作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ⑳
「・・・じゃあ、使う魔石を一つだけにして、魔石の魔力で防御術式を使ってみようか」
「防御術式をですか?」
「・・・うん」
首を傾げたナンナちゃんに頷いて返す。
わざわざ魔石を通して練習させるのは、「持続性」を重視しているから。
「体感的な感性」に優れた子たちだからこそ、おかしな刷り込みが起こった後に矯正するよりも、最初から「そういうものだ」と覚えさせた方が二度手間を踏まずに済む。
理論から入る子なら自前の魔力で体得してから矯正しても良いけど、騎士を志す脳筋村の住人に遠回りは必要無い。
「・・・例えばだけど、防御術式で敵を攻撃すると、どうなると思う?」
「フィオレ様。防御術式で攻撃は出来ないのでは?」
困惑したように眉尻を下げたのはアイシアちゃんだ。
「・・・どうして?」
「だって、防御術式は動きませんし」
アイシアちゃんの認識に、オーリアちゃんとナンナちゃんもコクコクと頷いて同意する。
「・・・動かせるよ? みんな、防御術式を使うときに、“ここに頑丈な壁が有る”とか想像してない?」
「壁・・・。そうかも知れません」
ジアンさんと同じだな。
「自分の身を隠しやすい堅固な障害物」として「壁」がイメージしやすいんだろうね。
でもまあ、「イメージしやすい」だけで、絶対的なものじゃない。
「・・・それ、盾じゃダメなの?」
「あっ。そっか! そうですね!」
「「「「おお~」」」」
パッと表情を明るくしたアイシアちゃんの納得に同意して、他の4人がペチペチと拍手する。
んん? もう少しイメージを受け入れるのに抵抗があるかと思ってたけど、ずいぶんと、すんなり納得したなあ。
具体的にイメージ出来るものを見た経験があるんだろうか?
何だろう? 盾? 防御?
あっ! さては、みんな私の知らない間に、エターナさんたちエクラーダ騎士の戦い方を見せて貰ったな?
私もまだ見せて貰っていないのに、流行から置いて行かれた気分になるよ。
私は世間様の流行になんて、これっぽっちも興味が無いけどね。
お爺様たちが賞賛するほどのエクラーダ式の防御技術には、私もメッチャ興味が有る。
いつ見せて貰ったんだろう?
タイミングとしては、城壁移動の後にルナリアと私が昼寝していた間のことかな?
護衛対象が寝てしまって8時間近くもヒマになって、その後、エターナさんがメイド服姿になっていて、みんなとの距離感が一気に近くなっていた状況を考えれば、あのタイミングしか無かったはずだ。
きっとお母様の気遣いで模擬戦大会にでもなったんじゃないかな。
私も見たかったよ!
ぐぬぬ・・・。ここは我慢だ。
エターナさんに見せて貰う機会はこれから何度だって有るし、エターナさんが王都へ出張中なら、エウリさんかエングさんに見せて貰えば良いんだし。
エウリさんとエングさんとは接点を持ちにくいし、喜んで”チョットいいトコ”を見せてくれるだろう。
とまれ、魔石の魔力を使った防御術式の発動にも、程なく全員が成功した。
だったら、魔力の手の仕上げだ。
トコトコと5本の小枝を拾いに行き、建設工事の邪魔にならない地面に1メートル間隔で並べてくる。
魔力の手は目に見えないから、人数分の標的を置いておかないと誰がどの標的を狙ってるか判別できないからね。
みんなの下へ戻って、置いてきた小枝を指す。
「・・・防御術式の範囲を小さく絞って、あの小枝を効果範囲内に入れて発動してみて」
「小枝を効果範囲内に・・・。それが?」
期待の籠もったネイアさんの目を見返して頷く。
「・・・そ。最終段階、魔力の手だよ」
「「「「「おお~!!」」」」」
いよいよか! って感じで全員が目を輝かせている。
みんな、やってみたかったんだね。
魔力の手を身に付けてしまえば、何らかの事情で武器を取り上げられるしても状況に陥ったとしても不利に陥らずに済む。
具体的に言えば、王城の王家居住区域内でも、だ。
万一、不覚を取って捕縛されたとしても、魔法が使える状態でさえ有れば、縛り上げているロープを引き千切って脱出できるだろう。
魔力の手を使い慣れた私の体感で言えば、魔法を使える状況でさえ有れば、檻に閉じ込められても鉄格子を破壊するのなんて簡単だと思う。
喉元に刃物を突き付けられたとしても、地面ごと固定してやれば刃物の意味を 為(な) さなくなる。
だからこそ、王都駐留部隊を指揮する立場のみんなには、絶対に魔力の手を習得させておきたい。
そうすることで、みんなの安全性が引き上げられ、テレサたちの安全性も引き上がる。