軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ⑰

ほんと、びっくりしたよ。

お母様に指摘されて初めて、そう言えば、いつの間にかお濠が無くなっていたと気付かされたんだもの。

だって、外門前の跳ね上げ橋はちゃんと有ったし、その向こうのお濠まで気付かないよね? なんて言い訳は無理が有るだろうなあ。

ルナリアもピーシーズもミセラさんたちも、なんならノーアも、ちゃんと気付いて居たらしくて、みんなと同じように毎日通り掛かっている私が気付いて居なかった事実に驚かれた。

お濠のように大きなものが無くなっていることに気付かないなんて、私の観察力はどうなってるんだと私も驚いた。

言い訳にならないけど、慰霊碑だとか移住民だとか、ここのところ他のことばかり考えてたからなあ。

本当に私は何かに気を取られると他のことがお留守になるのだと、また証明されてしまった。

ともあれ、そんなわけでお濠を復活させなきゃいけない工兵部隊の兵士さんたちは、めっちゃ忙しい。

お濠を掘り返した分の土をナーガ川河畔へ運んで防衛用の土塁を延長するそうだから、忙しくないわけがない。

その忙しさの大半は私の思い付きが原因なわけで、私は工兵部隊の兵士さんたちに大変申し訳ない気持ちを持っている。

「・・・柱を立てるの手伝おうか?」

「良いんですか?」

兵士さんの目は門へと向いていて、門前で続々と荷馬車から降りてくる若者たちを見ている。

私も釣られて目を向ければ、ミセラさんが警備の兵士さんに馬だけを荷馬車から外して採掘場内で保護するようにお願いしているようだ。

んん? ああ。アッチの面倒見なくて良いの? ってことかな。

城壁の件でもルナリアと私は作業を手伝ったし、気を使わせちゃってるみたいだなあ。

ククリ罠教室では待ってるだけで飽きたっぽいルナリアが、ツアー添乗員みたいに少年少女を引き連れてキャットウォークへ上っていく。

ルナリアみんなを引き連れてが行くなら、アイシアちゃんには少し休憩させてあげようかな。

目が合ったアイシアちゃんをチョイチョイと手招いておく。

アイシアちゃんが駆け寄ってくるのを見届けて、兵士さんたちに視線を戻す。

「・・・出荷作業は、みんなに任せるつもりだったから」

「主構造の柱を立てていただけるだけでも作業が一気に捗ります!」

私に手伝わせても問題無さそうだと納得したらしい兵士さんたちが、パッと表情を明るくする。

もちろん何かの魔法は使うのだろうけど、長さが30メートル近く有る巨木を人力で4本も直立させるとなると大変だろうし、工事を早く終わらせられれば他の現場も楽になるのだろう。

ただでさえ懲りないお隣さんがゴソゴソやってそうな情報が入ってきていることだし、私としても工兵部隊の負担は減らしておきたい。

それ以前に、馬用リフトの工事は私が言い出しっぺだしね。

自分の尻拭いを自分でするだけだよ。

猟師さんたちの回収作業が楽になれば、崖上に狩猟エリアを広げやすくなる。

崖下でのリソースの上限が見えてきている以上、ほぼ手付かずのブルーオーシャンを目指すのは海賊王だって同じだろう。

「・・・じゃあ、必要なときは呼んでくれるかな」

「下準備を進めます!」

工兵部隊の兵士さんたちと別れてキャットウォークを見上げる。

早速、投げ縄を投げ始めてるね。

安全に動きを止められさえすれば危険度は低いから、このまま任せておいて大丈夫だろう。

一人ずつ順番に交代すれば1班で10頭分の血を飲める計算になるけど、たぶん、そこまで保たないんじゃないかな。

魔力酔いでひっくり返る子が多いんじゃないかと私は予想している。

そのために荷馬車で採掘場に来たわけだしね。

呼ばれたのは良いけど私が何も指示を出さないものだから、アイシアちゃんが不安そうな顔をしている。

「あの。何か有りましたか?」

「・・・別に何もないよ。ただ、アイシアちゃん、さっきは休憩できなかったよね。ルナリアが教えたそうだから、今はルナリアに任せて少し休憩してると良いよ」

「はい。ありがとうございます」

パッと表情を明るくしたアイシアちゃんが肩の力を抜く。

とは言ったものの、ルナリアが引率して、教導役のピーシーズやミセラさんたちを含めた90人がキャットウォークに上ってるけど大丈夫かな?

ギュウギュウとまでは言わないけど、こうして下から見ているだけでも、かなりの人口密度だと思う。

結構ガッチリと作られているとは思うんだけど、過積載で崩壊したりしないよね?

私がこうやって余裕の有る状態で見守っていれば、崩壊しても魔力の手でみんなを受け止められると思うけど、そもそも、万一が有っては困る。

事故が有ったという事実だけで施設そのものの安全性に疑問符が付いて、一度ついた疑問符を払拭するのは簡単なことでは無い。

今後、カレリーヌ様たちが来たときのことも有るから不安がないように点検と補強をお願いしておこう。

「・・・うーん。ヒマだなあ」

「そうですね」

アイシアちゃんもヒマかあ。

出荷作業は順調に進んでいるようで、8班も有ると、2~3分間に1頭ほどのペースで吊されたシカがキャットウォークから下ろされてくる。