軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㊱

「フィオレ様! 全員、終わりました!」

「・・・トドメを刺して!」

「私が!!」

ギリギリと奥歯を噛みしめてバンダースナッチを睨み付けていたエターナさんが、私の指示に応えたときには、もう踏み込んでいて、渾身の力を籠めた刺突をバンダースナッチの首筋に突き込んでいた。

おお~。ディーナさんほどじゃないけど、片手突きなのになかなかのパワーじゃん。

側面から喉を貫通した槍の穂先が反対側へ突き抜けている。

槍で気道を塞がれたバンダースナッチの喉から唸り声が消えている。

睨み合っていたバンダースナッチの目から命の光が消えて、有機物の塊に変化したことを確信して私の両肩からも力が抜けた。

「・・・ふう」

包囲陣のあちこちで緊張が解けた息が漏れる。

確実にトドメが入ったか確認するために猟師さんたちが、崩れ落ちたバンダースナッチに取り付いていく。

「フィオレ様!! ご無事ですか!?」

「・・・うえっ!?」

気を抜いていたところに大声で呼ばれて私の両肩がビクリと跳ねる。

バンダースナッチの絶命を確信したエターナさんが、槍から両手を放して私のところへ素っ飛んできた。

ガッシリと両肩を掴まれて、涙目で動転しているエターナさんにガクガクと揺さぶられる。

「・・・だだだ大丈夫、大丈夫ぶぶぶ!」

「敵の注意を引くにしても、やり過ぎです!!」

「・・・分かった! 分かってるから!」

両手で押し留めて宥めに掛かる。

揺さぶられ過ぎたせいで頭がクラクラして酔いそう。おえっぷ。

真剣に私の身を案じて怒ってくれているエターナさんには、真剣に向き合わないとね。

この程度で動転しているようでは、どこかで心が折れてしまうかも知れない。

吐き気を喉の奥に飲み込んでエターナさんの目を真っ直ぐに見上げる。

「・・・試しておく必要が有ったんだよ」

「必要ですか?」

「・・・私ってね。防御術式をまともに防御術式として使ってこなかったから。実戦で防御術式を使う状況に直面する前に、自分の防御術式がどの程度の攻撃を防げるのかを把握しておく必要が有った」

“魔力の手”とは何か。

そして、どんな経緯で魔力の手が生まれたかを知らないエターナさんには伝わらないかも。

まさか熱々の寸胴鍋を持ち上げたことで確立された技術だとは思うまい。

新人さんたちも首を傾げているし。

私たちの遣り取りに注目が集まっている。

エターナさんの言う通り、やり過ぎでは有っただろうけど、今までに私が防御術式を防御術式として使ったのって、ジアンさんとの立ち会いのときぐらいじゃなかったかな。

もちろん、あのときのジアンさんの打ち込みが本気とは程遠い手加減しまくったものだったことなんて、立ち会った私が一番理解してる。

今までの私の在り方が邪道なのであって、「このぐらいの攻撃は、このぐらいの防御で防げる」というモノサシが私の中に有ると無いとでは、私自身の生存率が大きく変わるからね。

私にはルナリアを守るという絶対に譲れない最優先の役目が有る。

サクッと殺られちゃうわけには行かないんだよ。

私の考え方では、追い詰められた実際の戦闘でギャンブルするよりもマシ。

同じギャンブルなら勝てる確率が高い場面で試しておくべきだった。

じっと私の言い分を聞いていてくれていたエターナさんは、まだ収まらない。

「だからと言って、魔獣の攻撃をわざと受けるなんて危険すぎます!」

「・・・でも、基礎を素っ飛ばしている現状を正当化できるものじゃないよね? 新人さんたちの前でも示しが付かないし」

無関係だと思っていただろうところへ自分たちのことが出てきて、新人さんたちが一斉に身じろぎする。

「それはそうですが・・・」

「・・・それに、森の奥へ踏み込むには、魔獣の攻撃を問題なく防げると私自身も証明しておく必要が有ったんだよ。そのためには、魔獣の攻撃を正面だけに限定できる今の状況は丁度良かったから」

エターナさんの指摘はごもっともなんだけど、今後の計画を思えば私も退けない。

私の反論を反芻した様子のエターナさんが首を傾げる。

「森の奥へ、ですか?」

「・・・ナーガ川上流の渡河地点補強計画を前倒しするから」

「ナーガ川の上流へ・・・?」

私の宣言にエターナさんが息を呑み、新人さんたちが静まり返る。

あれ? 新人さんたちは兎も角、エターナさんも知らなかったっけ?

まあ、計画を聞いて居ようが聞いて居なかろうが連れて行くんだけど。

「・・・実地訓練だよ。当然だけど魔獣も出るし、結構、重要な領軍の任務になるよ」

「そ、そうなのですね」

「・・・だから、みんなも頑張って自分を鍛えてね?」

ニコッと笑いつつ言外に「鍛えておかないと死ぬよ?」と含ませれば、ピーシーズまで含めて場の空気が凍り付いた。