作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ㉓
私が“蒼焔”の「核」をポロポロと落としまくっていた頃と同じだと予測が付くだけに、がんばれー、としか言えない。
繰り返し使い続けていれば慣れてくるよ。
さて、ネイアさんたち3人の後塵を拝しているメリーナさんとアイシアちゃんは、相変わらず苦労しているみたいだから、ちょっとだけやり方を変えてみようかな。
「・・・二人とも、小枝の場所に防御術式を発動することは出来てるよね?」
「出来ていると思います」
メリーナさんが答えて、アイシアちゃんが同意を示してコクコクと頷いている。
「・・・ふむ。ちょっと確かめてみるよ?」
「はい」
魔力の手を新たに1本出して小枝の方へ伸ばすと、確かに見えない何かに阻まれて小枝に干渉できない。
ペタペタと触れてみると、私の魔力とは質の違う魔力が2種類ある。
「・・・ちゃんと防御術式は発動できてるね」
「良かった・・・」
ホッと胸を撫で下ろしたのはアイシアちゃんだ。
元々、アイシアちゃんは脳筋寄りタイプで、魔力の体外放出自体があまり得意じゃなかったからね。
でも、今、上手く行かないのは全く別次元の問題で、得手不得手とは何の関係もない。
なら、どうするか。
肩の高さで真っ直ぐに前へ腕を伸ばしてみせる。
「・・・こう、自分の手元に防御術式を発動し直してみてくれる?」
「「はい」」
頷いた2人が腕を伸ばす。
魔力が動いた気配が感じ取れたから、自分の手の先に魔法の発動は出来たはずだ。
「・・・それ、動かせるよね?」
「えっ?」
首を傾げたメリーナさんに対して、アイシアちゃんは即座に腕を振る。
「ハッ! 動かせます!」
「・・・だよね。ほら、メリーナさんも」
「は、はいっ」
催促すれば、メリーナさんも腕を動かす。
「う、動かせます!」
「・・・なるほど。なるほど」
アイシアちゃんと同じように、盾に見立てた手元での防御術式発動はメリーナさんも問題なく出来ると。
だとすれば、2人とも手元を離れると距離感が掴めなくなるんじゃないだろうか。
じっと動かない 標的(ターゲット) なら何とか把握できても、動かそうとすると制御が途切れて魔法が消滅する?
つまり、魔力制御の問題だと推測する。
「・・・じゃあ、少しずつ防御術式の発動場所を手元から離していこうか」
「「少しずつ離す、ですか?」」
「・・・うん。10センチメテルで成功したら、20センチメテルに。20センチメテルで成功したら、30センチメテルに。成功したときの感覚を忘れない内に、少しずつ離していくんだよ」
かつて、ニンジャじゃない方の忍者は、麻を植えて、毎日、麻を跳び越える修行をしたという。ニンニン。
自分の目で見たわけじゃないから真偽のほどは知らんけど。
麻という植物は意外に大きく育つ草で、最大で3メートル近くまで背丈が伸びるものらしい。
「麻」と言われると悪しきお薬的な草をイメージしやすい人も居るだろうけど、縄文時代の頃から布地の原料として用いられてきた最古レベルの人類の友なんだよ。
私がこっちの世界で目覚めたときに着ていた服―――、というか、 襤褸布(ぼろぬの) も麻製だったね。
そして、この麻という植物は生長が結構速いらしくて、毎日2~3センチメートルぐらい背が伸びるんだっけな。
芽を出してから4ヶ月間も掛からずに全高3メートル近くまで育つとなれば、その早さは、かなりのものだよ。
だって、1ヶ月間で90センチメートル、2ヶ月間で180センチメートルまで伸びるってことだもの。
簡単に跳び越えられるのなんて最初の半月ぐらいの間だけだって。
幸いなことに、今、メリーナさんとアイシアちゃんが挑もうとしているのは 魔力(マジカル) 的なもので、 肉体(フィジカル) 的なものじゃない。
コツさえ掴めれば一気に距離を伸ばせる可能性が非常に高いと私は確信している。
忍者に出来て私たちに出来ない道理は無いんだよ。
反復練習で自分の生存率を引き上げる切り札が覚えられるなら、覚えない手は無い。
私はピーシーズをただの一人だって死なせるつもりは無いから、絶対に覚えて貰うよ。