軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㉟

「た、たぶん出来たと思うわ」

「・・・じゃあ、そのままゆっくりと魔力の手を地面から引き抜いてみて」

ゆっくり~、ゆっくり~、とルナリアの耳元で囁く。

「うん。―――、ふぁっ!?」

「・・・ヨシ! 実験成功!」

いくらも経たない内に土の小山がモコココココッと盛り上がってグッと拳を握る。

思わず口から転び出た私の声にルナリアが目を剥いた。

「実験って、何!?」

「・・・いやぁ。なんでこうなるのか私も理屈がよく分かんないんだよね。だから、私が成功した方法をルナリアが再現できるなら、何か法則が有るんだろうなって」

後頭部を掻きながら“てへぺろ”というものをやってみれば、害は無さそうだと判断してくれたルナリアが鎮火した。

「そ、そうなのね」

「・・・今はまあ、結果よければ全てヨシ、だよ」

「ふぅ・・・」

ウンウンと頷いていたらルナリアがしおらしい溜息を吐いた。

珍しい感じの反応をしたね。

「・・・どうかした?」

「ううん。ただ、人間として、これで良いのかしら? と思っただけよ」

ルナリアの吐露に考えさせられる。

ふむ・・・。人として、か。

触手が生えてたり触手の先っぽが長かったりを気にしたところで、本当に魔力的なものに過ぎないしなあ。

実際に生えてるわけじゃないし。

倫理的なものは横に置いておいたとして、論理的に納得し切れていないものに対する不安が無いのかと言えば、私だってそんなことは無い。

ただ、いちいち疑いだしたら脅威の治癒力を発揮する回復薬なんて怖くて飲めないよ。

実際にあの回復薬を作っている人の人となりを知っているだけに、何が入っているのか訊くのも怖いぐらいだし。

何かの中毒症状を患っている雰囲気で、喜々として人体実験をする人だったしね。

でも魔法って、たぶん、パソコンで言えば私という 肉体(ハード) に実在するものじゃなく、私という 精神(ソフト) にインストールされた仮想ドライブみたいなものじゃん?

なぜかって、魔力は筋肉組織や皮膚を透過するんだから、特撮放射能大怪獣解剖図の放射能袋みたいな器官が私の体内に有るわけじゃないのは間違いないと思う。

無いよね? 魔力袋とか。

魔法を覚えるごとに書き込みデータファイルは増えたかも知れないけど、3割も使用していないとか一説に有るらしい大脳の 記憶領域(ストレージ) を埋めるには、魔法1つの記憶なんて微々たるものだろうし、魔法が精神の方に書き込まれるものだとしても微々たるものじゃないかな。

だって、どこの国だったかの学者さんがご臨終する人の重量を量ったときに、ご臨終の瞬間、重量が減ったって報告書だか論文だかを書いたらしいんだよね。

それによると人間の魂の重さは21グラムだったとか。

体重数十キログラムの内の、たった21グラムだよ?

21グラムに書き込みデータファイルが1つ増えたところで、たぶん、そんなの誤差レベルだって。

結論、どうってことない。

「・・・良いんじゃない? 目には見えないんだし」

私が導き出した無問題理論の速報結果を伝えると、改めて私の顔を見たルナリアは、小さく肩を竦めた後、前を向いた。

諦められた!?

「良いから、作業を進めるわよ!」

「・・・りょーかーい」

いくらアップデートで爆速になったからといって、ルナリア1人に任せるつもりは無い。

私だってダブルで行くよ。

今度は両手分の魔石を通した爆速コピペで土を量産し始めると、1分間も経たない内に技師さんからストップが掛かった。

魔力の手1本あたりの生産量が5倍速になったのだから、爆速も爆速。

移動してモコモコして、また移動して、爆速モコで巻き返した甲斐が有って、突き当たりの城壁で折り返して作業現場は北門方面に戻っていく。

ノルマの半数以上をこなして午前中の作業を終えることができた。

そして、お昼時。

「そうですか」

「宰相閣下がねぇ」

「信用できるんですか?」

領主館のメイドさんが届けてくれた昼食のサンドイッチを手に、イディアさんとエレーナさんとノイエラさんが首を傾げつつ漏らした感想は、こんな感じだった。

出来上がったばかりの土台にシート―――、というか、デッカい布を2枚敷いた私たちは、2つのグループに分かれてお昼休憩を取っている。

私はサーシャさん夜這い事件に至るまでの状況を説明するためにイディアさんたちと同じシートに腰を下ろしていて、ピーシーズに聞かせるのはちょっと拙そうってことで、ルナリアにお願いして、ルナリアはピーシーズと一緒のシートでお昼を摂っている。

ピーシーズに宰相さん絡みの話を内緒にすることは、ルナリアも少し複雑そうだったけど、ピーシーズを守るためだからとルナリアにも納得して貰った。

数十年間も王国丸ごとを騙し続けた大掛かりな茶番を台無しにしそうなら、宰相さんよりも王様の方が口封じに動くんじゃないだろうか。

だから、ピーシーズに知らせないことはピーシーズを守ることになるはずだ。

イディアさんたちの反応としては予想の範囲内かな。

安易な否定や拒絶ではなく、宰相さんに対する疑念だよね。

長年の敵対関係が茶番だったといわれても、ハイそうですか、と丸呑みするのは難しいだろう。