軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ⑲

うーむ。恐るべし野生の動物的本能。

メリーナさんも脳筋村の脳筋サラブレッドなんだから、不思議は無いのか?

まあ良っか。

身に付けた技術の原理を改めて説明されて仕組みを理解することなんて、家電製品ではよく有ることだし。

適当に弄り回して肌感覚で家電製品の使い方を覚えるけど、何かのトラブルで困るまで技術的な仕組みを理解する気がない"取扱説明書を読まない派”という宗派の、急進的過激派の人たちが居るんだよ。

私も、どちらかと言えば、そっち寄りだし。

メリーナさんも、本能的おっぱいで技術を身に付けている可能性が―――、って、今はメリーナさんがバブみ過激派かどうかの話は横に置いておこう。

気を取り直して魔石の魔力の説明を続ける。

「・・・そうだよ。今までの学者さんたちは、魔石の魔力を“自分のものにしようとした”から干渉できなくて、“他者の魔力には干渉できない”と決め付けちゃったんだと思う」

「”魔石の魔力は自分の魔力だと思え”と教えていらっしゃいませんでしたか?」

ネイアさんの質問に頷いて返す。

よく聞いてたね。

真面目なネイアさんらしいなあ。

きっと聞いたことを自分も実践してみようとコツコツ頑張ってたのだろうし、どこまで出来るようになっているか楽しみだ。

もっと理解を深めてくれれば、色々な場面で戦力に数えられるようになるはず。

「・・・ジアンさんに教えていたときのことだね。その通りなんだけど、それには前提条件があるんだよ」

「前提条件ですか?」

ネイアさんが首を傾げる。

お復習いすることで、もう一段、理解を深めようか。

「・・・魔石の魔力ってね、魔獣が自分の体内魔力として蓄えたものなんだよ。それは分かるよね?」

「魔獣の体内魔力・・・。その通りでしょうね」

ここまでは、こっちの世界で常識とされている一般論。

真剣な表情で聞いている一人ひとりの顔を見回す。

「・・・その上で、よく考えてみて欲しいんだけど、私たちはね、魔獣の魔力を“貸して貰ってる”んだよ。決して“自分のものにしようとしている”わけじゃない」

「あっ。なるほど。だから魔石の魔力に自分の魔力を似せるんですね」

納得の色を見せたのはオーリアちゃんだ。

戦災孤児という育った環境的に協調性が高いオーリアちゃんには、「貸して貰う」という表現がスッと受け入れられるものだったようだ。

貸して貰う側が、所有者側の都合に合わせるのは当たり前のことだからね。

魔力が自分の意志を持っているとまでは言わないけど、固有の「色」のようなものは有るのだろう。

私は、この「色」のことを、「質」と言い表してきた。

「他者の魔力に干渉できない」と定義した昔の学者さんたちは、「色」の違いを無視して―――、いや。「認識しようとせず」、一方的に、強引に「支配しようとした」んだと思う。

だから彼らは魔石の魔力に干渉できなかった。

「・・・そういうこと。”質”を似せることで魔石を騙しているとも言えるかな」

「「「「「ほぉーう」」」」」

ピーシーズの感性に、「騙す」という表現は、しっくりとくるものだったらしい。

もっと言えば、私は「魔石」ではなく「魔石が内包している魔力」を騙しているのだろう。

本来の持ち主が持っていた固有の魔力に、ラジオのチャンネルを合わせるように自分の魔力を 調律(チューニング) して、個々の境界線を曖昧にしているんだよ。

何度も何度も調律を繰り返していれば、魔石の魔力に触れた瞬間、体感的に調律できるようになってくる。

寿司職人が お米(シャリ) を手に取った瞬間、お米の一粒単位で分量が多いか少ないかを判別できるのと同じで、慣れが体感的な調律精度を正確にし、調律速度も速くなる。

お母様が、よく「慣れだ。慣れ」と言っていた意味が、本当によく分かる。

「積み重ねた鍛錬は自分を裏切らない」と言っていたのも、本当にその通りだった。

「・・・それでね。魔石の魔力を掌握できたなら、1個目の魔石の魔力の“質”を感じ取れたように、2個目の魔石も“質”の違いを感じ取ることが出来るから、先ず、それを頑張ってくれるかな」

「右手の魔石を通して左手の魔石を感じ取る、という感じでいいですか?」

全員の顔に明確な理解の色が浮かんでいる。

ヨシヨシ。みんな素直で良い子たちだからね。

メリーナさんからの確認に頷く。

「・・・そそ。それが出来たら、次の段階へ進むよ」

「「「「「はいっ」」」」」

目標を見定めた元気な返事が返ってくる。

具体的に自分のすることが理解できれば、脳筋気質のみんなは一気に集中力が引き上がるんだよね。

しかも、魔石への干渉はみんなが得意な「体感的な感性」がものを言う。

実際、私の予想通り、全員がアクティブソナーによる「探知」に成功するまで大した時間は掛からなかった。

ただし、探知範囲の広さは魔力制御の精度に左右されるから、探知範囲を広げるためには個々でコツコツと訓練を続けて貰うしかない。