作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ⑮
側近待機部屋で投擲術やら何やらをピーシーズがノーアに仕込んでいたことも、王様の部屋で聞いたしね。
つまり、そういうことだよ。
私は王宮を信用していない。
向こうも私たちを信用していないのだから、お互い様でしょ。
いや。信用うんぬんではなく私たちの弱味を握ろうとしていた可能性も有るのか。
誰の命令で私たちを覗き見―――、監視かな? していたのかにもよるけど、王様の指示ではないと思うんだよね。
ウォーレス家は圧倒的に王家の利益をもたらしているし、王様は護衛の騎士様たちを執務室から追い出してまで私たちとの話し合いの場を設けている。
そんな私たちを監視したがるのが王家か王宮貴族かを考えれば、追い出された側じゃないかな。
「ええ・・・? じゃあ、私たち覗き見されてたんですか?」
「・・・ずっとじゃないとは思うけど、そう思った方が良いよ。だから、王家にも秘密にしておきたいことは、ウォーレス家の王都邸でするようにね」
「「「「はい」」」」
何やら凹んでいるメリーナさんの空気が感染したように、他の3人も空気が沈んでいる。
覗き見されて気持ちいい人なんて、よほどの特殊な性癖の人しか居ないとは思うけど、メリーナさんは王宮に幻想でも持っていたんだろうか?
リアルプリンセスのテレサが王宮に幻想を抱いていないのが明らかなのに、油断しちゃダメでしょ。
まあ良いや。
後ろ暗いところが無いとはいえ、私だって油断していなかったのかと言えばユルユルだっただろうし。
みんなにはアクティブソナーまで習得させるつもりだから、魔力で人の気配に気付けるようになれば不安も小さくなるだろう。
「・・・そういうわけで、みんなにも“魔力の手”を覚えて貰うからね?」
「私たちにまで教えるのですか?」
ネイアさんが咎めるような顔をする。
テレサやルナリアや私の身を守る武器なのに、って感じだろうか?
「・・・自分が覚えていないものを、どうやってテレサやアリアナさんに教えるの?」
「その通りですね」
真面目系美少女騎士候補ネイアさん、2コマ落ち。いや、3コマ?
ネット掲示板に住み着いてるオタク系が歓喜しそうな高等テクニックだな。
「・・・と、いうわけで、みんなも特訓ね」
「「「「はい・・・」」」」
おかしいな。元気が無いぞ?
もうちょっとリップサービスしておくか。
「・・・大丈夫だって。みんな魔石の魔力は使えるんだから、その応用でしか無いし」
「応用というと、私たちも空を飛べるんですか?」
高い場所に強い思い入れがある様子のナンナちゃんが食い付いた。
釣られて他の3人も私に視線が集まる。
「・・・ちょっとコツは要るけどね。覚えれば、戦闘中に武器を無くしても生き残れる」
「「「「おおお~」」」」
明るい表情でペチペチと拍手が上がった。
何だ。みんなも飛んでみたかったのか。
揚力とか空力的手段で飛ぶわけじゃないから、そんなに危なくないしね。
「足」の本数をケチらなければ体勢が安定するのは私自身が実証したし。
頑張って触手を一杯生やすんだよ?
自分の手足の数と同じ4本までなら、みんなも問題なくイケるんじゃないかと思うんだよね。
他の4人が拍手しているのを見て、向こうでアイシアちゃんがチラチラとこちらを見ている。
アイシアちゃんには他の4人が状況説明してくれることだろう。
「・・・そういうわけだから、覚えられた人の中から王都へ行って貰うことになるよ」
「「「「はいっ」」」」
元気な返事が返ってきたところで、ようやくアイシアちゃんの班でも少年たちの歓声が上がった。
第4班を代表して次期男爵家当主のアイオスくんが追い立てられるように報告に来た。
ギンギンに「早く行け」オーラを殺気のように立ち上らせながら、アイオスくんを無言で追い立てて来たのはアイシアちゃんだ。
面白そうに口元をニヨニヨさせているミセラさんたちも一緒に戻ってくる。
アイオスくんがルナリアと私の前に立ってビシッと気を付けの姿勢を取る。
「だ、第4班、設置完了しました!」
「次からも諦めずに頑張んなさい!」
「・・・はい。じゃあ、採掘場へ移動するよ。移動準備に掛かって」
「はっ!」
ホッとした様子で表情を緩めたアイオスくんが、班の仲間のところへ駆け戻って行く。
とはいえ、ビリになったことを気にしているのか大声で班の仲間を 嗾(けしか) け始めた。