軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㉛

魔力の手は目に見えないから、この辺かな? ってことしか分からないけど、私も魔力の手を地面に突っ込んでみればルナリアの魔力の手がハッキリと感じ取れる。

ここで効くのが「他人の魔力には干渉できない」魔力の原則だ。

私の魔力を地中に広げれば、ルナリアの魔力で掌握されていない部分の土だけが掌握できる。

先にルナリアの魔力が広がっていても、掌握されていない部分の魔力は私の魔力で押し退けられるんだよね。

「むっ!」

「・・・ふひっ」

ルナリアが掌握している範囲の土が複製されてモコッと体積を増す。

掌握範囲外の魔力を押し退けられてルナリアの眉がピクッと動いた。

「むむっ!」

「・・・ふひひっ」

ルナリアのすぐ横で私が掌握している土が数倍の速度でモコモコモコッと体積を増す。

対抗意識を刺激されたルナリアが複製速度を速めるけど、私の複製速度の方が遙かに早い。

「「「「「おおおっ!!」」」」」

急激に体積を増してモコモコと盛り上がり始めた地面に歓声が上がる。

しかし、ルナリアの眉間は険しくなっていく。

「むむむむむむっ!」

「・・・ふひひひっ」

ルナリアも頑張ってるけど負けないよ。

なぜなら、私の魔力の手は10本も有るからだ。

魔力の手の本数までは誰かに話したことが無かったと思うけど、本数が多いほど掴めるものが多くなるのは当然だよ。

まあ、体力勝負的に大量の土を作る必要が有る今の作業では、自前の体内保有魔力を極力消耗させないように魔石を通す必要が有るから、魔石を握れる両手分しか魔力の手を出していないんだけどね。

それに、魔力の手を大きく広げて掌握する範囲を大きくすることは出来るけど、それをやってしまうと制御が大味になる。

すぐ近くに有るノイエラさんが作った土台に影響を与えるわけには行かないから、今は大味な仕事が出来ないんだよ。

巨大合体ロボットのデッカい手に針と糸を持たせたって、針の穴に糸を通す速度が速くなるわけじゃないよね?

痒いところに手が届いていないもどかしさは有るなあ。

ともあれ、2本の「手」を出している私は1本の「手」で頑張っているルナリアを軽く煽ったわけだけど、素直で負けん気が強いルナリアはしっかり食い付いた。

さあ、ルナリア。成長するときだよ?

眉を難しくしたルナリアが私を見る。

「それ、どうすれば良いの?」

「・・・量を増やしたいの?」

「うん」

素直に頷くルナリアに、そのものズバリを答える。

「・・・魔力の手を増やせば良いよ」

「どうやって増やすの?」

ルナリアがコテッと首を傾げた。

難しく考える必要なんて無いよ。

「・・・ルナリアは手足が4本も有るじゃん」

「ハッ! 手足!!」

目から鱗だったらしいルナリアは気付きを得たようだ。

1本で足りなきゃもう1本出せば良いじゃない理論。

これは私が通った道だ。

そしてきっと、誰もが通る道になるのだろう。

4本目までは“慣れ”で何とかなると思うんだよね。

1本の尾びれで海から陸へ上がった魚だって、こうやって気付きを得たのだろう。

そこに胸びれが有るじゃない! と。

胸びれが有るなら腹びれも有る。

そうやって四本足を得た魚類は両生類と進化したんじゃないだろうか。

魔力の手で私たちは生命の進化の道を追体験しているのかも知れない。

腹びれが有るなら背びれも―――。

あれ? そうすると、5本目の「手」って、背びれ? いや。尻尾?

待て! それ以上はいけない!

「・・・ま、先ずは“両手”になるように、やってみると良いよ」

「うん!」

新たな疑惑に動揺する私に気付かず大きく頷いたルナリアは、早速、腰のポーチから魔石をもう一つ取り出して左手に握り意識を集中し始める。

「むっ!」

「・・・がんばれー」

唸り声がリセットされたルナリアを横目に私は土を量産し続ける。

右手の魔石を通じた魔力の手を意識せずに使えるまで慣れていれば、両手で別々の魔力の手を使うことには苦労しないはずだよ。

体感の問題だから、両手にゴミバサミを持ってものを拾うのと大差無いし。

それが出来たら次の段階なんだけど。

「・・・私も挑戦してみるかな」

こうやって作業時間という持久力を求められる事態に直面して、気付いたことが有る。

あんまり意識していなかったけど、今まで私は、3本目以降の魔力の手を自前の体内保有魔力を使って動かしていたと思うんだよね。

よほど負荷が大きなものは魔石を通す意識をしていたけど、自分の体を支える「足」やそれ以外の「手」をどこから出しているかなんて、体感に頼って明確に意識していなかったんだよ。

これを魔石を通す意識に変えてみる。

ルナリアが新たな進化に挑むなら、私も新たな進化に挑むべきだ。