作品タイトル不明
開眼 ㉚
「・・・うーん」
火魔法って外に向かってバーン! って感じなんだけど、土魔法って掌握する方に意識が向く感じなんだよ。
でも、やってることは魔力の放出で、火魔法も土魔法も同じことなんだよね。
魔力制御の方向性が明らかに違うってことは私にも分かる。
私が土を固めるときって力任せにギュッと固めているだけで、完成時の精密さなんて考えたことも無かったな。
だから仕上がりがゴツゴツガタガタでピシッと綺麗な面に仕上がっていなかった。
私が慰霊碑の表面を綺麗に仕上げるために、本体を成形してから表面をカットしていたものを、ノイエラさんは一発でほぼほぼ仕上げてしまった。
これが力量の違いか。
「・・・ふむ?」
どこに違いがあるんだろう?
いや。答えなんて出てるよね。
きっとイメージの正確さだ。
私が一発でギュッと固めているのに対して、ノイエラさんの土魔法は定められた形状の中に土が吸い込まれていったように見えた。
それって、まだ何も無い空間に完成時の姿を正確に思い描けているってことなんじゃないだろうか。
ん? どこかで同じような手法の魔法が無かったっけ?
固定した器に押し込んで固める・・・。
ハッ! お母様の“白焔”がそうじゃなかったっけ。
“白焔”は“紅蓮”の発展形で、ノイエラさんも“紅蓮”を使えたはず。
だったら、“紅蓮”のイメージを土魔法に応用した?
いや。逆なのかも。
この土魔法のイメージを火魔法に応用したのが“紅蓮”?
頭の中に想像上の実物大3Dモデルというか、「型」を作って、その型の中に掌握した土を移動して詰め込んだ?
思い出してみれば、ノイエラさんは作業前に縄張りをじっくりと見て回っていた。
あれが「型」を作り出すイメージの作業だったんじゃ。
「・・・ええ?」
ちょっと待って。それどんな妄想力?
拡張現実(AR) みたいに、目の前の景色に頭の中で想像した3Dモデルを重ねて魔法を発動する?
正確に記憶してさえいれば、超リアルな実物大の特撮放射能大怪獣像とか実物大の巨大合体ロボット像とか作れちゃうってことかな?
巨大って言うなら、実物大の赤銀ツートンカラー宇宙人だって―――、いや。止めておこう。
コレ、何? って聞かれたときに答えに困るようなものは避けておくに限る。
人間の記憶なんてファジーでいい加減なものだから実現するのは難しいと思うけどね。
それにしても、とんでもない妄想力だよ。
ノイエラさんヤバイ。
土魔法術師ヤバイ。
「・・・なんでそこまで正確に想像できるんだろ?」
慣れかな? 訓練かな?
それだけじゃない気もするけど、専門性が有れば出来るようになるんだろうか?
なんかもう、ノイエラさんたちがどんなイメージで魔法を使っているのか、推考が止まらなくなってくる。
「フィオレ様?」
「・・・うん」
「フィオレってば!」
「・・・うん? えっ? 何?」
技師さんが優しい感じで苦笑していて、ルナリアはジト目を飛ばしてきている。
もしかして、しばらく前から呼んでた?
「そろそろお願いできますか?」
「・・・あ。はい」
この技師さんもお姉ちゃんスキルが高そうだな。
控え目ながら、子供扱いされていることは分かってしまう。
「ちゃんとしないと!」
「・・・そ、そうだね」
ポフッと隣から肩をぶつけられて、ちょっとだけ返事に困った。
「・・・どうすれば良いの?」
「あちらでドカッとやっていただければ」
ドッサリからドカッとへ、表現に籠められた意図が何気にパワーアップしている気がする。
ノイエラさんが作業を終えたばかりの土台へもう一度目を向ける。
「ドカッと」は良いけど、これを壊してしまうような「ドカッと」は拙い気がする。
「ノイエラさんが作った土台に影響が出ると拙いよね?」
「はい。影響しないようにお願いします」
「・・・分かった」
そりゃそうだよね。
技師さんに了解を返して腰のポーチから魔石を2個取り出す。
両手に魔石を1個ずつ握ってスタンバイOKだ。
ルナリアもポーチから魔石を取り出して右手に握っている。
「始めるわよ!」
「・・・うん」
私の隣でルナリアの魔力が動いたのを感じる。