軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ㉔

明治期の旧日本軍がそうだったはずだ。

砲兵部隊が敵陣を耕し、歩兵部隊が正面から圧力を掛け、騎馬部隊が側面から急襲して崩しに掛かる。

馬より速い弾丸が飛び交う銃火器が発達した時代になると、塹壕や陣地を構えての陣取り合戦に戦場が変わった。

塹壕を乗り越えるために重装甲を施した車両の戦車が生み出され、戦場の主役は機甲部隊を伴った歩兵部隊が主力となった。

機甲部隊は馬にまで鎧を着せて敵陣形を踏み破った重騎兵への先祖返りとも言える。

お母様たちが率いるピーシス領軍が特殊なのは、軽騎兵の役割も重騎兵の役割も砲兵部隊の役割も乗馬歩兵の役割も同時にこなしちゃうからで、この分類だとウォーレス領軍は乗馬歩兵になるのかな。

ウォーレス領産の強い軍馬とピーシス領が生み出す数多くの魔法術師を擁するからこそ、ウォーレス領軍は強い。

さらには、体内保有魔力量増加と魔石使用法と無詠唱行使の普及で無限に近いほどの連射火力を得てしまうのだから、ウォーレス領軍の強さは、ちょっと手が付けられない異次元の域にまで達すると思う。

うん。私の方針は間違ってないな。

「我々はそう考えていました。前線を押し上げるのは歩兵部隊の役目です」

「・・・拠点防衛は得意そうだよね」

「敵の数次第ですが、同数で有れば押し負けることは無いかと」

歩兵の矜持と自信を見せるエターナさんに、従来のピーシス領軍にそのまま混ぜ込むのは得策ではない、との思いを強くする。

エターナさんたちのドクトリンも間違っていない。

個人携行の銃火器武装が標準となった現代の地球でも前線を押し上げるのは歩兵部隊の仕事だからね。

長大な射程の野戦砲や巡航ミサイルや爆撃機を持っていても、敵地の「制圧」は歩兵部隊にしか出来ないだからだ。

ここで気になった部分を訊いてみる。

「・・・フムフム。でも、身体強化術式はあんまり使ってないよね?」

「エクラーダでは体内保有魔力量が多い者は珍しいのです。ここぞというときにしか使いません」

エターナさんが眉尻を下げて自嘲するように言う。

ははぁ。魔力量か。

身体強化魔法を使わない技術体系なのかと思ったら、省エネ運転でセーブしていただけらしい。

一般論としてエクラーダ人は体内保有魔力量が少ない?

でも、それは納得が行かない。

フレーリアから受け継いだ私の体はエクラーダ人で、今の私はそれなりに体内保有魔力量が多いそうなのだ。

これって環境由来かな?

自然発生の魔力が濃い“魔の森”の傍に住むウォーレス領民は、マグロの醤油漬けみたいに魔力漬けにされて魔力に染まってるとか。

私、アクティブソナーを日常的に使うようになってから、魔力の強弱が何となく分かるようになってきたんだよね。

その私が感じるところによると、エターナさんたちも魔力漬けになりつつ有ると思うんだよ。

最初に会った日に較べて、エターナさんの存在感が強くなってる。

んん? 存在感? 生命反応? まあ良いや。

だから、もうケチらなくて良いよと教えてあげる。

「・・・今は以前より使えるんじゃない? 魔力量が増えてるし」

「私の魔力量がですか?」

よく分かっていなさそうな顔でエターナさんが首を傾げる。

あれ? 何? この擦れ違い感。

「・・・全く気付いてなかった? レティアに来たときよりも増えてるよ」

「そうなのですか!?」

理解が追い付いたらしいエターナさんが食い付いてきた。

グワッと迫ってくるエターナさんの勢いに、本能的な危機を感じて仰け反ってしまう。

近い近い近い! 何でみんな顔を寄せてくるの!?

伸ばした手でムギュッとエターナさんの顔を押し退けつつ確認を続ける。

「・・・む、胸の中がポカポカしない?」

「ぽかぽかですか? ここ数日、胸の中というよりも体全体が暖かい感覚は有りましたが。体調が良いな、とは思っていました」

自分の胸に手のひらを当てたエターナさんは、自分の胸を見下ろして首を傾げる。

その様子を見て思案顔になったルナリアの目が私へ向く。

「んー。もうちょっと血を飲ませた方がいいんじゃない?」

「・・・そうかも」

ルナリアの指摘に頷く。

明確に実感を持てていないということは、まだまだなのだろう。

急速育成にも新人さんたちと一緒に参加していたのに、効果がイマイチっぽい?

数値で確認出来るわけじゃないから、どのぐらい増えたとか具体的には分かんないしなあ。

ポカポカが無くなるまで続けさせるしかないか。

私たちの顔を見比べたエターナさんが首を傾げる。

「あの。もしや、魔獣の血を飲むと体内保有魔力量が増えるのですか?」

「・・・そのための出荷作業と回収作業だし」

エターナさんの質問に頷いて返すと、困惑したような表情になる。

「そ、そうだったのですか?」

「知らずにやってたの?」

「はい!」

ルナリアに問われたエターナさんは潔く頷く。