軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ⑱

キャットウォークの真下に停められた荷馬車の荷台で、猟師さんたちが直接シカを受け取るんだけどね。

当初から比べればかなり積み込み作業が効率化されてるんだけど、ここ数日の平均だと60~70頭は出荷するはずだから、作業完了まで2時間以上も掛かるのか。

第2次王都駐留部隊を送り出すまで2週間も日数が無いのに、さすがに2時間も無駄に出来ないな。

「・・・アイシアちゃん。ピーシーズの4人を呼んできてくれる?」

「上は良いんですか?」

「・・・ミセラさんたちに、監督をお願い、って伝えて」

「はい」

じっとしているよりも体を動かしている方が好きなアイシアちゃんが、弾むような足取りでキャットウォークへ上がって行く。

何の用事でみんなを呼ぶのか訊かずに呼びに行っちゃうところが、脳筋風味が強いアイシアちゃんらしいよね。

本当なら、ピーシーズもミセラさんたちも一纏めに教えられれば良いんだけど、ミセラさんたちはウォーレス領に残るから、教える時間は一番取れるし悪いけど後回しだ。

エターナさんも含めて、まだミセラさんたちは血を飲んで体内保有魔力量を増やせる段階だし。

翻ってピーシーズは、といえば、風ジェットカッターの練習で伐採作業をしたいと要望が有ったぐらいなのだから、さっさと魔力の手を覚えて貰って養成施設予定地の伐採作業に着手しよう。

リニア魔法は・・・、欠陥の改善方法を思い付くまで保留かな。

最低でも魔力の手とアクティブソナーだけは今週中に覚えて貰わないと、私が納得して王都へ送り出せないんだよ。

まあ、ネイアさんとオーリアちゃんは器用だから、エターナさんと併せて3人の派遣メンバーは確保できそうだけどね。

予定人数に満たないと、どこかで別の誰かの負担が大きくなるし、負担の偏りは、きっと持続性を危うくする。

出来るだけ負荷は均一に、私はみんなが大事だから誰にも脱落して欲しくない。

リフトの工事は、と、視線を遣れば、まだ縄張り中か。

使いやすい位置を厳密に決めるつもりのようで、崖の上下で何やら情報交換しながら作業を進めて居るみたい。

あの様子だと、私の出番はもう少し後っぽいね。

ピーシーズを待っている間もヒマだから、にゅーっと伸ばした魔力の手を崖面にブスッと突き刺して魔力を広げ、崖上方面へ向けてアクティブソナーを発動してみる。

「・・・掛かってるなあ」

1キロメートルも離れていない辺りに、2つ―――、いや、3つの魔力反応が感じ取れる。

2つは反応が強めで、1つは他の2つよりも反応が弱め。

弱めな1つの方が馴染みの有る反応ってことは、これって1つの方がシカで、強めの2つがバンダースナッチの反応だろうか。

こうして較べてみると、バンダースナッチの方がシカよりも強い魔獣なのだということが、魔力の強さで判別できる。

シカの魔力の強さを1シカとすれば、バンダースナッチの魔力の強さは1.5シカぐらいかな?

肌感覚だけど、1.5よりももうちょっとだけ強いかも。

バンダースナッチは群れでの戦闘に強みが有るわけだけど、個体で見れば、「強い」と言っても、そこまで大きな差は無さそう?

血を飲むのは個体別だからなあ。

個体別の強さに大きな差が無いのなら、またポカポカが無くなってくるのも時間の問題だろうか。

今すぐに、って分けじゃ無いけど、さらなる強さを求めるなら、もっと強い魔獣が棲息している地域まで遠征しなきゃならなくなる未来も想定しておく必要が有るかなあ。

いや。難しいか。

お母様を誘えば一緒に来てくれる可能性は高いけど、お爺様たちとお婆様たちを説得するロジックと大義名分が必要になるよね。

そんなことを考えながら工兵さんたちの作業風景をポケーッと眺めていたら、パタパタと複数の足音が聞こえてきた。

駆けつけたピーシーズを代表してネイアさんが声を掛けてくる。

「フィオレ様。お呼びですか?」

「・・・うん。上はまだ、しばらく掛かりそうだから、今のうちに、みんなに魔力の手を教えようかなって」

「「「「「はいっ」」」」」

揃って嬉しそうに答えたピーシーズと資材を積み上げてある一角で車座になる。

「・・・みんな、魔石は持ってるよね? 魔石を両手にそれぞれ一つずつ持ってみて」

「準備出来ました」

それぞれに小物入れを 弄(まさぐ) って魔石を取り出したことを確認したメリーナさんの報告に頷いて返す。

さて、ルナリアに教えたときのように理屈から入ってみようかな。

ゴリ押しで行かないと覚えられないタイプの子は、後で個別に刷り込み方を考えよう。

「・・・ここで、お 復習(さら) いなんだけど、みんな、魔石の魔力を使うときに、自分の体内魔力を放出するように魔石の魔力を放出して使ってるんだよ」

「同じなんですね・・・」

およ。「分かってるよね?」って意味で投げ掛けた確認に、メリーナさんが手のひらの魔石に目を落としている。

風ジェットカッターを一番に覚えたメリーナさんが、ロジックをちゃんと理解できていないとは思っていなかった。

魔石の使い方も早々に覚えていたはずなんだけど、思っていた以上にメリーナさんも感覚的なのかも。