軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㉜

私たちも森を歩き慣れているとはいえ、成人男性と幼女では歩幅が違うからね。

同じペースで歩いても猟師さんたちの方が足は速いんだよ。

バンダースナッチの動きを止める下準備のために先行した猟師さんたちの後を追って、森歩きに慣れていない少年少女を引き連れて進む。

数分間ほど歩くと獲物を包囲して手桶にシーヴァ汁を絞っている猟師さんたちに追い付いた。

「まあまあ大きいわね」

「・・・でもまあ、しっかり括れているから、攻撃範囲を見誤らなければ大丈夫」

包囲の内側で唸り声を上げて威嚇しているのは後ろ脚を括られた牡の個体だった。

難しい顔でルナリアは言うけど、 足根関節(そくこんかんせつ) ―――、足首よりも上で括れているから簡単にワナから抜けることは無いと思う。

準備作業を終えつつ有る猟師さんたちの後ろで顔色を悪くしている新人さんたちに指示を出す。

「・・・安全な距離を保って獲物を包囲!!」

「「「「「は、はい!!」」」」」

私の指示に教導役のピーシーズが率先して動き、返事を返した新人の少年少女たちがピーシーズに倣う。

エターナさんは周りの動きに合わせながらも全体の動きを観察しているようだ。

ルナリアと私は監督ポジションで前には出ない。

私たちの傍にはミセラさんたちが残って護衛に当たる。

もっとも、私はアクティブソナー以外の自由になる魔力の手を全部出して、獲物がワナから抜けたりの万が一が起こったときにも負傷者を出さないように備えておく。

「そこ!! もう少し下がって!!」

「は、はいっ!」

前に出すぎた子にはピーシーズが細かく指示を出し、少年少女たちは見よう見まねで対人模擬戦との違いを学んでいく。

獲物の体格の大きさは攻撃範囲の広さに直結する。

後ろ脚を括られている場合には、攻撃に使うことが多い前脚が自由だから、特にね。

包囲が整い始めた状況を見計らって猟師さんが許可を取りに来る。

ワナ猟を広めた最初期から参加している、見知った猟師さんの一人だ。

「試しに、投げ縄無しでやってみたいんですが、構わないですかい?」

「・・・ふーん? もしかして、人数的なものかな?」

「へい。もう少し減らせないものかと」

投げ縄の省略かあ・・・。

現状、猟師さんたちは10人以上で1頭のバンダースナッチの処理に当たっている。

投げ縄が3~4人、水鉄砲が3~4人、槍が5人以上だ。

安全マージンを十分に取っても、4~5人も居れば処理できるシカの回収作業に較べて、2倍以上の人数だものね。

人数を減らせれば複数の獲物を同時に処理できるのだから、気持ちは分からなくは無いな。

「・・・確かに試行錯誤は必要かなあ」

私も日常業務の効率化を否定する考えはない。

安全性を引き下げるリスクを取ることには 躊躇(ためら) いが有るけど、火力で押し切るのも一つの方法では有るのだろう。

ブッ掛けで獲物の動きが止まっている間に致命傷を負わせてしまえばイケなくもない?

「では?」

「・・・分かった。でも、十分に気を付けてね」

今日のところは、私がフォーローすれば良いか。

必要人数の下限値を探るのも必要な作業だ。

「へい。始めても?」

「・・・うん。お願い」

「へい」

頷き返すと、猟師さんがニヤリと口角を引き上げる。

クルリと背を向けた猟師さんが自分のポジションに戻りながら腕を高く振り上げた。

「始めろ!!」

「「「「「おう!!」」」」」

勇ましく指示に応えて、水鉄砲を手にした猟師さんたちが包囲の最前列に押し出してくる。

たっぷりとタマネギ汁やお酢を詰め込んだ水鉄砲が狙うのは、後ろ脚をククリに括られているバンダースナッチの目、鼻、口。

危機を察してバンダースナッチが激しく威嚇してくるけど、もう遅い。

阿吽(あうん) の呼吸で猟師さんたちが一斉に水鉄砲のピストンを押し込む。

「キャウン! キャウン! キャウン!」

プシャ―――ッ!! と、あちこちから飛んだ刺激物が獲物の頭部に集中して、切羽詰まった悲鳴が上がる。

興奮して牙を剥いていたバンダースナッチも、体内で分解されて毒素に変化するタマネギ汁と目鼻に染みるお酢の刺激に、前脚で顔を庇って蹲る。

「構え―――ッ!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

すかさずピーシーズが飛ばした号令に少年少女たちが手にした槍を構える。

哀れな悲鳴を上げてのたうち回っていても、相手は強力で獰猛な魔獣だ。

無いとは思うけど、獲物に情けを掛ければ自分たちが危険になる。

「順に突いていきなさい!」

「狙いは、首、腹!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

ピーシーズの指示に従って包囲の輪がジリッと狭まる。