軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての新年 ②

私としても早々にアスクレーくんに死なれて未亡人になりたくはないからね。

首根っこを掴んででも連れて帰ってきてくれる方が助かるよ。

この際、手足の3~4本程度なら戦場に落っことして来たって構わない。

私が教えて魔力の手足の7~8本まで増やして見せる。

生きて連れ帰ってくれる可能性が少しでも高まるのなら、選択肢として、ぜんぜん「有り」だ。

ジアンさんの 薫陶(くんとう) を受けたピーシス領の少年たちも頭蓋骨の中まで筋肉に侵食されて、ヒャッハーな感じになる恐れが無きにしも非ずだからね。

ハインズお爺様だってヒャッハーした結果で片目を失ったって聞いたし、正気を保てる騎士様がアスクレーくんの側近に就いてくれるのは「有り有りの有り」だろう。

「・・・なるほど。―――、でも、んん?」

ふと、思い出して、以前、お婆様たちが放していたことの記憶を掘り返す。

首が傾いだ私にマルキオお爺様が目を向けた。

「どうした?」

「・・・アスクレーお兄様には、ピーシス領の男の子たちを側近に付ける予定だったのでは?」

「まだまだ子供ばかりだからな。指導して取り纏める実務経験者が必要なのだ」

ピーシス領での反抗的な態度を取った件を、お爺様たちは、まだ許していないらしい。

エウリさんとエングさんは少年たちの教導役でも有るんだな。

少年たちがヒャッハーな感じにならずに済むなら、それもまた「有り」だよね。

「・・・そ、そうですか。あれ? ジアンさんは?」

「私はピーシス家の執事ですから、彼らを直接率いるわけには参りません」

ミセラさんたちと一緒に控えていたジアンさんが、後光が差すようなイケメンスマイルを返してきた。

もう魔力の手は使いこなしているみたいなのに、騎士に戻る気は無いんかい。

いや。私としても、お母様としても、領地経営のアレコレを丸投げできるのは、めちゃくちゃ助かるけど。

「・・・そうなんだ。じゃあ、私の側近は今まで通り、ピーシーズとミセラさんたちと、あと、エターナさんになるのかな?」

「エクラーダからの親領民からも人員を抽出して、フィオレ様麾下の部隊に加えたいと存じます。それと、近く交代任務に就く部隊に付いて、一度、王城へご挨拶に伺う許可をいただければと」

確認で目を向けたら、エターナさんから予想外の答えが返ってきた。

「・・・えっ? 王都へ行くの?」

「私の指示だ。陛下に拝謁して西方諸国の動向を報告して貰う」

へえ。お母様が命じて一介の騎士を王様に会わせる?

てことは、政治的な意図だよね。

考えられる目的は何が有る?

「・・・んー・・・。不安の払拭、かな?」

エターナさんが任務を達成した場合にどうなるかを推察してみた。

王様―――、というよりも、王様の後ろに居る人の「不安」に、「問題ない」と示して見せることが目的なんじゃないかな。

答え合わせをしてくれたのは、お母様ではなくお婆様たちだった。

「そういうことです」

「叔母様も気を揉んでいらっしゃるでしょうからね」

やっぱりか。

まさに政治的意図が有っての命令―――、つまり、結構な重要任務だ。

疑いや懸念を持たれる前に、こっちから「現物」を見せてしまえ、って理屈だけど、確かに効果的だと思う。

「・・・なるほど。そうした方が良いと思います」

ウォーレス家が受け入れて、王様やカレリーヌ様がご自身の目で確かめてお墨付きを出したなら、社交界や王宮でエクラーダからの新領民に文句を付けられる人間は居なくなるだろう。

権威を利用した、そういう「守り方」も有るんだね。

とても勉強になった。

お母様たちに頷いて返していると、クイクイとルナリアに肘を引っ張られた。

なに? 内緒話?

「叔母様って?」

「・・・カレリーヌ様だよ」

「ハッ!! 大叔母様!!」

なんで、また忘れてるの。

せっかくコショコショと内緒話で教えたのに、目を瞠ったルナリアが大きな声で驚いた。

勢いで一触即発になったし、怖かったから、ルナリアはカレリーヌ様に苦手意識を持ってしまったのかも?

どこかの段階で「怖くないよ」と払拭しないとなあ。

そのうちウォーレス領に来る予定なんだし。ともあれ―――。

「・・・ふむふむ。そういうことなら、エターナさんも特訓しないとね」

「とっくん・・・? 特別訓練でしょうか」

不穏な空気を感じ取ったのか、クルッと顔を向けるとエターナさんが仰け反った。

「・・・そそ。テレサにはアリアナさんが付いてるからね。挑まれると思うよ? というよりも、王城でアリアナさんに会ったら、真っ先に手合わせすると良いよ」

王様とカレリーヌ様に会うなら味方がいた方が良い。