作品タイトル不明
開眼 ㊱
とはいえ、サーシャさんたちの受け入れを否定的に捉えているわけではない様子で、吸血種と聞いた瞬間、3人ともキラーンと目を輝かせていた。
この3人が目を輝かせるのに、エゼリアさんやアンリカさんが目を輝かせないわけがない。
落ち着いた大人の女性っぽく見えるのに、中身は絶対にそんなことない。
だってエゼリアさんたちだよ?
いつもの行動パターンから考えても、サーシャさんたちは絶対に模擬戦から入って気が済むまでオモチャにされると思う。
妙に高い身体能力を知れば、なおさら解放して貰えないだろう。
「まあ、そういうことでしたらフレイア様から今夜にも話が有ると思いますし、エゼリア様たちとも情報を共有しておきますよ」
「・・・うん。お願い」
心の中でサーシャさんたちの成仏を願いつつ情報共有を終える。
お母様たちが受け入れる姿勢で有る以上、悪い扱いにはならないだろう。
遠くを見ると、私たちが土台と土を作り終えた現場には、早くも四角い形状の棟が結構な数、姿を現していて、大勢の人々が立ち働いている姿が望める。
何ヶ所かで煙が立ち上がっていて人々が行列を作っていることから、昼食の炊き出しが行われているのだろうことも察せられる。
大きな混乱やトラブルも起こっていない様子で、このままみんなが落ち着いて暮らせるようになってくれれば、なんて考えているところへサンドイッチを手にしたノイエラさんが爆弾を投下してきた。
「それはそうと、あの土を増やす術式、土にしか使えないんですか?」
「・・・ふえ?」
言われた言葉の意味を捉え損ねて、サンドイッチを囓ろうと開いていた私の口から変な声が出る。
「土が複製できるなら鉄も複製できるんですよね? 鉄だけでなく薪とか小麦とか食料とかも複製できるなら、永久に籠城戦が出来ますよね?」
「・・・ハッ! 鉄! 食料!」
私の脳内で閃きがスパークする。
手にしたサンドイッチを取り落とし掛けて、慌ててキャッチした。
そうだよ! それは実験してみなきゃ!
なんで思い付かなかったんだろう!
私としたことが、それって大事なことじゃん!
何が複製できて何が複製できないかを把握していないなんて、なんたる凡ミス!
「フィオレ様なら真っ先に思い付きそうなのに、意外ですね」
私が衝撃を受けているとイディアさんが首を傾げる。
ぐぬっ・・・!
的確なツッコミに「ぐぬ」は出たけど、ぐうの音は出なかった。
宙を見上げたエレーナさんさんは困ったように眉尻を下げる。
「私はちょっと微妙ですね。食料が複製できたとして、それを食べたいかと言えば・・・」
「ああ。確かに」
モグモグしていたサンドイッチを嚥下したノイエラさんがエレーナさんに同意する。
ノイエラさんもか。
意外と保守的というか、これは気分かな?
日本でも有った「遺伝子組み換え大豆は嫌」とか、そんな感じだろうか。
私はどうかと考えてみて、すぐに答えは出る。
私にとって熊と同じぐらいに憎むべきは空腹で有って、遺伝子操作技術ではなかった。
「・・・そう? 気分的に微妙なのは分かるけど、生きるか死ぬかなら私は“有り”かな」
「それもそうですね」
再び小さく首を傾げたイディアさんは私と同じ実利派だったようだ。
ちょっと、やってみようかな。
私の手の中に有るサンドイッチに魔力を伸ばして掌握してみる。
ん?
「・・・あれ?」
「どうしましたか?」
囓りかけのサンドイッチを見つめて動かない私に注目が集まっている。
「・・・複製できない」
「早速、試してたんですか」
ノイエラさんにクスッと笑われる。
魔力の浸透は出来ているはずだし、掌握も出来ているはずなのに、複製が出来ない。
何だろう、コレ?
イメージが足りてない?
じーっとサンドイッチを見つめつつ、サンドイッチを感じ取る。
柔かなパン生地とソテーされたケールとムッチリとしたベーコンとバター、後は何かのソースだよね。
それぞれの素材は間違いなく感知できているし、詳細に感知できているということは掌握も出来ていると思う。
だったら何が足りてないんだ?
「・・・ぐぬぬ」
「フィオレ様。早く食べちゃわないと休憩が終わっちゃいますよ?」
「・・・う、うん」
ただでさえ食べるペースでイディアさんたちに負けてるのに、説明で喋っている時間が長かった私はまだ半分もサンドイッチを残している。
くっそぅ。このまま棚上げしては何か負けた気がする。
サンドイッチを口に突っ込んでいると、座るのに邪魔だから横に置いていた私のナイフが目に留まった。
鉄じゃん!
手の中に残っているサンドイッチを口に押し込んで大型ナイフを鞘から抜き出す。