軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㉛

アクティブソナーと同時に大きく広げた魔力の手をハエを追い払うように振って、樹上に潜んでいるかも知れない触角ヘビも探しているから、歩きながらも私はそこそこ忙しい。

ルナリアと私のすぐ後ろにはピーシーズとミセラさんたちとエターナさんが追随していて、森歩きにも慣れてきたディディエさんたちも遅れずに付いて来ている。

戦場での実戦経験があるエターナさんも緊張気味だけど、新人さんたちほどガチガチになってはいないかな。

2日間でピーシーズやミセラさんたちと馴染むのだから、頑固な部分が有るわりに順応性が高いみたいだし、エターナさんはエクラーダ組の指揮官に据えて問題ないだろう。

エターナさんの副官を数人ピックアップして、その下にエクラーダ部隊を作る?

本音ではピーシス領民と混ぜて一体化させたいんだけど、しばらくはウォーレス領に馴染ませることを優先するしか無いよね。

新領地では旧体制関係者の没収資産回収が終わって、新たな管轄分けも進んでいるっぽいし、エクラーダ民の居住地の分配もマリッドさんに確認しなきゃ。

新領民が自活していけるように農地開拓も急がなきゃいけないし、やることだらけだよ。

おっと。注意喚起しておかなきゃ。

「・・・そこら中にワナが有るから、前の人が踏んだ場所以外は踏まないように!」

「「「「「はっ!」」」」」

注意を飛ばすと緊張に強張った顔の少年少女たちから素直に返事が返ってくる。

慣れれば、「有る」と分かっていればワナを見分けられるようになるんだけど、そうなるには経験が必要になるからね。

毎日、ワナを見て、仕掛け直して、森を歩き慣れれば分かるようになってくるよ。

前を歩く人が踏んだ足跡だけを踏んで歩くというのも、距離が長くなれば疲れるものなんだけど、新人さんたちは足元に集中して黙々と頑張っている。

足元ばかりに集中していて周囲への警戒がお留守になってるけど、これもまた慣れれば改善するものだ。

しばらく進むと、勇ましく先頭を進んでいたルナリアが声を上げた。

「居たわ! バンダースナッチよ!」

「「「「「―――ッ!!」」」」」

ハッと上げた新人さんたちの顔に、それまで以上の緊張が走る。

まあ、緊張感がないよりはマシかなあ。

粛々と戦闘態勢に入ったピーシーズとミセラさんたちが剣の柄に手を掛け、実戦経験のあるエターナさんも緊張の色が見えるものの静かに戦闘態勢を整えている。

身体強化魔法で視力を引き上げているルナリアが確認した、1キロメートルほども遠くのワナに掛かったバンダースナッチは、私の視力ではまだ見えないからね。

私の視力でも見える隊列の後続をチラチラと返り見て、みんなの様子を観察する。

「・・・へぇ。さすが実戦経験者」

エターナさんもバンダースナッチ狩りは初体験だけど、必要以上の周囲警戒を自分ですることをせずにいる。

あれって、勝手が分からないからかな?

目配りや足運びの端々に、バンダースナッチとの交戦経験があるピーシーズやミセラさんたちの動きに合わせて動こうとする意志が見て取れる。

無用なプライドを表に出さず、経験者に任せるところは任せて自分の仕事に集中しようとする潔い姿勢に好感が持てる。

これもエターナさん個人が持つ順応力の高さなのだろう。

”魔の森”という未知のフィールドに立つのは新人さんたちも同じなんだから、エターナさんの臨機応変さに学べば良いのにね。

たぶん、下地の有無を差し置いても、新人さんたちはエターナさんに、あっという間に差を付けられるのだろう。

まあ良いや。

遠回りになっても経験を積み重ねれば、新人さんたちも一人前に育ってくれるはずだ。

騎士の卵たちが浮き足だってオタオタしている間にも、サクサクと落ち葉を踏む複数の足音が後方から近付いてくる。

大の大人にしては小さな足音は、猟師さんたち特有の特徴的な歩き方のせいだ。

踵から地面を踏んでドカドカ歩くのではなく、蹴り足に重心を残したまま、前へ踏み出した足の裏の外側から内側へ転がすように、そっと地面に置いて枯れ葉や小枝が大きな音を立てないように歩くんだよ。

この歩き方は、地球の陸戦部隊が使う軍隊式歩行術にも似たような歩き方が有って、確か、” 狐歩き(フォックスウォーク) ”って言うんだっけな。

古くは インディアン(ネイティブアメリカン) が使った狩猟技術だとか何とか。

本当かって? ネット上で聞き囓ったうろ覚えなんだから、本当かどうかなんて知らんがな。

アクティブソナーで気付いては居たけど足音の発生源に目を向ければ、手桶と水鉄砲を手にした猟師さんたちだ。

「前に出ますぜ」

「・・・うん。接近しすぎないようにね」

「へい」

早くもバンダースナッチの回収作業を日常業務に昇華しつつ有る猟師さんたちが、ルナリアと私も追い越して先行していく。