軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ㉖

「・・・エターナさんもゴメンね。エターナさんだけじゃなく、エクラーダ剣術を使う人たち全般として、領軍の中での配置をどうしたものかと思って」

「なるほど。それで騎乗中の盾を」

エターナさんが深く頷く。

私が寝ている間にエゼリアさんたちと模擬戦をしたらしいエターナさんは、ウォーレス流の剣術―――、というか、ピーシス流の剣術をすでに知っている。

「・・・そういうこと。聞いてると思うけど、ピーシス領軍ってウォーレス領軍の一部なんだよ。“ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣”って言葉の通り、ピーシス領軍は攻撃に特化してる」

「それが騎馬部隊なのですね」

エターナさんも自分で「歩兵だ」と言っていたぐらいだし、兵種が違うことは理解していたようだ。

それを理解した上で、エターナさんたちはウォーレス領に馴染もうと頑張ってたんだろうね。

お母様もこの違いを知ったからこそエイラさんをエターナさんに預けたのだろうし、別の活かし方を模索するべきだ。

私の希望に添って馴染もうとしてくれたエターナさんたちの気持ちも無駄にしたくない。

だから、私も本音で話す。

これは実務の話だ。

「・・・今まではそうだったし、それで良かったんだよね。それがピーシス領軍の強みで、ウォーレス領軍とも噛み合ってた。実際、私もエターナさんの戦い方を自分の目で見るまでは、エクラーダ民の部隊を作ってピーシス領に馴染めば区別なく混ぜるつもりだったし」

「考えが変わったのかしら」

セリーナお婆様からの確認に頷いて返す。

お婆様たちの懸念はウォーレス領軍に、というか、ピーシス領軍に異物を混ぜて団結にほころびを来さないかだろう。

為政者として絶対に無視できない部分なのだから当然だ。

炊き出しを配下のメイドさんたちに任せてまでエターナさんたちの模擬戦を見に来ていた理由なんて、他に無いからね。

ずいぶんと毛色が違うことをお母様たちから聞いていたんだと思う。

お母様たちも無視できない部分だから、自ら模擬戦をして違いを確かめた。

お婆様たちの懸念を払拭するには、小手先の気休めではなく、根本の部分で安心できる方針を提示する必要が有る。

だから、私が感じたままに構想を提示する。

「・・・混ぜるのは無理かな、と。―――、ああ、いえ。違いますね。エクラーダ部隊はエクラーダ部隊のまま活かした方が良いのかな、と」

「そのまま活かす、ですか?」

エターナさんは首を傾げる。

おや? イメージしにくかったかな?

「・・・うん。テレサの護衛として王都に部隊を派遣していることは話したよね」

「はい。フィオレ様から命じられるその栄誉、我らエクラーダの民にも担わせていただきたいと考えるほどです」

所属する国は変わっても、旧主の血を継ぐ私を主君と仰いだ以上は主君の命を果たそうとする覚悟が伝わってくる。

きっと、エターナさんたちだけを王都へ派遣しても、エターナさんたちは私の命令に従って、テレサたちを守ってくれるだろう。

そこは疑っていないし、エクラーダの民が私に帰順している姿を見れば、カレリーヌ様も安心してくれると信じられる。

でも、それはエクラーダ部隊に限ったことだ。

「・・・派遣部隊の任務はそれでも良いんだけどね。それって、ウォーレス領軍にとっては、王都方面への派遣と南部の防衛で常に二正面戦線を抱えているようなものだと思ったんだよ」

「南部と仰いますと、対カリーク公王国の国境防衛ですね」

エターナさんの確認に、私だけでなくお婆様たちも頷いている。

基本認識にズレは無いね。

問題はここからだ。

覚悟を決めておかなければいけないことがある。

エターナさんたちも、私自身もだ。

「・・・そして、小国連合諸国に散った多くのエクラーダ難民。あっちの地域情勢が悪化すれば小国連合諸国を出てリテルダニア王国へ押し寄せるかも知れないし、もしかすると、すでに西部国境地域に流入しているかも知れない」

避難先の情勢が怪しくなれば、当然、難民たちは動く。

そのときに目指す次の避難先はどこか?

そんなもの決まってる。

私という伝手が同胞たちを受け入れたと聞こえてきたリテルダニア王国だ。

数万人規模の難民の移動はどこの領地にとっても一大事で、注目度が高いからこそ情報の伝播は止められない。

「その可能性は有るでしょうね」

私が提示した仮定にお婆様たちも同意を示す。

いや。お婆様たちのことだ。きっと私が指摘するまでもなく懸念していたはず。

生きる希望が残されているなら、一度は諦めた難民たちも再び歩き出すだろう。

1000キロメートルは歩けなくても、500キロメートルなら、300キロメートルなら歩けるかも知れない。

そこに有るリテルダニア王国の国土はどこか?

内戦により”融和派”貴族が排除されて王家直轄領となったらしい西部国境地域だ。

王家の危機に、ウォーレス家に動かないという選択肢は無い。

私という原因が有る以上、ウォーレス領は必ず兵を出す。

同胞たちが懸念事項だと聞いたエターナさんの表情には緊張の色が現れている。