軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㊲

お行儀悪いけどリスみたいに頬袋を膨らませてモグモグやりながら、ズッシリと重いナイフに魔力を浸透させる。

磨き上げられて鈍色の鏡のように私の顔を映しているナイフの刃を見つめて、掌握。複製。

魔石を通していないと、かなり魔力の消費が多いね。

でも、手応えは有る。

お? おお? おおっ。イケるイケる。

複製って、こんな風に増えるのか。

虚空から湧き出るようにポンと増えるわけじゃないんだね。

アメーバが分裂するみたいにニューッと刃の幅を広げたナイフが分裂を終え、複製体がシートの上にガランと落ちる。

「・・・んんっ!! んんんっ!?」

「フィオレ様? 喋るのは飲み込んでからにしましょうね」

ハイ。済みません。

咎める色を乗せた声でエレーナさんから穏やかに叱られた。

エレーナさんは、お母様の側近の中でも比較的普通成分が高めな人だからね。

ちなみに、イディアさんも普通成分は比較的高め。

意外なことに、普通そうな人に見えるノイエラさんはアンリカさんディーナさんに次ぐパワータイプで、脳筋具合は比較的高めだったりする。

そんなことを考えている場合じゃなかった。

目一杯にサンドイッチを口に詰め込んでいるもんだから返事も出来ない。

コクコクと頷きながらモグモグしつつ、複製体を手に取ってグッと示して見せる。

「あら。これは複製ですか?」

「・・・んぐっ! 出来た!」

ようやく嚥下して成功を報告する。

目を丸くして私の手から複製体を受け取ったエレーナさんが、複製体をまじまじと検分し始める。

イディアさんとノイエラさんも一緒になって覗き込んでいる複製体は、どういうわけか 柄(グリップ) の部分が少し痩せている形状で、原型とは微妙に違うものになっている。

成功と言って良いんだよね?

「これ、鉄よね?」

「そうだと思うけど、どう見ても 鈍(なまく) らじゃない?」

あ。それ、私も思った。

複製体の形は原型とよく似てるんだけど、原型のナイフとは明らかに色が違って艶も輝きも無いんだよ。

形だけナイフっぽく整えました、って感じの鉄片に見える。

「刃物のことなら鍛冶師かマキアナに見せた方が早いわね」

「そうですね」

イディアさんが刃物マニアなマキアナさんの名前を出して、エレーナさんとノイエラさんが複製体に目を落としたまま頷く。

「フィオレ様。これ、お預りしても? マキアナの意見を聞きます」

「・・・お願い」

イディアさんの確認に承諾を返していると、どうやら魔力的手段でも複製体を調べていたらしいノイエラさんが首を傾げる。

「鉄だと思うんですけどね。それに、この形―――、フィオレ様。元のナイフを見せていただいても?」

「・・・どうぞ」

何かに気付いたらしいノイエラさんに鞘へ戻したナイフを手渡す。

何を見比べるのかと思えば、ノイエラさんは鞘から抜かないままナイフの柄と複製体の柄の部分を比較する。

「ああ、これ、鉄の部分だけなんですね」

「・・・鉄の部分?」

ノイエラさんの指摘に、私も一緒になって複製体を覗き込む。

言われてみれば、そうかも知れない。

柄の辺りの形が原型よりも痩せているのではなく、滑り止めに巻き付けられている革が無いのか。

これって、どういうことだろう?

私はナイフを丸ごと複製しようとしたのに、鉄の部分だけが複製できた?

革はダメなんだ・・・。

サンドイッチもダメだったしな。

サンプル数が少ないから確定と言える段階では無いけど、複製できるものと出来ないものの共通点は何だろう?

無機物と有機物?

他にはパッと思い付かないな。

「ほら。フィオレ様は早く食べてしまってください」

「・・・あっ。はい」

ヤバイ。まだ食べ終わっていないの私だけじゃん。

ルナリアもピーシーズも、とっくに食べ終わってる。

これ、この場にお母様がいたら絶対にグズグズするなと叱られてるヤツだ。

残念だけど複製体の謎は持ち越すしかない。

本格的に拙そうだからサンドイッチの残りを頑張って口に押し込んで、ダーナさんが淹れてくれたお茶で流し込んでお昼を摂り終えた。

午後の作業で第2次爆速量産を始めて3時間近く経った頃、ぐるっと回って作業現場は北門近くまで戻って来ている。

慣れってすごいよね。

地面に「指先」を突っ込んでからの爆速増殖にはルナリアも私も慣れてきて、モコココココしながら余所見する余裕さえ出来てきている。