作品タイトル不明
初めての新年 ④
それもそうだよね。
ようやく長旅を終えて落ち着ける場所を手に入れたばかりなのに、エターナさんは新領民の未来に関わりかねない重要任務を任されたんだから、負担を増やすべきじゃない。
反省しつつもガッカリしていたら、壁際から救いの手が差し伸べられた。
「そう言えば、王都からの荷が届いていると聞いていますが、どうされますか?」
「・・・ハッ! お野菜!! 作物!!」
おおおおおお―――ッ!!
ありがとう! さすがミセラさん!!
クラリカさんもメイリスさんも、ありがとう!!
タイミング的に、まるでお年玉を貰ったみたいだよ!!
「食料倉庫へ搬入されたそうなので、見に行ってみますか?」
「・・・行きます!!」
ガッカリから一転、一気にレッドゾーンまでテンションが爆上げした!
倉庫へ荷物を確認しに行くには、さっさと晩ご飯を片付けてしまわねば。
一人、ワクワクテカテカしている私を他所に、クールでクレバーなお父様はルナリアに声を掛ける。
「ルナリア。昼寝を取ったのかい?」
「フィオレと一緒に取ったわ!」
睡眠十分で元気に返したルナリアの顔を見ながら、お父様は思案顔になる。
「ふむ。では、祈祷に参列できそうだな」
「良いの!?」
ルナリアがパァッと表情を輝かせる。
愛娘の喜ぶ顔が見られてお父様もご満悦だ。
お爺様たちとお婆様たちも孫娘とのお出かけで嬉しそうにしている。
うんうん。平和な空気が素晴らしい。
年内の仕事が大過なく片付いたことも影響しているのだろう。
んん? 何か引っ掛かるな。
「・・・あれ? ルナリアって、今までご祈祷に参列したこと無かったの?」
「だって、夜中なのよ! いつも寝てなさいって言われてたわ!」
プンスカと腰に手を当てて不満そうに頬を膨らませる。
これだけ大事にされているルナリアを放ってお留守番させておくってことは、アレだな。
ルナリアって一度寝たら、ちょっとやそっとのことでは朝まで起きないから。
私にも状況の予想は付いたけど、お母様から具体的なツッコミが入る。
「お前は祈祷が始まるまで起きていられなかっただろうが」
「むぐっ! こ、今年は大丈夫よ! フィオレが居るもの!」
ほらね。そうだと思ったよ。
てことは、私はルナリアを寝かさないようにしておけば良いのかな?
デュフフ。ルナリア嬢~、今夜は寝かさないでござるよ~?
私はご祈祷イベントが終わったら寝るけどね。
そういえば、私もご祈祷って初めてだから、情報を仕入れておいた方が良いかな。
「・・・ご祈祷って何時頃にするの?」
「1の鐘が鳴ってからだな。それなりに領民は集まるぞ」
「・・・確かに深夜だね」
行く年来る年か。
新年早々、何をするよりも最初に精霊にお祈りを捧げるのだから、精霊信仰の深さがよく分かる。
自然の脅威から遠く離れた土地で信仰が薄れてしまった西方諸国と違って、王国は自然と向き合う最前線だからね。
それだけ自然の脅威が現実的で、自然を身近に感じていたんだろう。
「・・・ご祈祷って―――」
おや? 誰か来たようだ。
いや。冗談ではなく、本当に来訪が有ったみたいでエゼリアさんがドアをノックして知らせに来たんだよ。
近々、騎士団長さんやバルトロイ様が来る予定だからか、エゼリアさんもアンリカさんも忙しそうにしてるんだよね。
ロアーナさんやリエンナさんも一緒になって、色々と嫁入り準備をしているらしい。
「シェリア様。エルザが到着しました」
「ティールームへ通しなさい。私たちも直ぐに移動するわ」
シェリアお婆様の視線を受けてエゼリアさんに返事を返したのはセリーナお婆様だった。
エルザさんか。
ご祈祷の打ち合わせかな?
どんなことをするのか興味あるな。
訊くなら、その道のプロフェッショナルに訊いた方が良い。
「・・・私も一緒にお話を聞いても良いですか!」
「良いわよ。早く食事を済ませてしまいなさいな」
おおっ。良いの!?
フフッと笑ったセリーナお婆様から、すんなりと許可が出た。
来客では有るけど、エルザさんが血族でも有るからかな?
何にせよセリーナお婆様がその気になってくれている内に滑り込まなきゃ!
「・・・はい!」
「わたしも!」
お? ルナリアくんも参戦表明かね。
二人で顔を見合わせてニヒッと笑い合う。
だったら、早く食べてしまわなくちゃね!
メインディッシュのお皿に鎮座しているお肉の塊に、ルナリアと二人で挑み掛かる。
ご飯をお腹に詰め込んでティールームへ移動すると、お婆様たちとお母様とジアンさんがエルザさんと向き合って席に着いていた。