軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㊲

動じていないのはルナリアとノーアとミセラさんたちぐらいかな。

ナーガ川上流に防塁を整備しに行く計画は聞いていたはずなのに、なんでピーシーズが驚くの。

うん? あの話が具体的に出たのって巨大慰霊碑を建てた後の晩餐で、だっけ?

晩餐ってことは、ピーシーズはもう休んでいた時間なのか。

だったら聞いていなくても仕方無いな。

どうせ連れて行くんだし、まあ良いや。

周りの反応を見回したエターナさんが深い溜息を吐いた。

「無茶をされた事情は理解しました。しかし、次回からは私がお側で備えさせていただきます」

「・・・了解。分かった」

反論を許さない気迫に満ちたエターナさんの目力に、素直に頷いておく。

私としては、私だけの実験に巻き込みたくないんだけど、ここで議論するだけ時間の無駄だ。

信念と信念の衝突なんて一朝一夕で円満解決を望めるものじゃないからね。

時間を掛けて相互の信頼を築いた上で妥協点を見出す以外に方法は無いんだよ。

「ダメだ止めろ」とは言わないってことは、エターナさんも、そう思っているのかも。

そう言えばアリアナさんも、“蒼焔”を生み出すまでの実験中に、ずっと傍に居てくれたと思い出した。

面倒見が良いオーリアちゃんもだね。

心配されたり無茶を叱られたりすることは有っても、最後まで見守ってくれていた。

たった2ヶ月ほど前の出来事なのに、随分と懐かしく感じてしまう。

「どうかされましたか?」

「・・・ん? なんで?」

訝しげに問われてエターナさんを見上げる。

「笑っていらっしゃいますので」

「・・・そ、そう?」

おっと。また思い出し笑いが出ちゃったか。

両手でペチペチと自分の頬を張って引き締める。

陰の世界で生きてきた者とキモい思い出し笑いはワンセットだからね。

気を付けなきゃ。ブヒヒ。

「一緒に地獄の一丁目へピクニックに行こうぜ!」と宣告した直後にニヤニヤしていたら、邪悪な笑みに見えてしまいそうだ。

「フィオレ様。その辺で」

「・・・えっ? ああ、うん」

猟師さんの声でエターナさんとの対決は 試合終了(ノーサイド) となった。

バンダースナッチの血抜き作業が開始されていて、さっさと血を飲めと猟師さんが手招きしている。

チラッと私を見たルナリアが率先してスタスタとバンダースナッチに歩み寄っていく。

「早く血を飲んで次へ行くわよ!」

「「「「「は、はいっ」」」」」

新人さんたちが陣形を崩して倒れた獲物へと集まっていく。

それぞれが腰に提げた領軍支給のマグカップを手に列を成し、後ろ脚を吊されたバンダースナッチに取り付いている猟師さんにマグカップを手渡している。

ふう・・・。叱られるかも、とは考えていたけどエターナさんだとは思わなかった。

不意を突かれたことも有って予想外に疲れたな。

列の最後尾について順番を待つ。

私が心中で溜息を吐いている間にも、滴る血を受けたカップを猟師さんから返して貰って口を付けた新人さんが、パタリパタリと倒れて行く。

今さら仲間が倒れたところで採掘場で見慣れたのか誰も慌てない。

倒れる仲間の体を受け止めて、そっと寝かせて雑談に戻っている。

うん。慣れてきたね。

命には関わらないと聞いているのだろうし、みんな落ち着いたものだよ。

この度胸の据わり方は好ましいものだ。

騎士になれば命懸けの場面に直面することなんて、いくらでも有るだろうし、その度に驚いているようでは精神が参ってしまうだろう。

図太いぐらいの性質でないと騎士なんて務まらないはずだ。

「魔力酔い発生率は2割―――、いいえ、3割弱ぐらいですか。少し多いですね」

「・・・バンダースナッチの方がシカよりも強いからね」

問題無さそうに返したもののエターナさんの表情は晴れない。

エターナさんが言いたいのは、「気絶した子たちの回収、どうすんの?」ってことだろう。

でもまあ、エターナさんが心配する通り、本当に少し多いよね。

放って行くわけには行かないから背負って移動するしか無いんだけど、1頭目で30%が脱落したとして2頭目でも30%が脱落すれば、往復して気絶した新人さんたちを回収するしか無くなってしまう。

2頭目で脱落するのは20%以下でないと困る。

猟師さんたちは獲物を担いで回収するから、新人さんたちの回収にまで人手を割いて貰うわけには行かない。

最悪、何人かは血を飲まずに居て貰うしか無いかな。

だからと言って、私に新兵訓練や領民強化計画の手を緩める考えは、これっぽっちも無いから、微調整レベルになるけど。

最悪の最悪では、ピーシーズやミセラさんたちにも新人さんたちの回収を手伝って貰うし、何とかなるんだけどね。

本当の意味での最後の手段としては、私が魔力の手で全員をまとめて運ぶことだって出来るだろう。

でも、仲間同士の団結力を 涵養(かんよう) して欲しいのだから、教導役が簡単に手を貸しては訓練の意味がなくなってしまう。

「・・・状況で判断するしか無いよ」

「そうですね」

新人さん生存率を観察している内に私たちの順番が回ってきて、差し出された猟師さんの手にマグカップを渡す。