軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㊳

「あと何頭、掛かってるんです?」

「・・・バンダースナッチが1頭と、シカが1頭かな」

「なら、シーヴァを取りに戻る必要は無さそうです」

ニッと笑って猟師さんがマグカップを返してきた。

私たちが最後なのでマグカップの中身をクイッと煽る。

うーん。私はもうポカポカがほぼ無くなってしまっているな。

チラリとエターナさんを見上げれば、目眩でもしているのかグッと奥歯を噛んでこめかみに手を当てている。

フッフッフ。まだまだ伸び代が有りそうだね。

「・・・キツそうなら、次の獲物は血を飲まずに置く?」

「いいえ。一刻も早く強くなりたいので次も飲みます」

倒れられると運ぶ人手が足りなくなるかもと声を掛けてみれば、エターナさんは決死の覚悟をキメたような目で決意表明を返してくる。

きっと、そう言うだろうと思ってたよ。

「・・・そっか。じゃあ行こう」

「はっ」

血抜きが終わった獲物の回収は猟師さんに任せて移動する。

ルナリアは? と、探せば、ひっくり返っている新人さんを取り囲んでいる人垣の中に居て、ピーシーズと一緒に気絶した新人さんを覗き込んでいる。

「負ぶって運ぶしか無いでしょう」

「仕方ないわね! これも訓練よ!」

「「「「「は、はいっ」」」」」

ルナリアが下した判断に、ルナリアとピーシーズの外側から覗き込んでいた新人さんたちが答える。

ああ。気絶した新人さんたちの運搬方法を話し合ってたのか。

「フィオレ。次、どっち?」

「・・・あっち」

声を掛けるまでもなくクルンと私に顔を向けて問うルナリアに、2頭目のバンダースナッチが掛かっている方角を指し示せば、新人さんたちに向けて高く槍を掲げてみせる。

「行くわよ! 倒れている仲間を一人も見捨てないのがウォーレス騎士よ!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

ルナリアの発破に新人さんたちが応える。

うんうん。ルナリアも自分の仕事をしっかりこなしてるね。

指揮官として領民を纏めて引っ張っていくのが総本家当主の役目なのだから、今日の指揮訓練は100点満点だろう。

そのルナリアを守って敵を張り倒すのが私の仕事なんだから、私は私の役目を果たすための技術を磨こう。

私が持っている技術を出来るだけ多く伝えて、私自身も自分の技術をブラッシュアップする。

そうすることでルナリアを、みんなを守れるのだと信じて突き進む。

ピーシーズはルナリアと同じく指揮訓練だけど、ルナリアが全体指揮なのに対してピーシーズが分隊規模の指揮に慣れることを目指しての訓練中だ。

ミセラさんたちはエターナさんよりも先行はしているけど、体内保有魔力量を増やす自身の強化中。

ディディエさんたちも、ずいぶんと逞しくなって、戦闘の専門職ではないけど頑張っている。

3ヶ月ちょっと前の私は自分一人が生き残ることを目的にしていたけど、今は違う。

みんなと一緒に生き残る。

絶対に生き残ってやる。

私の大切な人たちを誰にも奪わせない。

ルナリアと私が先頭に立って次のワナを目指す。

触角ヘビも索敵に引っ掛からないから、新人さんたちは足元とワナの存在にだけ気を付けていれば良い。

あと少し森を歩き慣れたら樹上の警戒も平行して行うように課題を増やすけど、今日のところは歩き方に慣れてくれれば良い。

これも行軍訓練だ。

究極の行軍で言えば、旧日本陸軍の「バターン死の行軍」や「八甲田山」なんかが日本では有名だったけど、そこまで厳しい極限状況を想定した訓練じゃないからね。

この程度の行軍訓練は乗り越えて貰わないと困る。

後列を返り見れば新人さんたちが意識の無い仲間を背負って黙々と歩いている。

人一人を背負っているのに辛そうにしている子が一人も居ないのは、基礎体力がしっかりと身に付いているのか、それとも血を飲んだ効果が早くも出ているのか。

隊列を率いて10分間ほどで、ルナリアが再び声を上げた。

「居たわ! バンダースナッチよ!」

隊列にピリッと緊張が走る。

特に新人さんたちの表情には恐怖心が見て取れる。

40人がチクチクと突っついた後でも反撃してきたバンダースナッチの姿を思い出したのかな?

いや。身体強化魔法の訓練をサボり気味な私の目には獲物の姿はハッキリ見えていないけど、新人さんたちの目には、もうバンダースナッチの姿が見えてるのかも。

どっちにしても、さっきよりは良い傾向かな。

なぜなら、恐怖心は慣れれば乗り越えられる。

緊張感の欠如は慣れによる油断を招くことが有っても、引き締め直さない限りプラスには働かない。

どれだけ数をこなしても獲物が反撃してくる危険は付きまとい続けるのだから、緊張感を失ってはいけない。

どれだけ慣れても、一定以上の緊張感を維持し続けることにも慣れる必要が有るんだよ。