軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ㉒

環境の違い。

戦術の違い。

活かすべき場面。

学ぶべき技術。

私も頭の中が整理できてきた。

お婆様たちは拠点防衛を念頭に考えて居たのだろう。

国境線を守るレティアの防衛を最優先に考えれば、エクラーダ流の盾の使い方は確かに参考になるし、使える。

ただ、これは「盾」であるウォーレス家の考え方だ。

私は「剣」であるピーシス家にそのままエクラーダ民を組み込もうと考えたから、ミスマッチを起こしそうになったのだ。

やっぱりエクラーダ部隊は独立運用した方が良い?

いやいや。混ぜる部隊の選定次第か。

突破力の有るピーシス家が電撃戦を得意とする機甲部隊だとして、電撃戦は機甲部隊だけでは成立しない。

敵の防衛線を一点集中で突破して敵軍の中枢や重要拠点まで一気に叩くにも、破った防衛線をすぐに塞がれては退路や補給線を失って孤立する。

破った「穴」を維持して大きく拡げるには歩兵部隊が必要になるはずだ。

“ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣”というフレーズが頭に浮かぶ。

今までは、ピーシス領軍の騎馬部隊が「剣」―――、機甲部隊の役割で、本体の歩兵部隊をウォーレス領軍が務めてたんだよね?

その二つの機能をピーシス領軍だけで完結する独立混成部隊はどうだろう?

軍馬の一大生産地なんだから機動力自体はウォーレス領軍も元々持っている。

ピーシス領軍は魔法術師が多いのが特色の1つだったはず。

ウォーレス領軍にも魔法術師が増えて「剣」の突破力を持てば、王国最強の軍隊が2倍にならない?

2倍じゃなくて2つか。

2つ有るなら、ピーシス領軍にも「盾」の役割を担う歩兵部隊が有っても良いんじゃない?

この間の内戦だって西部国境戦線とレティアの南部国境戦線の2方面作戦だった。

戦力が増えて2方面作戦が安定的にできるようになったとして、両方の戦線を維持できるだろうか?

いや、逆だ。維持するにはどうすれば良い?

私の記憶に有る先例として、2方面作戦を平然とやって退ける国と言えば、“世界の警察”と呼ばれたあの国だ。

私はウォーレス家を“世界の警察”にする気は無いけど、テレサと王妃様を守るために護衛部隊を派遣している時点で片足は突っ込んでしまっている。

あの国を在り方を目指すのかあ・・・。

大変そうだな、という思いが真っ先に浮かぶ。

「・・・うーん」

「憶測で判断するよりも、当事者たちが目の前に居るのですから、聞いてみた方が早いでしょう」

「・・・あっ。そうですね」

シェリアお婆様がエターナさんたちを指して、反射的に同意する。

いけない、いけない。

お婆様たちと話している最中だった。

何の話だっけ?

えーっと。エクラーダ剣術を騎馬部隊に使えるかどうかだっけ。

私の頭の中に有る構想としては考え方を修正して方向性が定まりつつ有るけど、本人たちの意見も聞く必要が有るよね。

何が出来て、何が出来ないのか。

どうしたいのか、足りないものは何なのか。

ニーズの問題も有るしなあ。

会社組織だって、ダイコンが欲しいと言っている現場へスイカを持って行っても、受け入れる側も配属された側も困るものだ。

況してや戦場という現場には人の命が掛かっている。

打開すべき状況と人材のミスマッチは 徒(いたずら) に人命を失うだけで誰も幸せにならない。

専門性の有る人材を適材適所で配置して効率的に戦果に繋げようというのが、あの国のドクトリンだったはずだ。

強い国には強いだけの理由が有る。

まあ、あの国の強さのキモは、本気になったときのバカみたいな生産力と異次元の輸送能力だというのは有名な話だったから、真似ようと思って真似られるものではないんだけどね。

生産力の面では、多くの移民や難民を受け入れることによってボトルネックだった労働力を得て、さらなる増産を目指せる環境が生まれたけど。

それでも輸送能力の限界は見えてるんだよなあ。

動員数は遣り繰り出来ても輸送時間の問題は解決されないし、時間が掛かる分を物量で埋めようとすれば、もっと動員数が必要になる。

私が「大変そうだ」と感想を抱いた一番の理由がコレ。

限界の壁をブチ破るには工業面での 技術革新(ブレイクスルー) でも起きない限り、マンパワーでどうにかするしかないのだろうね。

こんな状況になるなら、もっと工業系や科学系の記事を読み込んでおくんだったと思うけど、自分が異世界に転生するなんて” IF(もしも) ”を予想して勉強する人なんて普通いないでしょ。

変わり者の野生児だった私も大概だったけど、異世界転生を予想した勉強をする人が居るとすれば私以上の変わり者だよ。

先行きに予想される頭打ちを打開する方法は手探りして行くしかない。

その頭打ちを打開するために魔法道具の研究をしたいんだけど、とてもじゃないけど研究に取り組める余裕が無い。

世の中、上手く行かないもんだ、なんて、忙殺される零細企業経営者みたいなことを考えている内に、とうとう汗だくのエイラさんがへばって尻餅をついた。