軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ㉓

「終わったみたいね!」

「・・・そうだねえ」

手を差し伸べてエイラさんを立たせたエターナさんが、私たちの視線を感じ取ったたのか、こちらを見てパァッと表情を明るくした。

エイラさんと一言二言、言葉を交わしたと思えば、2人連れ立って歩み寄ってくる。

次は自分の番だと乗馬訓練場の柵に鈴なりになっていた若者や子供たちが、取り残されて不平の声を上げている。

振り返ったエイラさんは「大人しく待ってろ」というようなジェスチャーをしたが、エターナさんは不平の声などガン無視で、私たちの姿しか目に入っていない様子だ。

まあ、順に相手をするなんて任務中のエターナさんが気軽に約束するとも思えないけどね。

「・・・2人ともお疲れさま」

「ご覧になっておられましたか」

「・・・うん。見てたよ」

嬉しそうなエターナさんに頷いて返せば、感激したように胸元でグッと拳を握る。

いや。ギチチッ! かな。

ものすごい握力なのだろうと予想できる音が、耳に聞こえるほどの握力って、何!?

「そうですか! ご覧いただいていおられましたか!」

「・・・う、うん」

復唱しながらエターナさんは筋肉を誇示するポースを取る。

このポーズ、確かサイドチェストって言ったかな。知らんけど。

横を向いて立った位置からこっちに顔を向けて、二の腕の筋肉と胸の厚みと腿の筋肉を強調する感じのポーズだよ。

待って待って! カニみたいに筋肉を誇示しながら横歩きでにじり寄って来ないで!

見て貰いたい人に見て貰えるとテンションが上がるって気持ちは分かるけど、テンション高すぎない!?

カニを迎撃すべく、ズイッと一歩前へ出てきた仁王立ち奉行が、2人の前でペッタンコの胸を反り返らせる。

「エターナもエイラもヤルわね!」

「ありがとうございます!」

「お恥ずかしい限りで・・・」

エターナさんは満面の笑みで頭を下げ、自分でイメージしたほど上手く出来なかったのか、対照的にエイラさんは萎れる。

剣や盾のことはよく分からないけど凹むようなこと?

すごかったと私は思うけどな

盾を弾き上げられた衝撃でリンボーダンス並みに上体が反っても倒れなかったのに、アレで上手く出来ていないとか凹まれたら、そっちの方が驚くよ。

「・・・恥ずかしくなんて無いよ。ずっと努力してきたんだと、よく分かった」

「フィオレ様・・・!」

感激したように目を輝かせて胸の前で両手の指を組み合わせるエイラさんは放って置いて、聞くべきを聞いておくかな。

「・・・エターナさん。エクラーダの剣術って馬上で使えるの?」

「馬上ですか? それは盾、という意味でしょうか」

キリッと真面目な表情に戻ったエターナさんに頷き返す。

「・・・うん。あの盾の使い方って、足腰の強さと上半身の柔らかさがキモだよね?」

「よく見ていらっしゃいますね。エクラーダでは打ち込まれる力を正面では受けないのですよ。ずらして、押し退けて、一歩も退かない。“不退”と呼ばれる技術なのですが、それを可能にするのが足腰の強さと上体の柔軟さと腕の力です」

解説しながら、エターナさんは手のひらに拳を打ち付けて、拳を横に押し退ける仕草をした。

例えばビリヤードだ。

真正面から受けてしまうと運動エネルギーはぶつかられた側へと伝達して真後ろへ押される。

45度の角度でぶつかられると、ぶつかった側とぶつかられた側は、それぞれ左右の斜め後ろへと弾かれる。

それを盾を弾き飛ばされないように衝撃を逸らす―――、いいや。逃がす?

「・・・なるほど。腕もか」

不退―――、“不退転”かな?

ぶつかった側だけを横方向に押し出して、ぶつかられた側に伝達された運動エネルギーを身体能力で相殺するのが、エクラーダ剣術における盾の使い方なのだろう。

そこでエターナさんは表情を崩して苦笑する。

「仰る通り、馬上で十全に盾を使えるとは言えません。騎士は耐えられても、馬の足が揺らげば踏み止まれませんから」

「・・・じゃあ、やっぱり歩兵向きかあ」

ピーシス領軍が得意とする高火力と高機動力を活かした騎馬戦術に組み込んでしまっては、エターナさんたちの持ち味を活かせない。

私の中でそんな思いが強まる。

私の心中をどこまで読み取れているのか分からないけど、エターナさんもアッサリと頷き返してくる。

「そうなりますね。エクラーダでは、騎馬部隊は専ら伏兵として敵の側面を突いて陣形を崩すために使います」

「・・・騎馬戦術として一般的では有るよね」

騎馬戦術にも色々と有って、エクラーダにおける騎馬部隊の扱いは、分類としては軽騎兵になるのかな。

重騎兵が一般的だったこっちの世界に“準備砲撃”の勇者が持ち込んだ騎馬戦術だったはず。