たな農地開拓にも弾みが付くだろう。

私も一歩前進できたように思えてホッとする。

まだまだ第一歩だけど、何事も初めの第一歩から始まるんだから、また1つ、積み上がっていた案件のスタートを切れたことを喜ぼう。

「今度こそ帰るわよ!」

「・・・うん。ごめんね、みんな」

「良いわよ、このぐらい!」

ルナリアと連れ立って鞍によじ登り直して、今度こそ本当に領主館へ帰還した。

今日は色々と有って長い1日だったなあ。

「随分と眠そうですね」

「大丈夫ですか?」

「・・・らいじょーぶ、らいじょーぶ」

晩餐で食堂に入ると、無事に帰還を果たしたエゼリアさんとアンリカさんのドレス姿という激レアな事態が発生していた。

だというのに、席を立って迎え入れてくれた2人と向き合っている私はといえば、へべれけになっていた。

ええい。何たることか。

ノーアも合流しての丸洗いの最中から重くなってきた瞼と格闘していて、2人のドレス姿を満足に堪能することが出来ずにいる。

「 呂律(ろれつ) が回っていませんよ?」

頭がフラフラしている私の顔を両手で挟んだエゼリアさんに、ほっぺをムニムニとマッサージされているけど抵抗する気力もなく玩具にされている。

あー。これ、ちょっと気持ちいいかも。

大人しく飼い主に顔をマッサージされている犬猫の気持ちが理解できる日が来るとは思わなかったな。

ルナリアと私とノーアが到着した食堂内にはエゼリアさんたちだけでなく、お母様とお婆様たち、お父様と仲良く話し込んでいる脱・引き籠もり宣言を果たしたアスクレーくんが居て、お風呂で汗と埃を落としているというお爺様たちを待ってお茶を飲んでいるところだった。

「今日は寝不足だったからな。フィオレ。メシを食ったらさっさと寝ろ」

「・・・ふぁーい」

お母様の命令でエゼリアさんに開放されて欠伸を噛み殺している私の気の抜けた返事に、エゼリアさんたちが揃って首を傾げる。

「寝不足ですか?」

「朝から色々と有ったのよ!」

朝からだったのはルナリアだけで、ノーアも私も夜中からだけどね。

ルナリアも一日中頑張ったから疲れてるはずだけど、ルナリアだけ元気なのも悔しいからプルプルと頭を振って目を覚ます。

それでも頭がシャキッとしないから自分のほっぺを両手でペチンと張る。

んあー。ちょっとだけしゃんとしたかも。

「・・・後でイディアさんたちが情報共有するって言ってたよ」

「そうなんですね?」

「あの子たちのことかしら」

エゼリアさんが目を向けているのは、ミセラさんたちの指示で配膳を手伝っているサーシャさん「たち」だ。

特にアンリカさんは、狩猟本能を刺激された猫みたいな目をサーシャさんたちに向けている。

エゼリアさんの視線もアンリカさんと似たようなものかな。

これは予想通り模擬戦コースだと確信する。

ウォーレス領では宿命みたいなものだから仕方ないよね。

やっぱり吸血種チームはサーシャさんまで含めて5人組っぽい?

年の頃も全員が二十歳前後でサーシャさんの同年代じゃないかな。

5人ともミセラさんたちと同じウォーレス家のメイド服を着ているけど、私よりも明らかに白い髪と肌の色が目を引く。

晩餐時の食堂にはウォーレス家の中枢メンバーが勢揃いするから、ある意味、護衛体制は最高レベルなんだよ。

そんな場に見慣れない人たちが何人も出入りしているのに、エゼリアさんたちの警戒レベルが引き上がっていないように見えるのは、サーシャさんたちの態度の端々にセリーナお婆様に対する別格の敬意が見え隠れしているからだろうね。

「・・・その件“も”、だね」

「「ふぅーん」」

私の返事に「何か裏の事情が有りそうだ」ってことは察してくれたようで、2人ともサーシャさんたちへの興味を深くしたことが分かる。

まあ、敵意が無い以上、サーシャさんたちのことは、なるようになるだろう。

それよりも、だ。

「・・・あと、エゼリアさんもアンリカさんも、向こうへ持って行ける農作物を考えてるから相談しようね」

「あら。そんなものが有るんですか?」

エゼリアさんたちの興味が私に戻って来て、揃って目を丸くする。

食料倉庫に放り込まれていた木箱のことはエゼリアさんたちも知ってたよね?

「・・・王都で買い集めて貰った農作物の中に、おカネになるかも知れない面白そうなのがいくつか有ってね。許可は出てるから、向こうの気候に合うかどうかも含めて何を持っていくか決めよう?」

恐らく「おカネになる」に反応したんだと思うけど、パァッと表情を明るくしたアンリカさんが私に向かって大きく両腕を広げた。