軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ㉕

困惑はしたけど、自分の行動に恥じるところは無いらしい。

そりゃまあ、困惑するのは分かるよ?

魔獣かどうかに関係なく、今までも「血を飲む」って行為自体にみんな困惑してたし。

困惑するのが分かってるから、新たに参加する人たちには説明するようにしてたんだけどな。

「・・・説明しなかったっけ?」

「無かったように思いますが、フィオレ様がやれと仰るならば、やって当然ですから!!」

「・・・はぁぁぁ・・・」

キラッキラな笑顔で断言されて、ついつい溜息が出る。

私、新人さんたちに説明したのと混同してたんだろうか?

ていうか、何のための作業か分からないなら訊いてくれればいいじゃん。

みんなと一緒に協力して作業してるから分かってるものだと思ってたよ。

脳筋とかそういうベクトルじゃなく、これって思考停止―――、いや。盲信ってヤツなんじゃ?

惰性でやる作業と目的が分かっていてやる作業では、モチベーションが変わって作業効率が変わるものだ。

勉強や訓練だって同じで、何事も惰性は良くない。

繰り返し説明するように私も気を付けよう。

「結果が良ければ構わないでしょうに」

「・・・それはそうなのですが」

シェリアお婆様もシェイクスピアみたいなことを言い出したぞ?

あっちは“終わりよければ全てよし”だったっけ。

良い結果に結びついている内は確かにそれで良いんだけど、どこかで問題になりそうで怖いな。

これって、どんな命令でも忠実に遂行する軍隊的な思考回路の弊害なんだろうか?

うーん、と唸っていると、エターナさんが申し訳なさそうな顔をする。

「何か拙かったでしょうか」

「・・・ううん。良いよ。ただ、色々と魔法術式や新しい技術も覚えて貰うから、エイラさんも一緒に限界まで体内保有魔力量を増やすように!」

「「はっ!」」

大事なことだからビシッと命じると、脳筋盾師弟から敬礼付きで元気な返事が返ってきた。

ここで、一段落したと見て取ったらしいルナリアが思っていたよりも早い行動に出た。

「エイラ! 休憩できたなら、ちょっと付き合いなさい!」

「はいっ! ―――、ええ?」

返事をしたものの、意図を測りかねた様子のエイラさんが困惑の声を上げた。

「模擬戦よ!」

「な、なぜ私と?」

まさか自分に声が掛かると思っていなかった様子のエイラさんの問いに、ルナリアの目はエイラさんではなく私へと向いた。

「フィオレはエターナと話が有るのよね?」

「・・・そうだね。色々と聞いておきたいかな」

構わないかな? と、目線で問えば、エターナさんは嬉しそうに頷く。

「私でよろしければ」

「だから、エイラなのよ!」

エターナさんの返事を確認したルナリアは、再びエイラさんに向き直って反り返る。

対するエイラさんの態度はハッキリとしない。

嫌、って感じでは無さそうなんだけどな。

これは何だろうね?

らちが明きそうに無いからストレートに訊くか。

「・・・嫌なら引き受けなくても良いけど?」

「い、いいえ! 決してそのような! ただ、公爵閣下のお相手を、私のような未熟者が務めさせていただいてもよろしいのでしょうか」

日本の女の子とほぼ同じ動作で目の前に両の手のひらを広げて、いえいえと小さく振る。

世界が違っても動作は同じなのだとホッコリした。

でも、誤解が有るようだから訂正しておこうか。

「・・・ゴメンね。エイラさんと、ってわけじゃなく、エクラーダの剣術と手合わせしてみたいんだよ。模擬戦を見ていてエイラさんは実力が有ると感じたんだよね? ルナリア」

「そうよ!」

だと思った。

ドーンと反り返って言い放つルナリアにクスリとする。

興味津々で模擬戦を見てたものね。

ルナリアが興味を持ったのはエクラーダ剣術で、お相手はエターナさんでもエイラさんでも良かった。

チラリとセリーナお婆様を見れば、お婆様もクスリと笑って頷いた。

「・・・体調が大丈夫なら、少しルナリアに付き合ってあげてくれるかな」

模擬戦はどこまで行っても模擬戦で、実戦ではない。

一定以上の実力を持つ者同士での模擬戦は、それほど危険なものではないことを、私もウォーレス領に来てから知った。

みんな、寸止めぐらいは当たり前にするからね。

木剣を使ってのものだし、骨折ぐらいは一晩で治る回復薬もある。

だったら、筋肉で思考する脳筋が本能の要求に従わないわけがない。

ウォーレス流の剣術と模擬戦を行うことでエイラさんも得るものが有るだろうし、それはエクラーダ流の剣術と初めて向き合うルナリアも同じだ。

ここまで背中を押せば、困惑が消えたエイラさんがヤル気に満ちた表情で頷く。